ふと目が覚めると、真夜中だった。
深い夜の黒に包まれた部屋の中、隣で寝息を立てている最愛の人を見つめた。
少し切れ長な目を閉じている今は、少し幼さを残したような可愛らしい顔になる。
目にかかっていた長い前髪をそっと避けて、彼の寝顔をまじまじと見る。
目が丸く、可愛らしいと言われることの多い俺とは違って、彼はほんとうに男らしい顔をしている。
これでモテないはずがない。
そこまで考えて、俺は少し喉が痛い気がして、キッチンへ水を飲むために向かった。
テキトーに手に取って素肌に羽織ったシャツは、彼のもので、フワッと彼の匂いに包まれる。
その匂いに少しドギマギとしながら、冷蔵庫の中から水を取りだし口をつけた。
そして、なんのなくベランダへと続く窓の前に座り、ため息をついた。
「そう…よな…」
「あいつがモテへんわけないよな…」
そこまで言って、自分の言葉にハッとなった。
彼と身体の関係を持つようになってしばらく経つが、まだ付き合っている訳では無い。
独り占めできる立場にある訳では無いし、彼が誰かと付き合うとなれば、身を引かなければならないのは俺自身だ。
分かって…分かってたけど…
「グスッ…いや…やなぁ…」
いずれくる「その時」を想像して涙が溢れてきた。
1度溢れさせてしまうと、もう止めることは出来なかった。
窓から差し込む月の白いあかりの中、俺は声を押し殺して泣いた。
ギシッ
床の軋む音がしてビックリして振り返ると、驚いた顔をした彼が立っていた。
「ホビー?泣いてる…の?」
「あ…いや…これは…」
口どもっていると彼は俺の隣に座り、そっと指で俺の涙を拭った。
優しく触れてくれる彼の手が嬉しくて、さっきまで悲しかった気持ちがスーッと消えていくのを感じた。
「身体…冷えてる。布団に戻ろう」
「うん…」
理由も聞かずに俺の手をひき、ベッドまで連れてきてくれた彼は、俺を抱きしめるような格好で寝転んだ。
そして、ゆっくりと頭を撫でる彼の手の温もりで、俺は再び夢の世界へと潜り込んで行った。
そんな俺を、彼は寝息が安定するまで見守ってくれていた。
俺が寝たのを確認すると、そっと俺の顔を覗き込み小さなキスを額に落としながら呟いた。
「愛してるよ…ボビー…ずっとそばに居て…」
甘く囁くようなその声は、夢の中にいる俺の耳には届かなかった。
コメント
19件
最高すぎました…どっちも両思いなのかな?ドロドロした関係好き過ぎる❤︎
おー! The恋愛ですね! あ、1つ聞きたいんですけど莉衣那さんは女研の誰推しですか? 私はしろせんせー一択です!
最高(☝ ՞ਊ ՞)☝