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第3話
放課後の教室。
今日こそ勉強しようと思ってたのに、また机に突っ伏してた。
「……数学の数字が全部敵に見える。」
ため息をついたら、友達が笑った。
「夏江さー、そんなこと言ってないで、図書室行ってきなよ。」
「えー、静かすぎて落ち着かないんだもん。」
「黒瀬くんいたよ?」
「……は?」
その名前を聞いた瞬間、
なんでか分からないけど、背筋がピンッと伸びた。
気づけば、足は図書室に向かってた。
ドアを開けると、空気がひんやりしてる。
そしてその奥に、見覚えのある後ろ姿。
「ほんとにいた……」
小声でつぶやいた瞬間、彼が顔を上げた。
「……ストーカー?」
「違う! 偶然だし! たまたま足が勝手に!」
「……ホラーかよ。」
ムカつく。
でもその冷めた顔が、なんか少しおかしくて笑えてくる。
「ほら、ここ座るね。」
「いや、誰も許可してないけど。」
「いいのいいの、静かにするから!」
……って言いながら、めっちゃ椅子の音鳴った。
「静かにって言ったそばからうるさい。」
「うるさくないし! 環境音レベル!」
「どんな図書室だよ。」
黒瀬のツッコミが鋭すぎて、勉強にならない。
いや、笑いすぎて問題が解けない。
ふと、隣の彼のノートを覗く。
びっしり書かれた文字と線。
「……ちゃんとやってんだ。」
「お前と違ってな」
むっ。
「私だって本気出せばやるし!」
「“本気出せば”って言ってるうちは出してないんだよ。」
「うるさいっ!」
……気づけば、図書室なのにふたりで小声バトル。
司書さんに「静かに」って怒られた。
黒瀬はちょっと笑って、私の頭を軽く小突く。
「……勉強より先に、口の動き止めろ。」
「それはムリ!」