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💛ちゃんを苦しめアイドルが強かそうで😭💦 でも💙に支えられて、良かったです🥹でも♥️くん、そこにも嫉妬しそう🤣
愛重、大大好きです 若井さんや藤澤さんが気遣っていたりするのが本当に仲間なんだなぁ、って思うしほっこりしますね😆 大森さんはよく分かんないですけど。
何回も言ってしまってますが…こんな激重大好きです🫣❤️💛
ざっくりと思い描いている内容だと、これもまた激重なんですよね……大丈夫かな。
りょさん視点。
若井が僕を心配して怒ってくれて、二人でボロボロ泣いた翌日、若井の言葉通り元貴が僕らと合流した。
あの後、どうせ教えてくれないだろうからこれ以上は聞かないけど無理だけはしないで、と若井にはお願いされた。ちゃんとご飯食べて、ちゃんと寝てよ、倒れちゃうよ、って抱き締めてくれた。
僕は若井を冷たく突き放すような態度をとったのに、なんてやさしいんだろう。
僕と元貴の関係を知ったときもそうだった。引いたりせず、心底安心した顔でおめでとう、良かったって祝福してくれた。
いつだって若井は元貴のことを想ってて、元貴のことが好きなんじゃないかって思うほどだった。それなのに今は、僕のことを心から心配して怒ってくれるほど仲良くなれた。
あぁ、やっぱり失いたくないなぁ、って自分から壊しにいったくせに考える。
自分のことしか考えていないだけだけど、失くしたときのダメージを少しでも減らすために、本当は若井にも、僕と元貴は仲違いをしたと思わせたかった。
元貴は何も悪くない、ただただ、僕のわがままでこうなったんだよって。
だから僕がいなくなるのは、当然の帰結なんだよって。
だけど、どうしたって無理だった。そうするには若井があまりにも優しくて、あまりにも僕たちのことを理解しすぎていた。
だからそれは諦めて、若井のやさしさに甘えることにした。
心の中でごめんねと謝り、泣かせないでよ、と笑いながら言うと、涼ちゃんにはいつも笑ってて欲しいよ、って泣きながらもやさしく微笑まれて、結局僕もまた泣いた。
四日ぶりの元貴は、チーフマネージャーが言っていた通り至って普通で、いつも通りで、拍子抜けどころじゃなく、いっそ恐怖を覚えるほどだった。
別れた事実を知った若井も困惑を隠せないようで、なんか久しぶりだね若井も、と明るく声を掛けてくる元貴をどこか怯えた目で見ていた。
若井に冷たくする理由がないからそっちはともかくとして、酷いことをした僕に対しても元貴は以前と全く変わらず、本当に何もなかったように、なんかちょっと会わない間にやつれてない? 大丈夫? と心配してくれた。
僕を気遣う表情や声が演技には見えなくて混乱する。
あんなに身勝手なことを言って傷つけて、翌日から顔を合わせない日にわざと話を切り出すような卑怯な真似をしたのに。
そんな僕の姑息な手のうちなんてとうにばれているだろうから、僕としては元貴に完全無視される可能性を考えていたし、Mrs.に必要ないって切り捨てられる覚悟さえしていた。
Mrs.の中核であり不可欠な存在を傷付けた代償は、甘んじて払うべきだと思っていた。
それなのに、どうして?
僕たち、別れたんだよね? それとも本当に、僕なんて元貴にとって取るに足らない人間だったってこと?
元貴の心を僅かでも揺さぶることもできないような、ちっぽけな存在だったってこと?
それならそれでいいはずなのに。嫌われたくて憎まれたくて、思ってもいない言葉を吐き出したのに。
傷つく資格なんてないはずなのに、なんでこんなに胸が痛いんだろう。
涙が枯れるほど泣いたにも関わらず、また泣きそうになって俯く。
元貴が普通に接してくれるなら、僕も普通にしないといけない。
「……ちょっと食べすぎて胃もたれしちゃってさぁ」
「おじさんだもんね」
くすくすと笑うちょっと馬鹿にしたような声も、何も変わらない。
付き合う前の、昔に戻っただけ。
「ひどいなぁ、もぉ」
友達みたいな上辺だけの会話だ。それを救いだと思うべきなのに、むちゃくちゃ苦しい。
若井が心配そうに僕に視線を送ってくれるのを感じ、そっとそっちを見て小さく首を横に振った。なにも言わないで、いつも通りにして、ってお願いを込めて。
つらそうに唇を噛んだ若井が、それでもなにも言わずに俯いてくれた。
やさしいね、ありがとう、って伝えたいけどなにも言えず、ゆるく目を細めた。
迷惑かけてごめんね。ちゃんとするから、ちゃんと、Mrs.をやるから、許してね。
「あ、午後から楽曲提供する人と打ち合わせ入ったって聞いた?」
「そもそも提供する話すら聞いてない」
「なんか売り出し中のアイドルなんだって」
そう言って、スマホをすいすいと操作して画面を若井に見せる元貴。若井が名前を読み上げる。
びくっと大袈裟に反応してしまったけれど、元貴と若井はスマホを覗き込んでいたから見られていないはずだ。
「引き受けたんだ」
「まぁ、断る理由もなかったし」
意外そうに、そしてどこかトゲのある口調で言った若井に元貴は、これも仕事のうちでしょ、と肩をすくめた。そうだけど、と若井が口ごもる。言いたいことがあるなら言えよ、って元貴の目が言うけれど、ふい、と若井は目を逸らした。
「……音源送るから、とりあえず聴いて」
面倒くさそうに溜息を吐いた元貴がスマホを操作する。
僕のせいで元貴と若井の仲までこじらせてしまいそうだ。どうにかしなきゃと思うのに、どうしたらいいのかが分からない。
微妙に気まずい空気を感じながら、送られてきた楽曲を聴くために逃げるようにヘッドフォンをつけた。
そのとき、今日合流してから今この瞬間まで、元貴に一度も名前を呼ばれていないことに気がついた。
名前を呼ばなくたって誰に向かって言っているかなんて分かるけど、若井の名前は呼んでいたからあえて口にしなかったんだろう。
名前を呼ぶのは、そこにいることを確かめるためだといつか元貴が言っていた。
呼んで、応じて、存在を認知するんだよって。
こうやって、やわく真綿で首を絞めるように元貴の中から僕という存在を消していくんだろうか。
それならいっそバッサリと切り捨ててくれた方が楽になれるのにななんて、またもや自分本位なことを考えてマスクの下で自嘲した。
余計なことを考えないように耳で聴いた音を譜面に起こす作業に没頭していると、打ち合わせ相手が来たとマネージャーさんに呼ばれ、はいはーいと元貴が出ていった。
作詞作曲を担当する元貴さえいればいいから、スタジオには僕と若井の二人だけが残された。
僕と同じように音を確認していた若井に、ごめんね、と声を掛けると、パッと顔を上げた若井が、怒ったように眉を寄せる。
「別に涼ちゃんは悪いことしてないじゃん」
「や、だって僕のせいで空気悪くなったでしょ……」
「それは! むしろ俺のせいだって」
「若井は悪くないよ」
お互いにお互いは悪くないって言い合って、二人で顔を見合わせて笑う。
ピリッとしていた空気がいくらか和やかになって、ほっと息を吐く。若井には嫌な思いなんてしてほしくなかったから。
僕にも若井にも一人で落ち着く時間も必要だろうと、ヘッドフォンを外して腰をあげる。
「ちょっと休憩がてらお手洗い行ってくるね」
「大丈夫? 迷子にならない?」
「なるわけないでしょ! 何回来てると思ってんのよ」
本気で心配していると言わんばかりの顔をする若井に笑って反論しながら、頭の片隅であと何回来れるんだろう、と考えた。
あとどれだけの間、僕はMrs.でいられるんだろう。
いってらっしゃいとやわらかく声を掛けてくれた若井に手を振って外に出る。
いつも会うスタジオスタッフさんやうちのスタッフさんに混ざって、提供相手のアイドルの子のスタッフさんがたくさんいた。
会釈しながら通り過ぎて、少し離れた位置のお手洗いへと向かった。歩きながら考える。
もしも元貴みたいな才能があったら。
苦痛や枯渇を音にできる能力があったら。
やるべきことを自覚して実行できるだけの力があったら。
僕は君の手を離さずにいられたんだろうか。
そんなどうしようもないことを考えて、どうしようもないと諦めて、それなのに諦めきれない自分がいて、胸が苦しくて頭が割れそうに痛い。くらっとめまいを感じ、壁に手を突いてどうにかやり過ごす。
「……藤澤さん?」
不意に高めの甘ったるい声で名を呼ばれて、耳障りだな、と思いながら顔を上げる。
声の主が誰なのかを理解して目を見開く。すぐに視線を外してマスクの下で唇を噛み締める。
「体調、悪そうですね」
心配する様子さえ見せずににこにこと笑うのは、まさに元貴と打ち合わせをしているはずのアイドルの子だった。
なんでここにいるんだろう、と思いながら、こんにちは、と一応挨拶をする。
そんな僕をじっと見る、一般以上には可愛らしい女の子。
嬉しくもなんともないから、居心地が悪い。
「……僕に何か用でも?」
「え、意外と平気なんですね。もっと文句言われるかと思っていたのに」
つけまつげに飾られた大きな目を瞬かせて、面白いおもちゃを見るような目を向けられて頭の中がスーッと冷めていく。
「そうですか? ……で、何か?」
僕の方には話すことなんて何もないから用があるならさっさと済ませてくれと促すと、ふぅん、と呟いた後、媚を売るように両手を顔の前で合わせた。
「大森さんの好みを教えてほしくて。好きなお店とか、メイクとか、仕種とか」
詳しいでしょ? とお面みたいな笑顔で首を傾げる。
「……分かった。僕で役に立てるかは分からないけど」
「へぇ、その程度なんですね」
「……」
つまんないなぁと小さく付け足して、これ、と小さな紙を渡される。LINEのIDかなにかだろう。
「じゃ、よろしくお願いしますね!」
にこやかに去っていく後ろ姿を見つめ、手の中の紙を握り締めた。
なんとでも言えば良い。
どんなふうにでも評価すれば良い。
本当なんて、分からなくていい。わかってほしくもない。
俺にとって元貴が、どれだけ大きな存在なのかなんて、お前なんかに分かるわけがない。
俺が元貴の将来の障害になるというのなら、身を引くべきだ。
そうすることが、一番いい、んだよね? そうするしか、なかったんだよね?
もう、わかんなくなってきちゃった。
教えてよ、誰か。助けてよ、誰でもいいから。
続。
逃げ切れるかな?