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NightOwl”ナイトアウル”
オリジナル作品ー心の最果てにー
この世に生を受けた意味…そんな物を考える素敵でおめでたい心はゴミ箱に捨てた、君は産まれてきただけで蔑まれ、痛めつけられる悲しい子供がいる事を知ってる?…ねぇちょっと僕(俺)らの話に付き合ってよ
20年前…俺と兄貴は同時に産声を上げた、最初は俺らも可愛がられていたのかも知れない、が記憶を遡るといつも怒鳴る親父と世話もせずにド派手な化粧で夜に消える母親、そして飯を漁って飢えを凌ぎ兄貴と2人互いを庇い合う様に眠る…それの繰り返し
私達双子は、物心ついた頃からガリガリに痩せ細った体落ち窪んだ瞳…周りの大人が全員敵に見えた千トと出会うまで私はまともに笑った事も何かを楽しいと感じる心さえも持ち合わせていなかった、ただ…私よりほんの少し不器用で荒っぽい弟が死なない様に、産み落としただけの両親に復讐する為だけに私は生きていた…
子供を愛さない親はいない…
ふざけるな、そんなものは幻想だ何も知らない癖に知った様な口を聞く大人は大嫌いだ…助ける気が無いなら手を差し伸べるな、信用しないリスクしかないから
「いっったぁ!」無菌室の若く《ごと》白い部屋台所から私達の名探偵が悲鳴をあげる
その刹那 ガン!ガラガラ…と鉄と大理石が
接触する甲高い金属音がして私は音の根源へと走る…何故か今日は弟も着いてきた
「千ト!!大丈夫ですか!?」
「ゔぅ…痛い…切っちゃった…どうしよう」
蹲る小さな体…鮮血に染まる床…血の赤…私の頭の中にある秘めて居たトラウマが蘇り目の前の千トが幼き日の弟に見えた…
涙を流しながら私に問うその幼さが残る顔を見ると私は無意識のうちに体を動かし生存率を上げる為に千トの腕を患部に触らない様に力任せに引っ張り上げて壁に縫い付ける様に自分の手で抑えた千トが何かを言っている気がしたが私の意識には全く届かない混乱状態だからだろう
「…ん、…くん、、、てくん、右手くん!」
「!っ…え、あ…千ト?すみません…痛かったですね」
「違うよ!…僕は大丈夫…だから泣かないで…左手君が止血帯持って来たから…ね?」
泣いている?私が…?何故、混乱する思考をシャットし左を見れば左手が震える私の手首を掴み「大丈夫だ、落ち着け」と一言…千トの腕は私が加減なく抑えて居たからだろう、赤紫に変色していた……
「千ト…ごめんなさい…っ、私…千トを、助けようと…」
「うん、知ってるよ大丈夫…右手くんがすぐ来て処置してくれたから痛くないから…そんな顔しないで…」
どんな顔だ?分からない……そんな私を呆れた様に見やると私の後ろ首にひんやりと冷たい手の感触が触れ世界がクリアになった…
「落ち着いた?」
「ゆ…左手…」
「ん、幸いもう止血は終わるちっと深いが今日は一旦様子見ていいだろ」
「……すみませ…nっ…」
緊張と恐怖で張り詰めていた心が解けたのだろう、私の意識はそこで途切れ身体は弟の方へ傾く…
っと…兄貴は多分あの日のこと思い出してパニックになりながらも千トを助けようとしたんだろう、そう…あの日は今日と同じセミがうるさく鳴き喚く夏休み…
親父と母親が出かけて腹が減ったから食い物を漁って居た…その時あのイカれ野郎に見つかり、兄貴は腹を蹴り飛ばされ俺の横を吹っ飛びフローリングに叩きつけられた…
そのまま虫の息な兄貴の上に親父がナイフを振り上げた…そこまでは憶えてる、恐らく生存本能だろう俺は咄嗟に兄貴を庇い狂人が振り上げたナイフが俺の肩口を切り裂き胸を抉って床に落ちる
「ゆんで!ゆんで!…なんで…かばって…っいやだ!死んじゃ嫌だ!!血止まってよぉぉ!」
……「左手!!!!…っ、はぁっはぁっ、…夢…」
どのくらい気絶していたのだろう、フラフラとリビングへ歩みを進めたその時…微かに聞こえた声
「左手くん、右手くん大丈夫かな…ごめんなさい僕のせいで」
「千トのせいじゃねーよ、兄貴と俺だけの内緒にしてたトラウマがフラッシュバックしてパニックになっただけだ」
「……千ト、、、左手」
「あ、兄貴起きたの?おはよ」
「おはようございます…千ト、腕…変色するほど握りしめて申し訳ありませんでした…」
「ううん🙂↔️、右手くんが危ないって言ったのに大丈夫だよって1人で意地張って怪我したんだもん、右手くんむしろありがとうね」
泣きながら私に抱きつく小さな私達の
“主人”…
「…っ…せんとっ…少し待って居てくれますか?…」
「うん、大丈夫だよ今は左手くんだよね?」
「はい、、、」
「んぁ?俺?」
「ゆんで…」
あ…兄貴やべー顔してる…泣きそう
寝室
俺は後ろ手に鍵と電子ロックをかけた…兄貴の目から雨の様な雫が落ち、カーペットを濡らす
「兄貴、お待たせどした?思い出しちまったのか?…そんな震えて」
「死なない…?…ゆんで、痛くない?…」
「死なない、へーきだよ兄貴の方が大丈夫?
ここ…(腹部を撫でる)俺を庇って蹴られたんだろ覚えてるよ」
「何も出来なかった…血…今まで平気だったのに…血…だめ…怖いよ…」
「兄貴や俺にとって…千トは大切な奴だ、だからこそ…ガキの頃に兄貴が見た血を流しながら蹲る俺が千トと重なって思考が飛んだんだろ…死ぬと思ったんだろ」
今の兄貴は冷静じゃない…いつも冷静なフリをして痛みに気付かないフリをしているだけだ俺は兄貴の手を引きベッドに腰掛けると兄貴の腕を強めに引っ張る…すると無抵抗な体は磁石の様に惹かれ合い兄貴が俺を押し倒すみたいな形になる…
「左手…?何を…」
「脱がしてよ」
「は?」
「いーから…脱がしてよ、あにき」
声変わり前の記憶をさぐり声色を高くしてやれば…兄貴はゆっくり俺のシャツを脱がせて露わになった傷跡と重なるタトゥーに指を滑らす…
「…左手…ごめんね……弱くて…ごめん…」
「あにきは強いよ、弱くなんかない…俺はあにきを庇った事後悔した事ないよ?」
「なんで…庇ったの…」
なんで…
か…そんなもの決まっている事だでもあの日は言えなかった…今の俺なら…その答えを言えるから…俺は兄貴の背中に手を回して心臓に兄貴の頭を押し付けると口を開いた
「当たり前だろ、俺らは欠けちゃいけない双子だ、2人とも生きてなきゃ意味ねぇんだよあの状況で兄貴が死んだら俺は絶望してテメーで死んでた…兄貴が弟だからって理由で庇うなら俺だって兄貴だから庇うよ…あんなクソ共に殺される位なら自殺の方がマシだろ」
「ありがとう…私は左手を、千トを守れないのが…辛いから…離れて行くのが怖くて…」
「大丈夫だ、俺も千トも…兄貴が大好きで大切だから離れねーよ」
コメント
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流石です(≧▽≦)もう神様と呼ばせていだだきます。