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山中さんが来てから、俺も少し変わった。
自分で掃除をしてみたり、洗濯をしてみたり。
簡単な料理を作ってみたり。
まあ、山中さんほど上手くはできないけど。
それでも、前よりは少しだけ自分の生活を気にするようになった。
そして今日は、三度目の訪問の日。
ピンポーン。
インターホンが鳴る。
「……来た。」
いつものように玄関へ向かい、ドアを開ける。
「こんにちは。本日もよろしくお願いします。」
「…………え?」
思わず固まった。
そこにいたのは、山中さんではなかった。
「……あの、山中さんは?」
「ああ、山中ですね。本日は別のお客様の担当になっておりまして、代わりに私が担当させていただきます。」
「あ……そうなんですね。」
……そっか。
山中さんだけが俺の担当ってわけじゃないもんな。
当たり前のことなのに、なんだか少しだけ残念だった。
「では、お邪魔します。」
「……どうぞ。」
家事代行の人が部屋に入り、掃除や洗濯、簡単な料理を始める。
俺もいつも通り、パソコンを開いて仕事をする。
……けど。
なんだろう。
いつもと同じはずなのに、落ち着かない。
パソコンの画面を見ても、なかなか集中できない。
「…………」
ちらっと家事をしている人を見る。
……違う。
別に、この人が悪いわけじゃない。
ちゃんと仕事もしてくれている。
なのに。
いつもなら気にならないはずのことが、今日は妙に気になる。
そして、気づけば時計ばかり見ていた。
「そろそろ時間になりましたので、私はこれで失礼します。」
「あ……はい。ありがとうございました。」
「こちらこそ、ありがとうございました。」
ガチャ。
玄関のドアが閉まる。
「…………」
静かになった部屋。
いつもと同じように綺麗になっている。
料理も作ってもらった。
それなのに――
「……なんやろ。」
俺はソファに座る。
ふと、スマホを見る。
……山中さん、今ごろ何してるんやろ。
そんなことを考えている自分に気づいて、少し驚いた。
「…………」
「……次は、来てくれるかな。」
コメント
1件
この第4話、読み終わってじんわりしました。山中さんじゃない人が来ただけで、あんなに落ち着かないものなんですね。「いつもと同じはずなのに」って一文に、主人公の心の変化が静かに滲んでて、すごくリアルでした。最後の「次は、来てくれるかな」に、思わず「来てくれるよ」って心の中で返してしまいました。主人公が自分でも気づき始めたこの感情、どう育っていくのか楽しみです。れんこんさんの描く日常の揺らぎ、とても好きです。