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菊池さん登場!!✨最高です 藤澤さんがピンクのエプロン...?それにフリフリ.....??可愛すぎませんかね...? 3人全員に癒されました、ありがとうございます!keiさんのお話大好きです!!!😆
💛ちゃんがピンクのフリルのエプロン…💛ちゃんがピンクのフリルのエプロン🩷 よしよしオッケオッケです😇 ふまくん最高ですね!絶対無理だけどチャレンジしてほしいですね🤣 魔王の企みがまだなにかあると期待してしまっている自分がいます🫣
💛ちゃん皆んなに愛されてて、こっちがニコニコしてしまいました💕幸せ🥰 ありがとうございました✨
難しいこと考えなくてもいいからこっちばっかり更新しちゃう。
ふまくん視点です。
「風磨くんさぁ、キノコって好き?」
映画の大ヒット御礼と称してテレビ収録に共に呼ばれた元貴くんが控え室で会うなりそう言った。おはようでもお疲れでもないんだ? それだけ仲良くなったってことなんだろうけど、いきなりすぎて反応に困るよ、流石の俺も。あとそれって、食べるキノコで合ってる?
「いや、とんかつが好き」
「そっかー、じゃぁ今夜あたりキノコのトンカツとかどう?」
「何その新種の食べ物」
パン粉の代わりにキノコを使うの? それともキノコを豚肉で挟んで揚げるの?
元貴くんは困ったように眉を下げて、小さな溜息を吐いた。そこで初めて、おはようございます、と頭を下げる。俺も頭を下げて、今日もよろしく、と隣に腰掛けた。
なんだなんだ、と好奇心が疼く。今をときめくトップアーティストの悩みなんて気になるじゃないですか。キノコについては意味不明だけど。
「今我が家で絶賛キノコ祭りが開催されててさ」
「そんなキノコ好きだった?」
「俺じゃなくて奥さんがね」
……うん?? オクサン?
サラッと告げられた衝撃発言に、コンマ一秒くらい固まった。
「え、結婚したの?」
叫ばなかった自分を褒めて欲しい。衝撃に目を見開くと、元貴くんはにこーと笑って左手を掲げた。薬指に光る指輪。
「まじ!? え、ニュースになってなくない?」
「公表してないもん」
「なんで? まさか不倫?」
「なんでよ。違います」
公表できないような関係なのかと。でもそれならわざわざ口にしないか。
見せてと元貴くんの左手を取り、指輪を見せてもらう。シンプルなプラチナの指輪で、宝石の装飾は特になかった。内側についているタイプかな。
「ねぇ、いつの間にそんなことになったの? 公表してないってことはまさかメンバーにも言ってないの?」
「知ってるよ、当事者なんだし」
はい、二度目の衝撃発言。でもすぐに理解した。
「……藤澤さん、そんなキノコ好きなんだ?」
俺の質問に元貴くんは薄く笑って、そうなんだよね、と特に言及せずに答えた。そこに垣間見える俺への信頼が嬉しい。もちろん偏見はありません、むしろめちゃくちゃ納得した。
若井くんの可能性も僅かに考えたけど、元貴くんの普段の言動を考えれば藤澤さんだろうと踏んだのは間違いではなかったようだ。
「涼ちゃんがさぁ、すっごい頑張ってご飯作ってくれるんだけど、主菜副菜全てキノコなのね。キノコ料理ってそんな種類あるんだ? って思うくらいキノコなの。それも毎日。可愛い顔でおいしい? って訊かれたらおいしいよ、って言うしかないじゃん? おいしいのはほんとだし。この前冗談で若井がピンクのエプロンを母の日にあげたら嬉しかったみたいで、それ着て作ってくれるんだけど、それがまた可愛いのよ」
見てよ、とスマホの画面を向けてくる。ピンクのフリルのついたエプロンをつけて、作ったのであろう料理をこちらに向けて微笑む藤澤さん。テレビで見るよりもやわらかい表情は、確かに可愛い。
「可愛いって思ったでしょ?」
「……まぁ」
「いいでしょ、俺のなの、この人」
え、きみ、元貴くんだよね? なんか違う人間憑依してない? そんな惚気るタイプだったの?
そんな気持ちが表情に出ていたのか、元貴くんはふふんと笑った。
「惚気られるときは全力で惚気るって決めてるから。事務所の人も若井も聞いてくれないんだよね」
それは聞き飽きてるんじゃないかなぁ、とは口にしない。
楽しそうでしあわせそうに話をしているところに水をさす気はない。今のところ聞き飽きるほど聞いていないし。
「でもさすがにちょっと飽きてきたから、キノコの消費を手伝ってもらいたくて」
「消費したところで買ってくるんじゃないの?」
「今うちにあるキノコは涼ちゃんの家に挨拶に行った時にご両親がくれたやつなの。買い物は一緒に行くからそれとなく減らせるから大丈夫」
「親公認なんだ」
いろいろ情報が多いけれど、一番気になったところを拾い上げる。元貴くんはうーん、と首をひねりながらも頷いた。
「明確に伝えたわけではないけど、一生添い遂げるつもりですとは言った。誘った以上責任はとりますって前々から言ってたけど、それとはちょっと違う言葉を選んだんだよね。それで察してくれたんじゃないかなって思ってる。帰り際に涼架をよろしくねって言われてさ。指輪もしてたし、若井を連れていかなかったのもあるかも。俺としては一人息子をもらうわけだからちゃんと言うべきかなとも思ったけど、涼ちゃんが言わなくても大丈夫だよって言ったから」
言わなくて良い、じゃなくて、言わなくても大丈夫、ね。言葉にして伝えなくても、分かってくれているという自信の表れだ。
素敵なご両親じゃないか。そりゃあんな癒しの塊みたいな人が育つわけだ。
藤澤さんとは数回顔を合わせただけだけど、いい人だよね、って口を揃えて言うくらいにはいい人だ。若井くんもだけど、なんでこんないい人なの、ってなるくらいには人間として好感が持てる人たちだった。
「で、今夜どう? 我が家にご招待しますよ」
「新婚の家庭にお邪魔していいの?」
「いいよ、なんなら泊まってよ。リビングで寝てもらうことになるけどそれでも良ければ」
え、いいのぉ? 嫉妬心を隠そうとしない元貴くんとは思えない発言だ。これは何か企んでいると思ってしまうのは、考えすぎだろうか。
なにはともあれ、そんな流れで元貴くんたちのお家にお邪魔する流れになった。
流石に手ぶらでは行けないからマネージャーに頼んで藤澤さんが好きだというプリンを買ってきてもらった。行列ができるという名店だから、まぁ手土産としては悪くないだろう。
そう思っていたのに、その箱を見せると元貴くんが、うげ、と顔を歪めた。え、嫌いだった?
「そのプリンに罪はないけどいい思い出がない」
よく分からないことを言われたが罪がないのならこれで許してもらうしかない。俺は一度食べたことがあるけれど普通に美味しかったし、味は問題ないし。
元貴くんのマネさんが運転する車で向かったのは、都内でも有数の高級マンションだった。
「……ここに住んでんの?」
「うん」
「お家賃は?」
「ひみつ」
「またまたぁ、教えてくださいよ」
くだらないことで笑い合いながら、部屋に案内してもらう。上層階は各フロアに一軒ずつしか部屋はないようで、扉は一枚しかなかった。めちゃくちゃいいとこ住んでるじゃん。
「ただいまー」
「あ、おかえり元貴! 菊池さんもおかえりなさい!」
玄関を開けて元貴くんが声を出すと、ひょこと顔を出した藤澤さんが満面の笑みで出迎えてくれた。フリフリのピンクのエプロンを着けている。写真で見るよりずっと可愛らしい。
こんな可愛い人におかえりって言ってもらえるのいいな、と鼻の下を伸ばしていると、元貴くんの冷めた視線を感じて慌てて表情を作り直す。
「突然お邪魔してすみません。これ、お口に合うといいんですけど」
「わぁ、ありがとうございます!」
にこにこと笑って俺からお土産を受け取る藤澤さん。プリンだ! と喜ぶ笑顔は無邪気で愛らしい。本当に癒し系だ。
なんかいい匂いがするから、料理中だったのだろうか。ふと、藤澤さんの頬に何かがついてるのを見つけ、何かついてますよ、と伝える前に元貴くんが動いた。
「なにつけてるの」
ごく自然な動作で手を伸ばして付着物を取り除くと、そのまま流れるように頬にキスをした。びっくりしたらしい藤澤さんが目をパチパチと瞬かせ、俺がいることを思い出したのか赤くなって元貴くんの肩を押した。
「ちょ、菊池さんいるんだからっ」
「大丈夫だって。……ね? 風磨くん?」
あー……やっぱり? そんな顔しないでよ、藤澤さんのこと、そういう意味で狙ってるわけじゃないんだからさ。
そりゃ可愛いのに綺麗で、感情表現が豊かで努力家で、仲良くなれたらいいなと思っていなかったと言ったら嘘になるけどさぁ。
あわよくば二人で飲みに行って、癒しオーラを独り占めしたいと思ったこともあるけれど、これは難しいかもしれない。……いや、ご飯くらいは行けるんじゃないか? お酒を飲みながら話をして、元貴くんはともかく、藤澤さんのガードはそこまでかたくなさそうだし連絡先くらいは交換できそう。もしかしてチャンスなんじゃないの?
「……あがっていいよ、風磨くん」
「はーい、お邪魔します」
藤澤さんを抱き締めたまま動こうとしない元貴くんに許可を得て、藤澤さんに頭を下げてお邪魔する。テレビの音が漏れる場所がリビングだろうから、まっすぐ歩いていく。ちら、と後ろを振り返ると、藤澤さんの口を塞ぐ元貴くんと目が合った。
俺から視線を外した元貴くんは、藤澤さんの頭を撫でてギュッと抱き締める。藤澤さんも抱き締め返していて後ろ姿しか見えない。藤澤さんの肩越しに俺を見る元貴くんの口が、音を出さずに動く。
あ げ な い よ。
終。
ふまさんも頑張り屋さんだと思うので、意外と惹かれちゃうタイプだと思う。