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九月九日雅(つきみびみやび)は九月九日庵(つきみびいおり)の従兄弟の同い年だ。よく海に潜る「みのり」という犬と河原を散歩していた。庵の方が早くうまれ、どちらかというと庵の方が頭はよい。そして庵の影響で雅も動物保護活動を始めたのだ。
ぐいっ!みのりがリードを引っ張った。そしてぐいぐい進み始めた。「み、みのり?」みのりは引っ張って川の入口まで近づいた。そしてピタリと止まった。みのりが見る先には黒いビニール袋がくらげのようにゆらゆら揺れていた。そしてモゾッと小さく動いた。「うわっ!」雅が力を抜いたところでみのりが思いっきり飛び込んだ。
そしてスイスイ泳ぎ、ビニール袋をくわえて戻ってきた。そして優しく河原へ置き、袋を、カリカリとし始めた。「どうしたんだよ?みのり?」雅の呼びかけにも反応しなかった。すると、ふと同い年の兄、庵が言ったことを思い出した。「いいか。雅。動物保護活動をするには、動物の気持ちをいち早く読み取らなくてはならない。いつもと様子がおかしいとか感じたら、その直感を信じろ」
そう言われた。雅は少しためらったものの、袋の中を覗いた。「わっ!」雅は袋を落としそうになった。中には数匹の赤ちゃん犬の死体があった。「死体…?」しかし、死体と思った子犬たちはわずかに動いていた。
動物病院へ行くと子犬は六匹でまだ乳飲み子だったことがわかりました。うち二匹は栄養がなくて亡くなり、あとの四匹はほぼ瀕死で色々治療を施している。みんな栄養失調だ。そして毛色は白と薄い茶色のミックスがほとんど。
ねりきり、まんじゅう、あんこ、やつはし、ようかん、もなかと名付けた。和菓子シリーズだ。亡くなった二匹には、かんてん、おやきと名付けた。かんてん、おやきは雅の家に迎えた。まだ乳飲み子ですので二時間おきにミルクを与えなければいけません。ですのでミルクボランティアに預けることになりました。そしてミルクボランティアに預けて二ヶ月。和菓子兄妹が戻ってきました。「おかえり!みんな!」雅は暖かく出迎えました。「ねえ雅。庵にーちゃんに和菓子兄妹見せてあげる?」庵は雅の家から走って30秒のところにあります。「わかった!行ってくるわ」雅はキャリーバッグに和菓子兄妹を入れて走った。
「庵にぃ。和菓子兄妹連れてきた!会ってみて!」インターホンを鳴らしてデーデーポッポーとさえずるキジバトのようにさえずった。「ああ。雅。おひさ」庵はひょこっと出てきた。その顔は雅そっくりだ。「和菓子兄妹連れてきたって言ってたな?見せて!」「いいよ!ちょっとあがらせてもらえるかい?」「ああ。ごめん」庵と雅は家へ上がりました。「そのキャリーに入れてあるのか?」「そうだよ!」雅は一匹ずつ抱き上げた。このこがねりきりだよ、などと紹介しながら。「里親は決まったの?雅」「まだ決まってない。だから来週の譲渡会まで学校で探すよ。」「わかった。それでいいと思うぞ。じゃあ俺は中学校で探す」「ありがとう」同い年生まれと言っても庵は2月に生まれ、雅は四月に生まれた。だから同じ年に生まれたがギリギリ違うということだ。
「九月九日さん…」細い声がかかり、雅が後ろを向くと、髪を長くおろし、うつむいた女の子がいた。「久寿米木さん」後ろには久寿米木希阿(くすめぎきあ)が立っていた。「あ、あの、九月九日さん。こちらで犬の里親を探していると聞いて…」「してるよ?」「迎えたいなって。い、家でも決まったの。いい?」希阿はうつむきながらも言った。雅はにっこりと笑って、「いいよ。じゃ、この紙に書いて」雅は手渡した紙は庵が徹夜で制作した書類だ。「う、うん」希阿は紙をそっと受け取り、そそくさとまるで食べ物を盗んだネズミのように去っていった。「決まるかな。和菓子兄妹の家族」ぼそっと雅は呟かずにいられなかった。
放課後、希阿はおずおずと紙を差し出した。とても字がうまい。清少納言や紫式部が現代の文字で書いたような美しさだ。「わかった。ありがと」雅はそう言って透明のクリアファイルに挟んで手に持って帰った。
「庵にぃ。里親希望あったよ!」「ホントか?」庵に久寿米木希阿からの書類を提出すると庵はじっくり目を通して言った。「うんうん。いいぞ。あとはトライアルだな。」庵は希望する子犬の名前を見た。「希望する動物の名前 あんこ、ねりきり」と書かれていた。「ペアだな。よし」庵はにやりとした。雅はあんことねりきりを連れてきた。「じゃあな」一言、誰にも聞こえない声で雅は言った。
トライアルはクリアし、里親が決まった。残るは、まんじゅう、やつはし、ようかん、もなかだ。
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