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〇〇side
控室で廉と本音を話したあと。
スタジオの外に出た。
夜風が少し冷たい。
胸の奥に残っていたモヤモヤは、完全ではないけど少し軽くなっている。
〇〇「終わった」
ぽつりと呟く。
寂しさはある。
でも、ちゃんと話せた。
それだけで前に進めた気がした。
その時、スマホが震える。
樹からのメッセージ。
樹「今どこ」
〇〇「現場終わった」
樹「じゃあ来い」
〇〇「急すぎ」
樹「風磨と北斗と慎太郎いる」
〇〇「多い笑笑」
樹「いいから」
〇〇は少し笑う。
〇〇「どこ?」
樹「いつもの店」
〇〇「行く」
タクシーに乗り、店へ向かった。
店の個室。
ドアを開ける。
丸テーブル。
席はすでに決まっていた。
奥のソファ側に樹。
その隣に慎太郎。
反対側のソファには北斗。
その隣に風磨。
空いている席は北斗の向かい。
樹「お、来た」
慎太郎「お疲れー」
風磨「遅い」
北斗「お疲れ」
〇〇「今終わったばっか」
〇〇は北斗の向かいに座る。
テーブルには料理が並んでいる。
〇〇「もう食べてるじゃん!!」
慎太郎「待てなかった」
樹「腹減ってた」
風磨「とりあえず飲め」
〇〇はグラスを持つ。
〇〇「お疲れ!」
樹「お疲れ」
慎太郎「お疲れ」
風磨「お疲れ」
北斗「お疲れ」
グラスを軽く合わせる。
少し飲んで空気が落ち着く。
慎太郎が〇〇を見る。
慎太郎「今日廉いたんでしょ」
〇〇「うん」
樹「やっぱり」
風磨「話した?」
〇〇「話した」
慎太郎「マジ?」
北斗は〇〇を見る。
北斗「どうだった」
〇〇は少し考える。
〇〇「ちゃんと話せた」
風磨「おー」
樹「それで?」
〇〇「お互いまだ嫌いじゃないって」
慎太郎「リアルだな」
北斗は静かに頷く。
北斗「そうだろうな」
〇〇「でも」
〇〇「戻らないって思った」
少し静かになる。
樹「そういう恋あるよな」
慎太郎「ある」
風磨「あるな」
北斗は水を飲みながら言う。
北斗「好きでも続かないことある」
〇〇は北斗を見る。
北斗「タイミングとか」
北斗「環境とか」
北斗「そういうの」
〇〇「うん」
〇〇「好きだったよ」
〇〇「本当に」
慎太郎「うん」
〇〇「でも」
〇〇「一緒にいる未来が見えなかった」
北斗は静かに頷く。
北斗「それが答えだろ」
樹「そうだな」
風磨「廉は?」
〇〇「前に進むって言ってた」
慎太郎「そっか」
北斗「ちゃんと話せたならそれでいい」
〇〇「うん」
空気を変えるように慎太郎が笑う。
慎太郎「じゃあさ」
〇〇「なに」
慎太郎「新しい恋見つかるかもね」
その言葉に北斗の手が一瞬止まる。
箸を持つ手がわずかに固まる。
慎太郎は続ける。
慎太郎「〇〇モテるじゃん!」
樹「展開早すぎww」
風磨「まだ早いだろw」
〇〇「早いよ!!」
慎太郎「俳優とかアイドルとか」
樹「周りにいっぱいいるだろ」
〇〇「やめて!」
慎太郎「この中にいるかもよ」
北斗が一瞬だけ顔を上げる。
樹「おい」
風磨「やめろ」
慎太郎「冗談冗談」
〇〇「ないない」
慎太郎「分かんないじゃん」
北斗は小さく息を吐く。
北斗「慎太郎」
慎太郎「なに」
北斗「そういうの言うと余計恥ずかしいだろ」
〇〇「ほら!」
慎太郎「ごめんごめん」
樹が笑う。
樹「お前ほんとこういうの好きだな」
〇〇「ほんとだよ」
少し空気が柔らぐ。
〇〇はグラスを持つ。
〇〇「でも」
みんなが〇〇を見る。
〇〇「前に進もうと思う」
樹が頷く。
樹「それでこそ〇〇」
風磨「うん」
慎太郎「いいじゃん」
北斗も頷く。
北斗「それでいい」
〇〇「なんか恥ずかしい」
風磨「今さら」
樹「何年の付き合いだよ」
慎太郎「ほんとだよ」
北斗「恥ずかしがるタイプじゃないだろ」
〇〇「失礼」
北斗「事実」
〇〇は少し笑う。
〇〇「ありがとう」
風磨「礼いらない」
樹「当たり前」
慎太郎「仲間だから」
北斗も静かに言う。
北斗「友達だろ」
〇〇「ほんといい仲間」
みんなでグラスを合わせる。
北斗はその瞬間だけ〇〇を見る。
でもすぐに視線を外す。
北斗「前進祝いだな」
慎太郎「いいね」
樹「それだ」
風磨「決まり」
〇〇は笑う。
〇〇「前進祝いってなに」
慎太郎「次の恋」
〇〇「まだ早い」
北斗「焦らなくていい」
〇〇「うん」
北斗「ゆっくりでいい」
〇〇は頷く。
その夜。
〇〇の恋は一つ終わった。
でも。
北斗の恋はもう一度始まったばかりだった。
ーーーーーーー
北斗 side
大型特番の収録が終わった夜。
樹からメッセージが来た。
樹「今日来い」
北斗「どこ」
樹「いつもの店」
北斗「誰いる」
少しして返信。
樹「風磨と慎太郎」
そしてもう一行。
樹「〇〇も来る」
北斗はスマホを見たまま少し止まる。
正直、行く理由はそれだけで十分だった。
北斗「分かった」
短く返して家を出る。
店の個室。
丸いテーブル。
奥のソファに樹と慎太郎。
その向かいのソファに北斗。
隣に風磨。
北斗が座った瞬間、風磨が横目で見る。
風磨「顔で分かる」
北斗「何が」
風磨「来るって聞いたんだろ」
北斗「…」
風磨「分かりやすい」
北斗「うるさい」
樹が笑う。
樹「もう何年だよ」
慎太郎「ドラマの時からだもんな」
北斗「声でかい」
慎太郎「本人いないからいいじゃん」
北斗「よくない」
風磨「安心しろ」
風磨「ここにいるやつ全員知ってる」
北斗「だから嫌なんだよ」
樹「俺らと風磨と勝利」
慎太郎「廉と付き合った時きつかった?」
北斗「…」
少し間が空く。
北斗「まあな」
樹「だよな」
慎太郎「俺あの時気づいたもん」
北斗「何に」
慎太郎「北斗ずっと〇〇見てた」
北斗「見てない」
風磨「見てた」
樹「見てた」
北斗「うるさい」
慎太郎「でも今日別れた話するんだろ?」
北斗「多分な」
樹「大丈夫?」
北斗「何が」
樹「北斗のメンタル」
北斗「普通」
風磨「嘘」
北斗「普通」
その時、ドアが開く。
〇〇「お、揃ってる」
その声だけで、
北斗の心臓が一瞬跳ねる。
北斗「お疲れ」
いつもの声。
いつもの顔。
何年も隠してきた。
だから今も同じ。
〇〇が北斗の向かいに座る。
真正面。
近いのに遠い距離。
樹「今日廉いたんだろ」
〇〇「うん」
風磨「話した?」
〇〇「話した」
慎太郎「マジ?」
北斗「どうだった」
〇〇「ちゃんと話せた」
北斗は小さく頷く。
〇〇「お互いまだ嫌いじゃないって」
胸の奥が少しだけ重くなる。
北斗「そうだろうな」
〇〇「でも戻らないって思った」
北斗は〇〇を見る。
北斗「それが答えだろ」
〇〇「うん」
少し空気が落ち着く。
慎太郎が急に笑う。
慎太郎「じゃあさ」
〇〇「なに」
慎太郎「新しい恋見つかるかもね」
その瞬間。
北斗の手が止まる。
慎太郎「〇〇モテるじゃん」
樹「展開早い」
風磨「まだ早い」
〇〇「早いよ」
慎太郎「俳優とかアイドルとか」
慎太郎「この中にいるかもよ」
北斗の心臓が一瞬強く鳴る。
樹「おい」
風磨「やめろ」
〇〇「ないない」
北斗「慎太郎」
慎太郎「なに」
北斗「そういうの言うと恥ずかしいだろ」
慎太郎「ごめんごめん」
会話はすぐ流れる。
でも。
風磨が横から小さく言う。
風磨「顔」
北斗「なに」
風磨「ビクッとしてた」
北斗「してない」
樹「してた」
慎太郎「してた」
北斗「うるさい」
〇〇「なに騒いでるの」
樹「なんでもない」
風磨「なんでもない」
慎太郎「なんでもない」
〇〇「怪しい」
北斗「気にするな」
〇〇「はいはい」
〇〇は笑う。
その笑顔を見ると、
昔を思い出す。
ドラマの現場。
一番最初に好きになった瞬間。
廉と付き合う前から、
ずっと好きだった。
でも言わない。
まだ言う時じゃない。
〇〇「でも」
〇〇「前に進もうと思う」
北斗は静かに頷く。
北斗「それでいい」
〇〇「なんか恥ずかしい」
北斗「恥ずかしがるタイプじゃないだろ」
〇〇「失礼」
北斗「事実」
みんなが笑う。
その空気の中で、
北斗はグラスを持つ。
北斗「前進祝いだな」
慎太郎「いいね」
樹「それだ」
風磨「決まり」
〇〇「前進祝いってなに」
慎太郎「次の恋」
〇〇「まだ早い」
北斗「焦らなくていい」
〇〇「うん」
北斗「ゆっくりでいい」
〇〇が頷く。
その姿を見ながら、
北斗は思う。
ずっと好きだった。
廉と付き合う前から。
今も変わらない。
そして隣で風磨が小さく言う。
風磨「チャンス来たな」
北斗「来てない」
樹「来てる」
慎太郎「来てる」
北斗「うるさい」
でも。
心のどこかで。
少しだけ思っていた。
もしかしたら――
今度こそ。
ーーーーーー
〇〇side
〇〇の家。
みんなと別れて家に帰った。
シャワーを浴びて、部屋着に着替えてベッドに入る。
今日はいろんなことがあった。
大型特番の収録。
廉との久しぶりの会話。
そのあと、みんなでご飯。
楽しかったはずなのに。
部屋が静かになると、色んなことが頭に浮かぶ。
天井を見つめる。
時計を見る。
1:34
〇〇「…寝れない」
目を閉じる。
でも、頭が止まらない。
廉のこと。
仕事のこと。
これからのこと。
〇〇「はぁ…」
枕に顔をうずめる。
少しして、スマホを手に取る。
連絡先を開く。
スクロール。
指が止まる。
「北斗」
〇〇「…」
少し迷う。
こんな時間。
でも、さっきまで普通に話していたし。
〇〇はそのまま電話ボタンを押す。
プルルル…
プルルル…
ガチャ
北斗「もしもし」
〇〇「起きてた?」
北斗「起きてる」
〇〇「ごめんねこんな時間」
北斗「気にするな」
〇〇「寝てた?」
北斗「まだ」
〇〇「そっか」
少し沈黙。
北斗「どうした」
〇〇「眠れない」
北斗「珍しいな」
〇〇「そう?」
北斗「お前すぐ寝るだろ」
〇〇「よく知ってるね」
北斗「長い付き合いだから」
〇〇は少し笑う。
〇〇「なんかさ」
北斗「うん」
〇〇「今日いろいろあってさ」
北斗「廉のこと?」
〇〇「それもある」
北斗「それも?」
〇〇「仕事も」
北斗「忙しいだろ最近」
〇〇「めっちゃ」
北斗「映画まだ動いてるしな」
〇〇「まだ取材とかある」
北斗「150億だもんな」
〇〇「それ言われると実感する」
北斗「すごいよ普通に」
〇〇「でも現場は普通だよ」
北斗「そういうもんだろ」
〇〇「北斗も最近忙しくない?」
北斗「まあまあ」
〇〇「SixTONESどう?」
北斗「最近?」
〇〇「うん」
北斗「ジェシーがまたうるさい」
〇〇「想像つく」
北斗「この前もさ」
〇〇「うん」
北斗「楽屋で急に歌い出して」
〇〇「ジェシーぽい」
北斗「しかもミュージカル風」
〇〇「やばい」
〇〇笑う。
北斗「樹がツッコんでた」
〇〇「いつもの流れ」
北斗「慎太郎は横で笑ってた」
〇〇「それも想像つく」
北斗「きょもは普通にハモってた」
〇〇「え、参加してるじゃん」
北斗「高地は拍手してた」
〇〇「SixTONES平和」
北斗「まあな」
〇〇「いいなあそういうの」
北斗「timeleszは?」
〇〇「うちも変わらない」
北斗「風磨は?」
〇〇「相変わらずいじってくる」
北斗「だろうな」
〇〇「この前もさ」
北斗「うん」
〇〇「収録終わりに」
〇〇「今日の〇〇天然ひどかったなって」
北斗「事実だろ」
〇〇「ひどい」
北斗「で?」
〇〇「勝利が横で笑ってた」
北斗「想像つく」
〇〇「そうちゃんは優しいからフォローしてくれる」
北斗「そうちゃんっぽい」
〇〇「将生は普通に笑ってる」
北斗「将生もそんな感じだな」
〇〇「原ちゃんはツッコミ」
北斗「うん」
〇〇「しのとてらは静かに見てる」
北斗「それリアル」
〇〇「しゅうとは途中で天然発言する」
北斗「カオスだな」
〇〇笑う。
〇〇「でも楽しい」
北斗「いいじゃん」
〇〇「北斗のグループも好きだよ」
北斗「急にどうした」
〇〇「なんか思った」
北斗「変なやつ」
〇〇「ひど」
少し沈黙。
でも自然な沈黙。
〇〇「北斗」
北斗「うん」
〇〇「今日さ」
北斗「うん」
〇〇「みんなでご飯食べて楽しかった」
北斗「そうだな」
〇〇「久しぶりだったし」
北斗「最近忙しいからな」
〇〇「そう」
〇〇「でもああいう時間必要だよね」
北斗「必要」
〇〇「なんかさ」
北斗「うん」
〇〇「安心する」
北斗「何が」
〇〇「みんなといると」
北斗「そうだな」
〇〇「北斗もいるし」
北斗「俺関係ある?」
〇〇「ある」
北斗「なんで」
〇〇「落ち着く」
北斗「何それ」
〇〇「分かんない」
〇〇「でも話しやすい」
北斗「昔からだろ」
〇〇「うん」
〇〇「なんかさ」
北斗「うん」
〇〇「最近北斗と話すと楽」
北斗「今さら」
〇〇「そうかも」
2人は笑う。
〇〇「今何時?」
北斗「ちょっと待って」
スマホを見る。
北斗「3:56」
〇〇「え?」
北斗「3:56」
〇〇「うそ」
北斗「ほんと」
〇〇「そんな話してた?」
北斗「してた」
〇〇「やばい」
北斗「寝ろ」
〇〇「北斗も」
北斗「分かってる」
〇〇「でも楽しかった」
北斗「俺も」
〇〇「ありがとう」
北斗「礼いらない」
〇〇「じゃあ寝る」
北斗「おやすみ」
〇〇「おやすみ北斗」
電話が切れる。
〇〇はスマホを枕の横に置く。
目を閉じる。
さっきまでの寂しさが少し消えていた。
そしてそのまま、ゆっくり眠りについた。
ーーーーーー
北斗 side
ご飯会から帰ったあと。
家に帰り、ソファに座っていた。
シャワーもまだ浴びていない。
ぼーっとテレビをつけていたけど、内容は全く頭に入っていない。
今日のことを思い出していた。
〇〇が笑っていたこと。
廉の話をしていたこと。
前に進こうとしている顔。
北斗「…」
スマホが震える。
画面を見る。
〇〇
一瞬、動きが止まる。
こんな時間。
北斗「…」
少しだけ深呼吸して電話に出る。
北斗「もしもし」
〇〇「起きてた?」
その声を聞くだけで、少し空気が変わる。
北斗「起きてる」
〇〇「ごめんねこんな時間」
北斗「気にするな」
〇〇「寝てた?」
北斗「まだ」
正直、さっきまで眠る気もなかった。
〇〇「眠れない」
北斗「珍しいな」
ベッドで寝ながら話してるんだろうな、と思う。
長い付き合いだから想像できる。
〇〇「今日いろいろあってさ」
北斗「廉のこと?」
〇〇「それもある」
北斗「そっか」
北斗はソファに座り直す。
自然と真面目に聞く姿勢になる。
〇〇「ちゃんと終わったはずなのに」
〇〇「寂しくなる」
北斗「普通だろ」
それは本音だった。
好きだった人を簡単に忘れられるわけがない。
〇〇「好きだった」
北斗「知ってる」
本当に知っていた。
付き合う前から。
付き合っている間も。
別れるまで。
全部見ていた。
でもそれは言わない。
話はどんどん続く。
仕事の話。
映画の話。
グループの話。
〇〇が笑う。
その笑い声を聞くと、北斗も自然と笑ってしまう。
北斗「ジェシーがまた楽屋で歌ってさ」
〇〇「やばい想像つく」
北斗「きょもがハモってた」
〇〇「参加してるじゃん」
北斗「高地拍手」
〇〇「SixTONES平和」
〇〇の話も聞く。
timeleszのメンバーの話。
風磨にいじられた話。
勝利が笑っていた話。
そうちゃんがフォローした話。
楽しそうに話す〇〇。
北斗は思う。
北斗(こういう時間好きなんだよな)
恋とかじゃなくても。
ただ普通に話している時間。
〇〇「北斗ってさ」
北斗「うん」
〇〇「落ち着く」
北斗は少し黙る。
北斗「何それ」
〇〇「分かんない」
〇〇「でも安心する」
北斗(それ言うか)
心臓が少し速くなる。
でも声は普通にする。
北斗「今さらだろ」
〇〇「そうかも」
笑う〇〇。
時間はどんどん過ぎていく。
気づけば俺も完全にリラックスしていた。
北斗「今何時だろ」
スマホを見る。
北斗「3:56」
〇〇「え?」
北斗「3:56」
〇〇「そんな話してた?」
北斗「してた」
〇〇「やば」
北斗「寝ろ」
〇〇「北斗も」
北斗「分かってる」
〇〇「でも楽しかった」
北斗「俺も」
本音だった。
〇〇「ありがとう」
北斗「礼いらない」
〇〇「じゃあ寝る」
北斗「おやすみ」
〇〇「おやすみ北斗」
電話が切れる。
部屋が急に静かになる。
スマホを少し見つめたまま動かない。
さっきまで聞こえていた〇〇の声。
それが急に消える。
北斗「…」
小さく息を吐く。
北斗「2時間か」
通話履歴を見る。
長すぎる。
でも不思議と疲れていない。
むしろ少し嬉しい。
北斗「ほんと…」
ソファにもたれながら天井を見る。
北斗「鈍いな」
さっきの会話を思い出す。
「落ち着く」
「安心する」
あんなこと普通に言う。
北斗「友達に言うか普通」
でもそれが〇〇だ。
昔からそう。
天然で。
思ったことをそのまま言う。
北斗は立ち上がる。
キッチンに行って水を飲む。
冷たい水が喉を通る。
北斗「…」
ふと笑う。
北斗「まあいい」
〇〇が元気そうだった。
それでいい。
北斗はずっと見てきた。
廉と出会った時も。
付き合った時も。
幸せそうな顔も。
別れた時も。
全部知っている。
そして今。
また前に進こうとしている。
北斗「ゆっくりでいい」
さっき自分が言った言葉。
本当にそう思う。
焦らなくていい。
無理しなくていい。
その時。
スマホが光る。
メッセージ。
〇〇
「北斗今日はありがとう!!」
北斗は少し笑う。
北斗
「早く寝ろ」
すぐ返信が来る。
〇〇
「もう寝る!おやすみ!」
北斗
「おやすみ」
スマホをテーブルに置く。
北斗は窓の外を見る。
空は少し明るくなり始めている。
北斗「…」
静かな朝前の時間。
北斗は思う。
ずっと好きだった。
廉と付き合う前から。
今も変わらない。
でも焦らない。
北斗「ゆっくりでいい」
そう小さく呟いて、
北斗はやっとシャワーを浴びに向かった。
ーーーーーーーーーーー
とある日。
CM撮影決定の日。
午後。
〇〇はドラマ撮影の合間、楽屋で台本を読んでいた。
マネ「〇〇」
〇〇「はい?」
マネ「新しいCMの件なんだけど」
〇〇「CM?」
マネ「決まった」
〇〇「ほんとですか?」
マネ「本当」
〇〇「どこの?」
マネージャーは少し笑う。
マネ「ポケモン」
〇〇「え!?ポケモン!?」
〇〇は一気に顔を上げる。
〇〇「やばい、嬉しい!」
マネ「今回、共演者が」
〇〇「誰?」
マネ「松村北斗」
〇〇「…北斗?」
マネ「ああ」
〇〇「また一緒?」
マネ「そうだな」
〇〇は少し驚いた顔をする。
〇〇「何回目だろ」
マネ「3回目」
〇〇「あ、そっか」
〇〇は思い出す。
1回目。
アイスの実のCM。
真夏の撮影。
2人でアイスを食べる爽やかなCM。
2回目。
お酒のCM。
風磨と樹も一緒で、4人での撮影。
大人っぽい雰囲気のCMだった。
そして今回。
〇〇「3回目か」
マネ「そうだな」
〇〇「なんかすごいね」
マネ「今回はポケモンのCM」
〇〇「絶対可愛いやつ」
マネ「“ぽこあポケモン”」
〇〇「名前から可愛い」
マネ「撮影は来週」
〇〇「楽しみ!」
マネ「台本は後でお渡す」
〇〇「分かりました!」
スタッフが楽屋を出る。
〇〇はスマホを手に取る。
北斗の名前を開く。
少しだけ考えてからメッセージを送る。
〇〇
「北斗、ポケモンCMほんと?」
数分後。
北斗から返信。
北斗
「ほんと」
〇〇
「聞いた!」
北斗
「さっきマネージャーから」
〇〇
「また一緒じゃん」
北斗
「そうだな」
〇〇
「3回目だよ」
北斗
「そうなるな」
〇〇
「1回目アイスの実だったよね」
北斗
「懐かしいな」
〇〇
「あの時めちゃくちゃ暑かった」
北斗
「溶ける前に食べろって言われた」
〇〇
「何回も撮り直した」
北斗
「お前笑うから」
〇〇
「北斗が変な顔するから」
北斗
「してない」
〇〇
「してた」
〇〇は少し笑う。
〇〇
「2回目はお酒のCM」
北斗
「風磨と樹もいたやつ」
〇〇
「あれ楽しかった」
北斗
「騒がしかった」
〇〇
「樹がずっと喋ってた」
北斗
「風磨も」
〇〇
「今回ポケモンだって」
北斗
「聞いた」
〇〇
「絶対可愛い」
北斗
「お前向き」
〇〇
「北斗は?」
北斗
「楽しみ」
〇〇
「似合うと思う」
北斗
「そうか」
〇〇
「撮影楽しみ」
北斗
「来週だな」
〇〇
「久しぶりに一緒の現場」
北斗
「そうだな」
メッセージはそこで止まる。
でも不思議と、少し嬉しい気持ちが残る。
そしてその頃。
SixTONESの楽屋。
樹「北斗」
北斗「ん?」
樹「ポケモンCM決まったって?」
北斗「うん」
慎太郎「誰と?」
北斗「〇〇」
慎太郎「また!?」
ジェシー「3回目じゃん!」
樹「最初アイスの実だったよな」
北斗「そう」
慎太郎「2回目は酒のCM」
樹「俺と風磨もいたやつ」
ジェシー「今回ポケモン!?」
きょも「かわいいCMだ」
樹「北斗似合うの?」
北斗「うるさい」
ジェシー「ぽこあポケモン!」
慎太郎「絶対かわいいやつ」
樹「でもまた〇〇とだな」
北斗「仕事だから」
高地「顔ちょっと嬉しそう」
北斗「普通」
ジェシー「絶対嘘!」
楽屋で笑いが起きる。
北斗はスマホを見る。
さっきのメッセージ。
〇〇「撮影楽しみ」
北斗は少しだけ笑う。
北斗「…」
また一緒に仕事。
3回目の共演。
それが少しだけ、
楽しみだった。
ーーーーーーー
CM撮影当日。
朝☀️
都内の大型スタジオ。
まだ少し眠い空気の中、スタッフたちが準備で慌ただしく動いている。
巨大なセットの中央にはポケモンの世界観をイメージしたカラフルな街並み。
木のオブジェ。
モンスターボールの小道具。
ピカチュウやポケモンのぬいぐるみ。
ポップで可愛い空間だった。
スタッフ「おはようございます!」
そこへスタジオのドアが開く。
北斗「おはようございます」
スタッフ「おはようございます!」
北斗は一歩スタジオに入ると、すぐ周りを見渡した。
ポケモンだらけのセット。
北斗「…すご」
スタッフ「松村さんポケモン好きなんですよね?」
北斗「かなり好きです」
スタッフ「今日のCMぴったりですね」
北斗は少しだけ笑う。
北斗「テンション上がります!」
その時。
スタジオの扉がもう一度開く。
〇〇「おはようございます!」
スタッフ「おはようございます!」
北斗が振り向く。
〇〇は少し寝癖の残る髪でスタジオに入ってきた。
〇〇「北斗」
北斗「おはよう」
〇〇は周りを見る。
〇〇「え、ちょっと待って」
〇〇「可愛い」
ピカチュウのぬいぐるみを手に取る。
〇〇「すごいポケモンだらけ」
北斗「そうだな」
〇〇「北斗絶対テンション上がってるでしょ」
北斗「普通」
〇〇「嘘」
北斗「嘘じゃない」
〇〇「顔に書いてある」
北斗「書いてない」
スタッフが笑う。
スタッフ「お二人衣装お願いします!」
〇〇「はい!」
北斗「お願いします」
控室。
衣装は少し大人っぽいカジュアル。
紫をベースにしたシンプルな衣装だった。
先に北斗が着替えてスタジオへ戻る。
スタッフ「似合ってます!」
北斗「ありがとうございます」
そこへ。
〇〇も戻ってくる。
〇〇「どう?」
北斗は一瞬見る。
北斗「似合ってる」
〇〇「ほんと?」
北斗「うん」
〇〇「北斗も似合ってる」
北斗「ありがとう」
カメラマンが近づく。
カメラマン「今日はポケモンの世界に迷い込んだ二人という設定です」
〇〇「楽しそう」
北斗「面白そうですね」
カメラマン「自然な感じでお願いします」
〇〇「はい!」
カメラマン「最初はポケモンを見つけるシーンから」
スタッフが小さなポケモンのぬいぐるみをセットの影に置く。
カメラマン「〇〇さんが先に気づきます」
〇〇「分かりました」
カメラマン「北斗さんは後ろから来てください」
北斗「はい」
撮影準備。
スタッフ「本番いきます!」
カメラマン「よーい…」
カメラマン「スタート!」
〇〇「ん?」
〇〇はセットの草むらを見る。
〇〇「北斗」
北斗「どうした」
〇〇「見て」
北斗が覗き込む。
二人の距離が近い。
北斗「ほんとだ」
〇〇「可愛い」
北斗「ポケモンだ」
カメラマン「いいですね!」
カメラマン「もう一回!」
再び撮影。
〇〇「北斗!」
北斗「なに」
〇〇「こっち」
北斗「どこ」
〇〇「ここ」
北斗「ほんとだ」
〇〇「可愛い」
北斗「だな」
カメラマン「すごく自然!」
スタッフたちが小さく拍手する。
次のシーン。
カメラマン「ポケモンを追いかけるシーンです」
〇〇「追いかける?」
北斗「走るんですか」
カメラマン「軽くで大丈夫です」
撮影。
〇〇「待って!」
北斗「速い」
〇〇「北斗遅い」
北斗「普通」
〇〇「嘘」
カメラマン「いいですね!」
カメラマン「もう一回!」
撮影はどんどん進む。
途中休憩。
〇〇は椅子に座る。
〇〇「北斗」
北斗「ん?」
〇〇「今日楽しそう」
北斗「普通」
〇〇「ポケモンだからでしょ」
北斗「まあ」
〇〇「やっぱり」
〇〇は笑う。
スタッフ「次ラストシーンです!」
カメラマン「最後は二人でポケモンと遊ぶシーン」
〇〇「可愛いCM」
北斗「だな」
カメラマン「よーい!」
カメラマン「スタート!」
〇〇「北斗見て!」
北斗「どこ」
〇〇「ここ」
二人が同時に笑う。
カメラマン「いい!」
カメラマン「カット!」
スタッフ「お疲れ様でした!」
スタジオに拍手が広がる。
〇〇「終わった!」
北斗「早かったな」
〇〇「楽しかった」
北斗「そうだな」
その時。
スタッフが大きな花束を持ってくる。
スタッフ「〇〇さん!」
〇〇「え?」
スタッフ「CM撮影お疲れ様でした!」
大きな花束。
〇〇「わ、すごい」
スタッフ「どうぞ!」
〇〇「ありがとうございます!」
〇〇は花束を抱える。
〇〇「めっちゃ大きい」
スタッフ「北斗さんも!」
北斗にも花束が渡される。
北斗「ありがとうございます」
スタッフ「三回目の共演記念です!」
〇〇「三回目か」
北斗「そうだな」
スタッフ「またぜひお願いします!」
〇〇「こちらこそ!」
〇〇は花束を見ながら笑う。
〇〇「北斗」
北斗「ん?」
〇〇「三回目すごいね」
北斗「そうだな」
〇〇「次あったら四回目」
北斗「ありそう」
〇〇「ポケモン楽しかった」
北斗「俺も」
〇〇「また一緒に仕事したいね」
北斗は少しだけ笑う。
北斗「そうだな」
スタジオのライトがゆっくり落ちていく。
三回目の共演。
その一日は、
思ったよりあっという間に終わった。
ーーーーー
CM公開日。
夜20:00。
新しいポケモンCMがテレビとネットで一斉公開された。
CMは30秒。
ポケモンの世界に迷い込んだ二人。
〇〇と北斗がポケモンを見つけて笑う。
走る。
一緒に驚く。
最後はポケモンと一緒に笑うシーン。
可愛さと大人っぽさが混ざったCMだった。
公開から数分。
すぐにXがざわつき始める。
トレンド
「ほく〇〇」
「ポケモンCM」
「3回目の共演」
ファンの投稿が一気に流れていく。
ーーー
@poke_love
〇〇と北斗のポケモンCM可愛すぎる
@st_fan
この二人また共演してるの!?3回目?
@drama_otaku
アイスの実→お酒CM→ポケモンCMこの二人の共演歴すごい
@hokuto_st
北斗ポケモン好きだから絶対嬉しいやつじゃん
@xx_actress
〇〇ちゃんポケモン似合いすぎてる
@pokemon_news
新CMの二人の距離感めちゃ自然
@movie_fan
この二人相性いいよね
@idol_talk
3回もCM一緒って普通にすごくない?
ーーー
数分後。
さらに投稿が増える。
@fan_01
ポケモン見つけるシーンの距離近くない?
@fan_02
北斗子供ぽく笑ってるの珍しい
@fan_03
〇〇ちゃんが北斗呼びなの好き
@fan_04
この二人の空気感好きすぎる
@fan_05
また共演してほしい!!
ーーー
さらに。
過去CMを思い出すファンも。
@cm_history
1回目アイスの実
2回目お酒CM(風磨と樹も)
3回目ポケモン
このコンビ地味に続いてる
@hokuto_fan
北斗ポケモン好きだから夢のCMでは
@actress_fan
〇〇ちゃんめっちゃ楽しそう
ーーー
数時間後。
トレンド上位。
1位
「ポケモンCM」
2位
「ほく〇〇」
3位
「ぽこあポケモン」
ーーー
深夜。
まだ投稿は止まらない。
@fan_A
この二人またドラマやってほしい
@fan_B
共演3回目って運命感じる
@fan_C
不思議と自然なんだよねこの2人
@fan_D
CM30秒じゃ足りない
@fan_E
メイキング見たい!
ーーー
そして。
ある投稿がバズる。
@viral_post
〇〇と北斗って
・恋愛ドラマ共演
・CM3回
・距離感自然
そろそろまたドラマ来ない?
その投稿。
いいね
12万。
リポスト
5万。
コメント
数千。
ーーー
ファンのコメント。
「分かる」
「見たい」
「このコンビ好き」
「また共演して」
ーーー
その頃。
夜。
自宅。
北斗はソファでスマホを見ていた。
樹からLINE。
樹
「CMトレンド入ってるぞ」
北斗
「見た」
樹
「ポケモン効果すごいな」
北斗
「そうだな」
樹
「ファンめっちゃ盛り上がってる」
北斗
「見た」
樹
「〇〇とまた共演してるって」
北斗
「三回目だからな」
樹
「四回目ありそう」
北斗
「知らない」
北斗はスマホを閉じる。
ふとCMの撮影を思い出す。
ポケモンを見つけた時の〇〇の笑顔。
北斗は小さく笑った。
北斗「…ポケモンCMか」
その頃。
〇〇のスマホも通知でいっぱいだった。
マネージャーからメッセージ。
マネージャー
「CMトレンド入ってる」
〇〇
「ほんと!?」
マネージャー
「かなり反響大きい」
〇〇
「嬉しい」
〇〇はXを開く。
ポケモンCMの投稿。
北斗とのツーショットシーン。
〇〇は少し笑う。
〇〇「すごい」
三回目の共演。
たった30秒のCM。
でも。
その30秒は、
たくさんの人の記憶に残っていた。