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4話❀.*・゚
病室の空気は相変わらず静かで、時計の針の音だけが響いている。白西は目を閉じて、何も言わずに横になっている。彼女の顔は、痛みと戦う日々のせいか、少し痩せて見える。だけど、それでも美人ていうのは変わらない。
「おい、白西」
僕が声をかけると、彼女はゆっくりと目を開けた。
「何?」
「なんでもない」
ふとした瞬間、何を言おうか迷って、結局言葉が出てこなかった。白西は少し苦笑いを浮かべた。
「また言いたいことがあるの?」
「別に」
「嘘つき」
彼女は冗談っぽく言って、それから深く息を吐いた。
「どうしたの?今日はなんか元気ないね」
俺は少し考えてから答える。
「なんでもないよ。ただ、考えすぎてたんだ」
「考えすぎ?」
「お前が、もうすぐいなくなるって考えるとさ、なんか急に怖くなって」
その言葉を言うと、白西は無言で僕を見つめた。視線が絡む。でも、彼女は何も言わない。やっぱり、何かを言うのが怖いんだ。
「なんでそんなこと考えちゃうの?」
「だって、お前がいなくなるって考えたら…もう俺、何もできなくなる気がして」
「でもさ、そんなこと考えてもしょうがないでしょ?」
白西はあくまで冷静に言う。彼女なりの強さだろう。無駄に泣かない、無駄に心配させない。ずっとそうしてきた。
「だよな」
「うん」
でも、やっぱりどうしても心のどこかで、白西の死を受け入れられない自分がいる。彼女が笑って、無理に元気を振り絞っているその姿が、悔しい
「白西、もっと本当のこと言えよ」
俺は少し強めに言った。もっと弱い自分を見せてほしい。もっと、白西に頼ってほしい。
「言わないよ」
「なんで?」
「言ってもどうせわかって貰えない。諦めてるだけ。期待してないだけ。」
白西は少し寂しそうに微笑んだ。彼女は、俺が辛い思いをしないように、必死に強がっている。でもそれが逆に、俺を辛くさせることに気づいてほしい。
「でも、お前だって辛いんだろ?」
「もちろん辛いよ」
彼女はそのまま目を閉じた。
「でも、最後は笑っていたいから。ずっと元気にしていたいから」
その言葉に、僕は何も言えなかった。
静かな病室で、時間がゆっくりと過ぎていく。白西は横になりながら、何かを考えているようだった。
「ねえ、颯馬」
「なんだよ」
「私さ、たまに思うんだ」
「何を?」
「もし、病気がなかったら、私たち、普通の高校生みたいに過ごしてたのかな?」
その言葉に、胸が締めつけられる。
「普通の高校生か」
「うん、制服着て、友達と放課後遊びに行ったり、ちょっとしたことで騒いだりしてさ」
「でも、今だって友達、つーか、俺と一緒にいるじゃん」
白西はその言葉に少しだけ笑った。少しだけ笑って、でもその笑顔の裏にある寂しさに、胸が痛くなる。
「そうだね、私、頑張ってるよね」
「うん、頑張ってるよ」
「でも、私、もうすぐ終わりなんだよね」
「やめろよ、そんなこと言うな」
「でもさ、私が終わるってことは、颯馬も終わりだよ」
「は?」
「私がいなくなったら、あなたもきっと何もかもが終わったみたいになるんだろうなって思う」
その言葉が、また胸に深く突き刺さった。
「…まあ確かにな」
「頑張って生きろって、私が言ってるんだよ」
「俺、どうしても頑張れるきしないって」
白西は静かに俺を見つめた。
「でも、私がいなくなったとしても、颯馬にはまだやらなきゃいけないことがあるよね」
「やらなきゃいけないこと?」
「私のために、今までの分まで幸せになってほしいって思うから」
その言葉に対して涙が勝手に出る
「それでも…お前がいなくなったら、俺は…」
「だから、泣かないで」
白西は静かに言った。彼女の目は、悲しみで溢れかけていたけど、それでも笑顔を見せようとしていた。
「私がいなくても、幸せになってね」
その言葉を聞いた瞬間、俺はすべてを受け入れるしかないと思った。
「ちがうよ、今が1番幸せなきがする」
「え?」
「俺はお前がいないと幸せになれないかもしれない笑」
白西はその言葉を、優しく受け止めてくれた。
「私はきっと……幸せ者だね」
そして、その後ろで静かに夜が更けていくのを感じながら、俺たちは何も言わずに過ごした。