テラーノベル
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数年後…
月明かりの光る夜、俺はかつてない程に嫌な緊張に冷や汗を出していた。心臓が早くなって、手先が冷たくなってくる。明日の用意を何度も何度もたしかめて、何度も何度もギターを触った。いつもならもう寝る時間だし、ましてや明日があるんだから寝るべきだ。
でもこんな状態で寝れるわけがない。だって明日は、約束の日。
数年前、君と願った約束の日。
あの日からずっとずっと待ち望んでいた。自分の隣で笑っていた君の顔を思い出しては、涙が止まらなくなっていた。この日が心の支えだった。いつか明日がくるからこそ、一人の夜も眠れた。
果たして、奇跡は起こるだろうか。どうしても起こったときのことを想像してうれしくなってしまう。でももし、もし君がこなかったら…、明日俺は上手く笑えるだろうか。
日が変わるまで、残り一分。運命の日まで残り一分。
この不確定さがもどかしくて、怖くて、早く過ぎてほしいとも、まだ終わってほしくないとも、思った。
何度も時計の秒針を確認する。あと…20、19、…今頃二人は何してるかな。もう寝てるかも、珍しく。
手汗がにじむ、
3…、2…、1…、
スッと無情にも、時計の針は真上をさした。
何も、起こらない。…いや、まだ朝じゃない、また希望はあると思いながらも、力は抜けて落胆の気持ちがあふれ出た。もしかしたら…もう君はこないんじゃないか。だって普通に考えたらありえないことだ。そんなことができたらそれこそ魔法だ。…でも、あの日だって魔法みたいな日だった。なら君はもしかしたらきてくれるんじゃないかって、思ってしまう。
なんだかどっと疲れて、そのまま床にころがった。
目を閉じると、あの日の君がまぶたの裏で動きだす。それが心地よくて、切なかった。
どれだけたったか分からないが、夜中、何かが当たる、コンコン、という音に目が覚めた。そのまま俺は、いつのまにか眠ってしまっていたようだ。
ねぼけた頭で何の音かと考えて、それが窓を叩く音だと思った瞬間、完全に目が覚めた。
ま、さか….
足をどこかにぶつけながら立ち上がって窓へとかけよる。そして震える手でカーテンを引き、一つ人影を目に止めた。その瞬間視界がにじんで、急いで鍵を開けようとしたけど、上手くいかずに少し苦戦した。
そしてやっと窓を開いて、やっとそっとその頬に触れた。
幻などでは、なかった。あの日と同じように、そこに立っていた。
堪えきれないほどの喜びに、喉や顔やらがキュッとして、ボタボタと温かい涙が落ちていく。
「…久しぶり、ひろと。」
そう言ってほほえむ姿に、たまらなくなって、その小さな身体に抱きついた。
「っふ、スズ…!!」
俺の背中を優しくなでる手の温かさにまた涙が出て、止まらなかった。
やば、情けないな俺。もっとかっこよく迎えたかったのに。
「ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった。ありがとう、ちゃんと待っててくれて。」
「ぅ、あ、スズ…よかった、会えた…、」
「うん、うん…、ありがとう、ひろと。」
そして、少し落ちついてきた頃に、やっと二人で部屋に入った。寒い季節じゃなくてよかった。また二人して凍えるところだった。というかそれより…、
目のやり場に困りつつ、じろじろとスズを見てしまう。涼ちゃんにそっくりだけど、涼ちゃんより背がずっと小さくて、なで肩も相まってめちゃくちゃ肩幅が小さくて、涼ちゃんよりも少しまつげが長くて髪が長い。
それと…あんまり見ちゃいけない気がするけど…少し膨らんだ胸…
「…スズって…、女の子だったんだね」
「そうなんだよね、1日だけよみがえらせてください!って頼んだら、なぜか女の子の体だったんだよ。」
「てかどうやったの?まじで神様に頼みこんだ?」
「いや一回言ったらね、すぐいいよ、って言ってくれたよ。まあ、ただし、がつくんだけどね。」
「えっ…」
「俺がこの1日だけ、もう一度生き返るのはいいけど、ただし俺とアオキは天国にいけなくなるらしいよ。…本来なら人間のために頑張った片割れたちは、天国で幸せに暮らして満足したら成仏していくんだけど、俺達は、アオキの罪と、俺の無茶な願い事もあって、記憶を失くして人間として転生して、もう一回人生頑張ったら許される、らしい。」
「…つまりスズはアオキと、もう会えないかもしれないってこと…?」
「まぁ、そういうことだけど…運がよければまた出会えるわけだし、めちゃくちゃ運がよければ、ひろとやりょうかやもときに、また会えるかもしれない。むしろいい事かもね、」
「でも…その時には全部忘れちゃってるってことでしょ?」
スズが静かにうなずく。
「…それでも俺は、この道を選択して、よかったと思う。今日のことは、ずっとずっとまち望んでたことだから。アオキも納得してくれたし。こうしてひろとにもまた会えたし。」
「うん…そうだね、そうだよね。」
ごめん、と言いかけてしまったが、すんでのところでやめた。それを言うのはスズに失礼だと思った。
また、唇をかみながら、涙が溢れてしまう。その涙を指で拭いながら、少し暗くなってしまった雰囲気を戻すようにスズは言った。
「もといた場所に戻した後、大大夫だった?最後りょうかに見られちゃったし。もときもその後何もない?」
「うん。涼ちゃん、スズのこと知ってたし。元貴もところどころ記憶は抜け落ちてるみたいだけど、大丈夫そうだよ。」
「あぁ、りょうかが知ってるのは、俺がたまに会いにいってたからね。」
数年前、同じことを言ってた涼ちゃんの表情をふと思い出した。それでスズは涼ちゃんのことを知ったのかな。
「夢の中で、だけど。覚えてくれてたんだね、りょうか。」
「そりゃもうボロ泣きだったよ。…なつかしいな、そっからもうこんなにたっちゃったんだ。時間かかったなあ。」
「ほんとにね。お互いあんなに大好きなのに…」
「元貴も涼ちゃんもお互い考えすぎちゃうところあるからねぇ…。よし!練習しようぜ、あれ。楽譜におこしてたんだよ。」
「うわ~、緊張するかも…でも、楽しみ。」
「涼ちゃんも元貴も絶対めっちゃ驚くよ。涼ちゃんなんか、登場の時点でボロボロ泣いてそう。」
「今日は結構人くる?」
「いやぁ?会社の人がちょっとと、涼ちゃんと元貴の親と、あと友達が2、3人?3、4人?くらいと…、まあ大分少ないと思うよ。」
「いやあ…、出ていって大大夫なものかと思って…変な接解されないかな。」
「涼ちゃんの妹説、とか?まぁ大丈夫でしょ。皆理解ある人達だから。」
「確かに。そうだよね。」
ーーそう、今日は元貴と涼ちゃんの、
結婚式。
俺達は結局夜通し練習し、朝方少し寝て、緊張のせいで、すでに手汗をべしょべしょかきながら、会場についた。スズが寝たことにはびっくりした。人間に一旦なってるから眠くなるらしい。つまりは全ての人に姿が見えるってことだから、人に見られないようにコソコソと俺達は移動した。
「…大丈夫?スズ。きつい?」
スズは少し息が上がって苦しそうに見える。
「大丈夫。ちょっとやっぱりしんどいね。無茶言って生きかえらせてもらったから、」
「無理しないでね、絶対。座ってられる?最初の式のときだけ休んどく?」
「いや、多分大丈夫。式も絶対見たかったし。ひろとだって見たいでしょ?」
「う、ん、まあそうだけど…しんどくなったらすぐ出れるように後ろの方にいとこうか。」
「うん、ありがとう、そうする。」
式場に入ると、先の予定通り、慌ただしく着付けが始まった。元貴と涼ちゃんに比べれば短時間で終わるけど、ヘアセットをしたり、少しメイクをしたりで、まあまあ時間がかかってしまった。
俺は少しメンバーカラーも取り入れたダークスーツ。ちょっと派手な気もするけど、まあカジュアルな式だし大丈夫だろう。
自分の着替えは終わって、まるで高級ホテルのような待合室で、ギターを触りつつ待つ。スズが来れるかどうかはぎりぎりまで分からなかったけど、一応俺が何個か衣装の候補を選んでおいた。その中から今選んでるんだと思う。勿論俺は元貴と涼ちゃんにナイショでね。やっぱサプライズじゃないと面白くないっしょ。
…でも心配なってきた。こういう服のセンスはある方だとは思うけど、人のを選ぶとなると話が違う。ましてや女性に。
その時、コンコン、と扉がなった。
「スズ?終わった?」
そう言うと少しだけ扉が開き、スズの顔が見えた。だが、それからスズはなぜか入ってこようとしない。扉のせいで服も見えない。
「…どうしたの?」
「…いや、こういう服着るの初めてで、…ちょっと見られるの緊張する、かも。」
…ぇ、え、え、いやかわいいな
「ね、俺めっちゃ見たい。お願い見せて?」
そっと扉が聞いてスズの全身が見える。その瞬間息を呑んで、目を見聞いたままかたまった。
#fjsw
かめちょん
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