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なにやら絶妙なタイミングだけれど、女神さまからメールが届いた。


インベントリーの項目一覧を開くと、一番上の【神様メール】がブリンクしている。


さっそく神様メールを開いてみた。


【件名:勇者について】


[ユカリーナです。その方、健太郎様はこのアース (地球) における勇者となります。ダンジョンの覚醒に際し、なんとか間に合わせることができました。ある程度戦えるようになるまで、お導き頂きますよう宜しくお願いいたします]


なんですとー? 俺がめんどう見るのかよ?


”ある程度” ってどんだけー?


ある程度、ものになるようにってことだろうな。


(女神さま、最近人使いが荒くなってない? まっ、やりますけどー)


……ん、まだ何か書いてあるな?


[p.s 今回のお願いにあたりプレゼントを用意しました]


おっ、プレゼントくれるの? いいねー!


インベントリーの項目に【宝箱】アイコンが出現していた。


――【宝箱】――


冒険者にとってはワクワクしてたまらない特別なもの、……なんだよなぁ。


先程までの憂鬱な気分はすべて吹っ飛び、俺はルンルン気分になっていた。(ちょろい)


では、さっそく! 今回は何が出ますかね~、


――ポチっとな♪


んん、……何コレ?


紫のふくさに包まれていたそれは、見事な装飾のはいった印籠。


黒地に花鳥文様の金蒔絵が施され、その中央には家 (ツーハイム家) の紋章が堂々と金象眼で入っている。腰に印籠を吊るせるように、房付きの紫紐と碁石を大きくしたような黒曜石の根付が付属していた。


「……………………」


あまりの出来栄えの良さに、俺はしばらく声が出せなかった。


これって凄いよな!


まぁもちろん、神さまが作り出したものなので凄いのは当然のことなのだが……。






こんな立派なものを頂けるのは、もちろん嬉しいのだが、なぜ印籠だったのか?


印籠といえば、昔の人たちが使っていたお薬入れだったよね。


中に何か入っているのかな?


緒締めをゆるめ、印籠の蓋を開けてみた。


すると中から出てきたのは、なにやら小さく折り畳まれた紙。


その紙を開いて読んでみると……、うん説明書だね。



[神力の印籠:専用アイテム:使用者ゲン]


1. 中身を取り出すと30日でエリクサーを1粒精製します。取り出したエリクサーは1日で消滅しますのでご注意ください。(インベントリーでの保管はできません)


2. この印籠を見せながら発した言葉には神力がのります。(身分証としてお使いください)



はいっ? ……これって完全に神器だよね。


あぁ、印籠を振るとカラカラと音がしてるねぇ。出さないけど。


上から覗いてみるとパチンコ玉ほどの黒い玉が見える。


【エリクサー】


どんな傷や病でも、たちどころに治してしまうという伝説の万能薬。


一部では『マンキンタン』とも呼ばれることもある。


有難いといえば有難いのだが、家にはシロちゃん居るしなぁ。


まあ、そのうち何か使いどころも出てくるだろう。


それからもう一つ、


こちらの作用というか、効果の方が圧倒的に凄いよな。


『言葉に神力がのる』ってなによ。


それって『神の声』と同義だよね。


印籠が身分証になるの……。


どうしても、こう、水戸黄門風にしてみたかったのかなぁ?


「静まれ、静まれぃ、この紋所が目にはいらぬか~! 控えおろう!」


なんつって、みんなで遊んでみたかったけど……。


これはダメでしょう。シャレになんないよ。






「ゲンさん。ゲンさん? ゲンさ~~~ん!」


いけね! 茂 (しげる) さんに呼ばれていたようだ。


「すいません、いろいろと考えごとをしていたもので……」


手に持っていた印籠を慌ててインベントリーに収納した。


「ゲンさん、大丈夫っすか~?」


健太郎である。 お前さんにだけは言われたくない。


「それで今からダンジョンに入るのかい?」


「もちろんです。 ダンジョン覚醒まで残り5日。こちらでは何も起こらないとは思いますが、備えは必要ですよ。さぁ特訓です! 行くぞシロ!」


「ワン!」


「え~、今から?」


「いってらっしゃーい!」


「…………」


「…………」


「…………」


あれれ、シロは尻尾を振ってヤル気をみせているけど、他のみなさんは……今いちのり気でない?


ならば、ヤル気を出してもらいましょうか。


――これならどうよ!


俺はインベントリーから、茂さん用に作った金の兜と鎧一式。


そして、紗月 (さつき) 用のライトアーマーをテーブルの横に取り出していく。


………………


ダンジョンへの突入準備は程なくして整った。


実際のところは1時間以上かかっているんだけどね。


茂さんに渡した鎧なんだけど……、これの装着が難解で。


パーツも多いし、付ける順番とかもあって大変でしたわぁ。


それからはみんなのテンションも高く、嬉々としてダンジョンに潜っていった。


健太郎? 元気元気。


女神さまの恩恵はハチャメチャで、心配された筋力の低下も感じさせない動きをしていたからね。


調子にのったダンジョン探索は、結局朝帰りになってしまった。(実質9時間程)


少々やり過ぎた感はあるけれど、全員無事にダンジョンから帰還した。






「それじゃあ昼過ぎに、また迎えにくるからなー」


そう言い残して、健太郎を自宅のマンションに置いてきた。


俺とシロはそのまま散歩だ。


「おはようございまーす!」


すれ違う人と挨拶を交わしながら、朝の歩道を歩いていく。


見上げれば雲ひとつない青空。暦では9月に入ったところだが、今日も暑くなりそうだ。


………………


神社に戻り朝食をとったあとは、学校に行く紗月を玄関で見送る。


すこし眠たそうにしていたけど、大丈夫かな?


昨日は例の軽鎧に身を包み、散々暴れまわっていたからな。


(ヴァレン何某くんがモデルのライトアーマー)


茂さんは平服を着て社務所に入っていったので、俺たちも母屋を出て地下秘密基地へ下りた。


シロと朝風呂に浸かりながら、これからのことを頭の中で整理する。


ダンジョン覚醒が目前という時期に、勇者までお出ましかぁ。


勇者だけど、今は余計なことを考えさせないでレベリングに集中だな。


ここには茂さんや紗月も居るから、健太郎のメンタルケアも何とかなるだろう。


あと、魔力操作の訓練も開始しないとな。


忙しくしていれば、落ち込む暇なんてなくなるだろうさ。






ダンジョン・カンゾーが覚醒するまであと僅か。


この事実に日本が、そして全世界が震撼するだろう。


なにせ、今まで存在すら知られていなかったのだから。


そして、ダンジョンに潜り鍛えし者は、大なり小なり ”レベルアップ” していくのだ。


中にはスキルが発現する者も出てくるだろう。


その力は強大で、一般人では抑えがきかなくなる。


例えば、ボクシングの世界ヘビー級チャンピオンですらLv.5~Lv.6の者には敵わないはずだ。


このレベルアップに関して日本は、そして世界はどのような対応をしていくのだろうか?


軍事力がものを言うこちらの世界。


アメリカ、ロシア、中国といった大きい国はけして黙ってはいないだろう。


いずれは全世界に出現していくであろうダンジョンではあるが、これには時間差が生じてしまうのだ。


そこが、問題になってくるかもしれない。



――― ダンジョンがもたらす利権を巡っての争い ―――



逆に考えれば、今のうちにオーストラリア大陸をはじめ、砂漠や人が住めない地域を押さえるなんて戦略もとれるのだ。


十分考えられるだけに恐ろしい。


だが、それを抑止するための勇者かもしれない?


まあ、世界に一人では到底間に合わないわけで、これからどんどん指名されていくのだろうが。


それにしても、若い健太郎を見ていると、やはり不安にさせられる。


せめて、しっかりしたブレーンを付けてあげられるといいのだけれど。


日本政府や自衛隊の担当者は、なるべくサブカルも理解できる頭の柔らかい人がいいな。


俺もアドバイスはできるけど、実際に行動するのはこちら (地球) の人たちだからね。






それにしても茂さん、昨夜はかなり張りきっていたよなぁ。


床几に座った姿は、まさに戦国武将といった雰囲気だった。


着てない時は床の間に飾ったらいいとおもう。


ただ、鎧の装着に時間が掛かるのが難点だよな。


あれを一人で着るのは絶対無理だね。


それに本人曰く、金箔押しで作ってはみたけど、目立ち過ぎて恥ずかしいそうだ。


『やっちまったなぁ』 と反省の弁を述べていた。


――でしょうね。


まあ、あの【金ぴか甲冑】はそのまま残すとして……、


次回は黒塗り具足でいきますかね。”赤備え” なんてのも捨てがたいけどね。


使い勝手を考えると、烏帽子兜も黒塗りの短いものにし、兜の前立てに付けた蜻蛉の飾りだけ金箔をはるようにしようかな。


鎧の脱着も簡素化して、一人で着れるようにしないとね。


紗月も嬉しそうだったな。


剣姫のライトアーマーはお気に召したようである。


黒髪ながら、よく似合っていたとおもう。


レイピアを出してくれと言われたときには少々驚かされたけど、


「それは少し練習してからだな」


そう言っておいた。


いきなり刺突剣を渡されたからといって、そうそう使えるはずもないからね。


楓 (かえで) に頼まれていたライトアーマーはどうするのかと聞いたら、


出来上がっているのなら、宅配便で送ってほしいとのこと。


剛志 (つよし) さんにも渋めの革鎧を作っておいたので、それと一緒にで送ってあげよう。


例の大型ナイフもどうしようかと一瞬迷ったけど、早く見てみたいだろうと思い、ライトアーマーと一緒に送ることにした。


ヒエログリフの刻印もバッチリだからね。(意味は伝えないけど)


ついでだし、めんたいマヨネーズも10本ばかし入れておこう。


このめんたいマヨネーズ。なんと嬉しいことにイヲンの調味料コーナーに売っていたのだ。


流石はイヲンさん、よくわかってらっしゃる。


これがまた色々と合うんだよねぇ。


牛丼はもちろん、パンにぬってもよし。ピザやサラダに掛けても美味しいのだ。


おすすめは蒸かしたジャガイモだな。これって無敵!


焼きギョーザや鶏のささみ焼きにも良く合うらしい。


詳しくはクックパッドを見てくれ。







9月2日 (水曜日)

次の満月は9月27日

ダンジョン覚醒まで4日・64日

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