テラーノベル
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夢を見た。
まだ、今みたいに有名じゃなかった頃の君の夢
桃)……ねぇ、りうら
桃)俺の歌ってさ、本当に誰かに届くかな
夕焼けの帰り道
河川敷に座って、隣でギターを抱えていた君は、今じゃ考えられないくらい弱気だった
赫)届くよ
即答だった
桃)……!! ほんと?
赫)ないくんの歌、りうら好きだもん!!
桃)……でも、身内票じゃん
赫)ち、違うし!!
笑いながら肩を叩けば、君も困ったように笑った
その顔が好きだった
まだ“みんなのないこ”じゃなくて
りうらだけが知ってる、普通の男の子だった
赫)絶対有名になれるよ!!
桃)……もし有名になったら、りうらが1番最初のファンだね
赫)もうそうだし!!
桃)じゃあ、ずっと俺のこと応援してくれる?
赫)当たり前じゃん!
――ずっと
そう言ったのに
赫)……っ、
目が覚める
朝日がカーテンの隙間から差し込んでいた
赫)眩しっ…、
スマホを見る
画面には昨夜のライブ映像の切り抜き
「ないこ ソロライブ神すぎた」
「過去最高更新」
「ドームいけるだろこれ」
赫)……、
胸が痛い
嬉しいはずなのに
ずっと夢だったはずなのに
なのに最近、“ドーム”って言葉を見るたび苦しくなる
赫)……大学、行かなきゃ
ベッドから起き上がり、無理やり支度をした
水)りうちゃーん!おはよ!
大学の構内に入った瞬間、聞き慣れた声が飛んできた
赫)……ほとけっち、おはよ
水)え、なにその死んだ顔。昨日ライブだったから?
赫)……まぁ…?
このりうらの親友、兼、水色髪美少女はほとけっち
白)昨日のないこさんヤバかったらしいな
ライブレポ、朝から回ってきたで?
赫)……見た
こっちの白髪美女は初兎ちゃん、りうらとは高校生からの親友
水)い、いふくんも…昨日のダンス動画…、かっこよかったし!!!
ね~、しょーちゃん!!
白)せやね。けど、悠くんの昨日の歌みたもかっこよかったよ!
水)~~ーー!!!
白)ーーーー~w
りうらも…こういう風に、素直に応援が出来たらなぁ
白)!! そいや、りうちゃんの感想聞いてへんな、
赫)?
水)ソロライブどーだった!!?かっこよかった?
赫)まぁ…、かっこよかった…//
白)オタクの“かっこよかった”の温度ちゃうねん
初兎が笑う
こういう時間は嫌いじゃない
みんな“推し”が好きで
楽しくて
普通のオタク友達
……りうらだけが違う
水)最近人気すごいよね
白)チケット倍率えぐかったしな
赫)……そーだね
人気が出るのは嬉しい
再生数が伸びるのも
ファンが増えるのも
全部、夢だった
りうらが隣で「絶対売れるよ」って言い続けた夢
なのに
“古参”って言葉を見るたび苦しくなる
『りうらさんって初期からいるよね!』
『古参勢うらやまし〜!』
『ないこくんに認知されてそう』
赫)……、
認知
そんな軽い言葉じゃない
りうらはもっと前からいた
誰も見てない頃から
動画の内容を一緒に考えた日も
配信で人が来なくて落ち込んでた夜も
「今日の歌よかったよ」って、一番最初に感想送ってたのも
全部、りうらだった
ないくんの“最初”を知ってる
それなのに
今じゃ知らない誰かが簡単に、
『だいすきー!!』
って叫んでる。
……嫌だ
赫)っ……
水)りうちゃん?
赫)……え
水)スマホ鳴ってるよ?
画面を見る
通知
【ないくん】
その文字だけで心臓が跳ねた
白)お、彼氏?
水)彼氏!!?
待って待って…りうちゃん彼氏いたの…!!!!?
赫)ちが…//…違うし!!!!!
慌ててスマホを隠す
水)…え、ないこくん?
赫)……まぁ、幼馴染だから
白)さらっとすごいこと言うなぁ……
メッセージを開く
『昨日は来てくれてありがとう』
たったそれだけ。
それだけなのに
嬉しくて
苦しくて
赫)……っ、
水)返信しないの?
赫)……する
指が震える
なんて返せばいいかわからない
“最高だったよ”
“かっこよかった”
“遠かった…”
打っては消して、打っては消して
最後に送ったのは
『お疲れさま』
……それだけ。
本当はもっと伝えたいのに
『昔みたいにりうらだけ見てよ』
なんて言えない
アイドルなんだから。
みんなのないくんなんだから
赫)……夢、叶えてほしかっただけなのにな
小さく零れた言葉は、
誰にも届かなかった。
その日の夜
ないこはソファに座りながら、スマホを見つめていた
『お疲れさま』
短い返信
昔のりうらなら、もっと長文だった
『ここ好き!』
『この歌い方やばかった!』
『絶対次もっと伸びる!』
何通も何通も送ってきた
でも最近は違う
桃)……りうら
どこか遠い
会えてないから?
忙しいから?
……違う気がする
青)また例の子?
桃)うわっ…!!!?
背後からひょこっと覗き込まれ、ないこが飛び跳ねる
青)図星やん
桃)……別に
青)ふーん
いふは少しだけ目を細めた
青)最近メッセージ少ないな、
桃)……。
青)前までは何通も送ってたのに
桃)……なんかあったのかな…、
桃)……今度、ちゃんと会おうかな
青)会ったれ
ifは静かに言った
青)原点、大切にせぇや
桃)……っ、
ないこは目を伏せる
原点
活動を始めた理由
歌い続けられた理由
“届くよ”って言ってくれた人
それが、りうらだった
だから怖い
誰より大切だから
失うのが、一番怖いから
桃)……会いたいな、りうらに
その呟きは夜に溶けた
同じ頃。
りうらは暗い部屋で、一人スマホを見つめていた
流れてくるライブレポ
ファンアート
“ないこくんだいすき”
“ずっと推します”
赫)……ずっと、って
その言葉に、心が歪む
ずっと好きだったのは
ずっと隣にいたのは
りうらだったのに
画面を閉じる
真っ暗になったスマホに映る、自分の顔
赫)酷い顔だなぁ…、
ねぇ、ないくん
赫)……りうらだけじゃ、ダメなの?
ぽつりと落ちた声は、
静かな部屋に消えていった。
昨日投稿した一話が予想以上のいいねが貰えてとっても嬉しかったです!!!!
いいねしてくれた人、ほんとのほんとにありがとうございます!!!!
第二話も読んでくださってありがとうございました!!
また三話であいましょう!
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めぅり