❤️&💙×💛 ※付き合ってます
💛視点
「あ…、やばやばやば!!蜂の巣落ちてきたー!!!」
「……それそんなに声出すゲームだったっけ?」
手に握られていたコントローラーのスティックを思いっきり倒し、ゲーム内のキャラを走らせる。隣に座っていた若井が呆れたような声色で話しかけてくるが、僕はそれどころじゃない。
「うぅ…、しずえさんの所入ればいけるはずー!!!!あぁぁぁ!!!間違えて斧振っちゃったぁぁ……。」
「あ、刺された。」
完璧な操作ミスに、隣に座っていた人物が楽しげに笑うのが聞こえた。折角可愛い動物とほのぼの暮らそうと思ったのに、思わぬ敵との遭遇に驚かされてしまった。ふぅ、と一息ついて持っていたコントローラーを机に置く。いつもとは見慣れない部屋。そう、僕達は今日元貴の家にお泊まりに来ている。まあ、このSwitchは僕が持ち込んだんだけど。
「……なーんかつまんないなあ…、」
そう呟いた僕の隣の若井がにやりと悪戯気な笑みを浮かべた。言葉を誤ったかもしれない、そう思うのも遅く、嬉しそうにテレビの傍へと歩み寄っていく。
「あ、涼ちゃん。ゲームセーブした?」
「してない!ちょっとまっててね。」
置かれているSwitchの傍まで行った若井に言われ、ハッ、とする。置いたコントローラーを持ち直し、慣れた手つきでセーブボタンを押す。セーブ完了、という言葉が出たことを若井に伝えれば、またテレビの周りで何かをやり始めた。
「…よし。これついてる?」
「ついてるよ〜。元貴のプレステ?」
「そそ、これでゲームしよ。」
テレビの大画面に表示されたプレステの画面。ゲームしよう、とは言っても元貴の許可を得ていない。
「いいの?」
「良いでしょ!もうすぐ帰ってくるだろうし。」
元貴は今コンビニに買い出しに行ってくれている。急に僕たちが来たせいで家に何も無い、と嘆いていた元貴がつい数分前だ。
「……あれ?雷鳴ってる?」
「まじ?」
僕たちの会話の合間に聞こえた建物を揺らすような低い音。カーテンの傍に駆け寄った若井が外の様子を確認する。案の定外は土砂降りで、遠くで光る雷が見える。
「元貴大丈夫かな……。」
「んー…、まあ大丈夫じゃない?すぐ近くだし。ほら、ゲームしよ!」
僕とは反対に、あまり気にしてないような様子の若井に肩を軽く叩かれる。確かにここからコンビニまでの距離は差程ない。楽しそうにコントローラーを手渡す若井に微笑み返し、差し出されたそれを受け取った。
「…………なんで?」
「ん?」
「なんでホラゲーなの!!!」
不穏なBGMが流れるタイトル画面。明らかに怖そうな雰囲気が漂っていて、こんなの始めたら夜寝れないに決まっている。しかも今コントローラーを持っているのは僕。隣に座っている若井は完璧に見守りムードだ。
「ほら、やっぱ春と行ったらホラゲーでしょ。」
「それ夏で言うセリフだから!春で言う人あんま居ないからね!?」
「まあまあまあ、物は試しだよ。」
「試さなくても分かるよ!絶対怖いよ!!」
そんな僕の抗議も虚しく、コントローラーを奪い取った若井に開始ボタンを押されてしまう。
「むーり、むりです!!受け取りません!」
「えー…じゃあ俺帰ろうかな。涼ちゃんこれの消し方分からないでしょ?」
立ち上がろうとする若井の腕を反射的に掴む。テレビの中に映る物々しい雰囲気の森。もしここで若井が帰ってしまったらずっとこの画面を映し出しておくことになる。そんなの絶対に耐えられない。
「…やるから、帰らないで…」
「そう来なくっちゃね〜!はい、コントローラー!!」
「…もう!ほんと意地悪。」
弱々しく呟いた僕の様子に満足したのか、満面の笑みでコントローラーを手渡された。また隣に座り直した若井の視線を感じながら、ゲーム内のキャラを動かしてみる。
「絶対なんか出るよ…、てかこれ何すればいいの!」
「なんだっけ…森の中にある鍵を見つけるみたいなの書いてあった気がする。」
曖昧に呟かれた内容を元に、広い森の中を歩き回っている。特になにか目印がある訳でもなく、ただひたすらに木々が生えているだけだ。こんなの鍵なんて見つかりっこしない。
「ヒントも無いのに鍵なんて見つかるわけ……」
「あ、あった。」
はあ、と大きなため息をついた瞬間、若井が画面を指さした。慌てて画面に視線を戻せば、木に吊るされるような形でぶら下がっている鍵があった。ご丁寧に光を放っており、何となく希望が見えてきた。
「ナイス若井!早速1個めげっと……っっ!?、?!?」
「!?!?!?びびったぁ……」
鍵を入手した瞬間、突然木の影から何かが襲いかかってきた。あまりの驚きからコントローラーが手のひらから吹っ飛んでいってしまった。
「し、しぬ……心臓いたい…」
「ビビりすぎだよ涼ちゃん。」
自身の心臓の音が煩く聞こえてくる。ビビりすぎだよ、なんて笑い飛ばしてくる若井の姿を見れば、何故か爽やかそうな表情を浮かべていた。なんでやらされてる僕の方がダメージ高いんだ、なんて思ったがぐっ、と言葉を飲み込む。
「……はあ、ちょっと水取ってく…る?」
「え、?」
キッチンを借りようと立ち上がった時、一瞬にして部屋が暗闇に包まれた。さっきまでついていたテレビの画面も真っ暗になってしまい、聞こえるのは隣からの困惑する声だけだ。
「停電かも…、ちょっと僕外見てくる……っ!?」
1歩を踏み出した瞬間、何かに足が取られてしまった。完全に身体がバランスを無くし、床とぶつかるであろう衝撃に、ぎゅっ、と目を固く瞑る。
「っ、あぶな!これキャッチ出来てる!?全然見えないけど!?」
身体に走る痛みの代わりに、すぐ近くから聞こえた若井の声と温もり。僕を抱き締めながらもすっかりパニックになっている様子に声を掛けようと口を開いたが、思っている以上に距離が近いことに気が付いてしまった。
「……できてる。」
僕が呟いた言葉に、若井の肩がビクリと跳ねた。きっと相手も同じことを思っている。互いの息遣いがハッキリと聞こえるような距離。暗闇が相まってか、いつもよりも心臓が煩い。
「若井……、もう離していいよ。」
離すよう言ったはずなのに、僕を抱き締めていた力がよりいっそ強まった。身体から共有される暖かい体温。幸せな状況に頬が緩んでいた時、突然部屋に灯りが戻った。眩しさに思わず目を細めると、玄関から物音がした。慌てて若井の傍から立ち上がり、恥ずかしさを誤魔化すようにリビングの扉の近くへと駆け寄る。
「おかえりもと……き!?!?」
「ただいま涼ちゃーん!って、え?ちょ、ちょ、大丈夫!?」
扉が開くと同時に、見慣れた元貴の姿がある、はずだった。代わりにあったのは怖いお面を被った人物の姿で、驚きのあまり一気に足に力が入らなくなってしまう。へたりと床に座り込めば、慌てて駆け寄られた。聞こえたのは聞き慣れた元貴の声で、外したお面の下は、焦ったような表情を浮かべていた。
「ごめん、ごめんね涼ちゃん!ちょっとしたドッキリのつもりだったんだけど……」
「元貴さいてー、おいで涼ちゃん。」
「わかいぃぃ……」
買ってきたアイスで結局機嫌は治ったらしい。
コメント
3件
ヘタって座り込む涼ちゃん可愛い…で女の子座りなんだもんね、… 大森さんが買ってきたアイスで機嫌直すの可愛すぎる…りょつぱも尊かった…見えないのに抱きしめるとか若井さんいけめん!!!
やっぱり怖がってる涼ちゃんかわいいですねぇ🫶🏻︎💕︎︎森さんがアイスで涼ちゃんの機嫌直してるの尊い🤦♀️🩷(自分もちょっとビビっちゃいました笑