『……サム、ちょっとええ?』
治と話さなくなってから1週間後、
いつもの喧嘩だったら治が折れてくれるから、俺は話したい衝動を抑えて待ってるのがあたりまえやった。
けど、
今回の治は”絶対謝らへん” という強い意志を持っていることが、俺にはわかった。やから、
初めて俺から話しかけた。
まだ誰も居ない体育館。 毎日一緒に生活をしている片割れと、家以外で2人きりなんて初めてのことではないか…
妙な緊張が漂い、変な汗が出てくる。
『…なん 』
下を向いていた治が顔を上げる。
その時の治の顔は、笑ってはいなかった。
俺は思い切って話し出した。
『俺、今でも何で飯の道なんか行くねんって思っとる。』
『……(ギロッ)』
っ、この治、結構怖い。 背筋凍ってまう。
せめて、”うん”とか”すん”とか言うてぇや…。
『俺は、ずっと飯に関わる仕事やるって決めとってん。なんでバレー続けてる方が成功者みたいな認識なん、?俺は妥協して道を進むのんとちゃうねんぞ。80歳になった時俺より幸せやって自信もって言えたんならそん時もう一回俺をバカにせえや』
あー、サムの嘘つき。そんでずるい。
そぉ言ったら俺は絶対に食いついてくると思っとる。まぉ、そぉなのだけれども。
『上等やないかい!!くたばる時に、”どや俺の方が幸せやったぞ”って言うたるわ!!!!』
この流れでは治は本当に高校でバレーを辞めてしまうことになる。
別に飯の道に進むことは否定せん。けど、料理のべんきょーしながらでも、専門学校に行きながらでも、バレー続けてくれるだけで良かったんに…
それやったら、治と俺を繋げてる鎖はちぎれることはないと思うから、、
一応これで仲直りはできた。でもいつもみたいに仲直りの時のルーティンをすることは無い。
ちぎれそうになった部分を、ガムテープで補強しただけのようだ。これは本当に、解決した話なんだろうか?? 、 いや、違う。解決なんかしていない。
だってまだ思っとるもん。
『なんで飯の道に行くんやっ』て。
______
二人で帰った帰り道。
ちょっと気まづくて、
一応仲直り出来たから、角名に”ありがとう”とメールしようと思い携帯を開いた。
いつもだったら、仲直りした後は話さなかった分いっぱい甘えて、兄弟だとは思えない愛情表現で心を満たす。
今回はそんなことできない。
普通に話すようになったものの、少し距離ができてしまった。 ほんの少しだ。 双子だからこそわかる距離。周りの奴らは”やっといつもの双子に戻った”なんて言うけど、違う。間違いなく距離ができた。 治と俺にしか見えない鎖が、ちぎれる寸前でガムテープでつなぎ止められた。
普段の、治を避けない生活が再び戻ってきたけど。いつも通り朝練に行き、授業を受け(ながら寝)て、屋上で角名と銀と、俺と治で飯を食べ、部活をし、家に帰るけど。前となんの変わりもない生活だけど。
俺の右側は、冷たいままだった___
ガチャ))ただいまぁ
『あ、そか。今日と明日オカンとオトンおらんのやっけ…』
『せやな。忘れとったわ。』
治と二人か…
別に気まづくはない。仲直りもどきをしたから。
けどやっぱ治の顔を直視できない。
なぜかは分からん。原因不明や。
『なぁ、ウイイレせぇへん? 』
『 …ええよ笑』
俺って単純よな。 ウイイレしとったらモヤモヤ考えてること全部忘れて治に話しかけたり、抱きついたりしとったわ。そんな俺を普通に受け入れる治も、治やで。”2人だけやから何時まででもできるな”なんて悪い顔して見てくる治。
サムってそーゆーキャラやっけ?笑
“せやな”なんて返しちゃう俺は勿論そーゆーキャラや。
しばらくウイイレをして、さっきよりは治の顔を見れるようになった気がする。ワンチャンまた元通りの、俺らにしか見えない鎖で繋がれた時に戻れたりするかも?笑 なんて、考えていた時、治が言う。
『そぉ言えばさ、今日角名 2時間目と3時間目居らんかってんけど、 なんでか知っとる?』
と聞いてきた。
あの時俺と角名を見ていた治なら分かるだろう。
なんやその質問。 『俺と一緒に屋上でサボっててん!』って、”俺と一緒に”を強調して言ってやった。なんやその、驚いたような、悲しんでるような、なんとも言われへん表情は。俺ら双子やけど、俺はそんな顔できへんて。『 そか… 』治が俺の右頬に手を添える。
その瞬間角名の言葉がよみがえってきた。
“侑ってさ、治のことが好きなの? “
なんで今思い出すねん!!!
全力で忘れようとしたが、記憶はよみがえってくるばかり、気づけば俺の頬は赤くなっていた。
『ふっ、ツム顔真っ赤やで?』
あー、あかん。これあかんやつ。
『うっさいわ!//なんやねんっ、急にっ/』
『んー? 可愛ええなって思って(笑)』
『は?// 意味わからんっ/ホンマなんやねんっ!角名も、サムおかしい……俺が可愛いわけあるかい!』
『………え、角名に可愛ええって言われたん?』
『お、おん。? ほんま意味わからん…』
(チュッ)
て… 』
頭が真っ白になった。
何も考えることが出来なかった。
いや、違う。 脳が考えることをやめた。
今俺の唇にあたってるのは、治の唇?
『んっ……っ// 』
なんやこれ、頭に酸素回っとらん感じ、
キス?されとるんか?…
『サムっ、 長i…んぅ…!?』
息が出来なくて口を開けた瞬間治の舌が乱入してきた。息が出来ない苦しさと、いけない事をしているという気持ちと、ずっと求めたいた何かを見つけることが出来た気がして嬉しくて、俺の目から水滴が落ちてきた。
何故治がこんなことをしてくるのか、
何故喜んでいる自分がいるのか、
全然分からない。
でもやっぱり、前のような双子に戻ることは、
不可能な気がする。 ただ今はそんな事どうでもよく、目の前にある快感に、溺れるだけだった。。
そこからの記憶はあまりない。 けど、俺と治を繋いでいる鎖の、”新しい名前がついたもの”が、見えた気がした__そう。 〘 兄弟 〙とか、〘 家族 〙とか、〘 双子 〙とか、そーゆーのじゃなくて、〘 恋 〙とか、〘 愛 〙っちゅうことや。
きっと俺は治の事が兄弟としてやなくて、
恋の方で治が好きなんや。
そんで治も同じ気持ちやと思っとった。
やからキスとかしてきたんやって。
勝手に思っとった。
あぁ、アホやな。俺。
-——-キリトリ線——–
1ヶ月後
銀島『もうすぐで3年やなぁ。』
角名『そぉだね。』
侑『………』
角名『侑………。大丈夫?』
侑『……おん。』
角名と銀が顔を見合わせる。ごめんな。角名、銀、 そんな顔せんといて?
俺の事を心から心配してくれてるその顔。
その優しさアカンねん。ほんま。 こんなとこで泣きたないよ。
1週間前、急に治が告げてきた。
『俺、彼女できた』
『はぁ?』
あ、この感じ、
治が飯の道に進むって初めて俺に告げた時と同じやん。
皆”え、それだけ?” って思うやろ?
じゃあ一か月前のキスは何やったんや。っていう話やん?
俺ただの勘違い野郎やんか。。
血の繋がってる自分とそっくりな片割れに、恋心を抱いてる方がおかしいのは分かっているのだけれども。
それやったらキスなんかしてほしなかった。
俺の事なんとも思っとらんのやったら、角名に嫉妬みたいなん してほしなかった。
女なんか、つくってほしなかった。
もう〘 君が隣にいるまで 〙しか、バレーはできないのだから。その後でええやん?
彼女つくるとしても。治にとってのバレーは、その程度のもんやったんか?
今治は俺の前で彼女さんと楽しそうに話している。そういえばこの女。前治にお菓子渡しとった子やな。その時に告白の手紙でも入っていたのだろうか…… あー、頭ぼーっとする。
角名が俺になにか話しかけているが、脳まで伝わってこないから、何を言っているのか理解できない。 でもこれだけは聞こえた。
『侑!!危ない!!!!!』
そんなに声を上げる人やない角名が大声をだしたから、周りの人は皆角名の方を見た。勿論その中に治も含まれている。 角名が手を出してきた。
その時初めて気づいたんや。俺、階段から落ちそうになっとるんやって。
手を伸ばす。
でも、角名の手を掴むことは出来なかった。階段から落ちたら死ぬんかな?まぁ普通は骨折とかよな……
でも、手とか怪我したないし。バレーできひんくなったら嫌やから、手はつきたない。
このままやったら頭から落ちてまうけど、、手怪我するよりはマシやろ。____
治がこっちに走って来るのが見える。
子供が風船を離してしまって、とりにいけないところに行ってしまった時のような表情。
『ツム!!』
ふ、そんな必死なって。。。
もう遅いわ、アホ
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭
コメント
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元々ノベルってあんま好きやなかったけど主様のおかげですきになりました!!
好きですぅうううう(т-т)
つ,続きって存在しますでしょうか?(?)