❤️×💛 ※同棲、付き合ってます
💛視点
お風呂上がりで火照った肌を冷たい夜風が撫でる。ベランダの柵に手を添え、何を思うでもなく空で此方を見下ろす月と見つめ合う。何時もよりも朧気な輪郭。微かに鼻を通る春の香りを含んだ薫風も心を穏やかにさせる。ぼーっと見つめる僕の意識を遮るよう、月が顔を隠した。少しだけ暗さを増してしまった街中に目を落とす。ポツポツと斑に光が散らばった様子が蛍みたいだ。元貴にも、なんて考えていれば、ふと背後から落ち着く声がした。
「月と睨めっこ?」
ふわりと僕の身体を包んだ元貴の香り。肩に掛けられた質のいい上着をぎゅっ、と握り締め、隣に来た元貴に視線を向ける。
「もう見えなくなっちゃった。」
「じゃあ涼ちゃんの負け?」
微かに口角を上げながら冗談交じりに言葉を紡ぐ様子が何とも元貴らしい。不戦勝だよ、なんて笑いかければ、納得がいかないように口を尖らせて軽い相槌を返された。
「でも涼ちゃん弱いからなぁ……」
うーん、と大袈裟に悩む素振りを見せた元貴の瞳の中で月が揺れた。
「あ、月。」
その僕の声に視線を向けた元貴。真っ直ぐと見つめる僕の瞳に首を傾げ、疑問を含んだ声を上げた。
「何処見て言ってんの?」
そっと元貴の頬に触れる。綺麗に顔立ちを確かめるように輪郭をなぞり、自然と伏せられた瞼を優しく撫でた。
「元貴の目。」
瞳の中で漂う月を見つめながらそう言えば、キョトン、とした驚いた顔で見つめ返される。僕の背後で空に浮かぶ月に焦点を置いた元貴が納得したような声を上げ、頬に触れていた僕の手のひらを優しく下ろした。代わりに、暖かい手のひらが僕の両頬に触れた。
「まだ勝負の途中でしょ?」
ぐっ、と軽く込められた手のひらの力。真っ直ぐと見つめられた元貴の瞳から逃れられなくなってしまった。
「…、別に本物見ればいいじゃん。」
「俺と月、同時に見れるってお得だから。」
真面目な顔でそう言いきった元貴に思わず笑いが零れてしまう。そんな僕に釣られて細められた三日月。
大好きだよ。
雰囲気に全振りしました🫠🫠
コメント
8件
しきさんが描く月、夜…でしか得られない世界があります✨ なんとも揺らいだ、綺麗だけど、心許ない様な…。 次も楽しみにしています✨
儚いけどかわいい雰囲気めっちゃ好き😖💓尊い
雰囲気に全振り⋯⋯その雰囲気が最高すぎる!!幸せすぎる😆