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「神戸に寄ったから、ケーキ買ってきたよ」
友也がリビングで、出張土産を出した。
SNSで大人気のスイーツだ。
(こんなオシャレなもの 買ったことないのに)
(彩が選んだの?)
沙耶の感情は『負』の方向に向かう。
「え? みんな留守なんだ」
恵子は自治会の集会で、翔太は父親と会っている。
美奈は外出中だ。
「最近、あまり話せなかったし。嬉しいな」
「友也が忙し過ぎるんでしょ。こんな風に」
沙耶は、カード会社からの請求書を出した。
「あ、請求書届いた? かなりの額でしょ」
「そうね」
「大丈夫だから」
「何が?」
「立替払いの申請出した」
「え? これ、経費の立替なの?」
「経理課からOK出てる。すぐ戻ってくるよ」
ホテルと新幹線は出張経費。
飲食代は接待経費で落ちる、という。
「ふ~ん。じゃあ、このホテルは?」
沙耶は『キャンプの日』の請求を指差した。
「あぁ、ゴメン、ゴメン。まさか、ホテルのキャンプ施設とはね。
食材もドリンクも高くてさ。しかも姉ちゃんがホテルの部屋に泊まるし」
「友也も……、ホテルの部屋に泊まったの?」
「え、いや……」
「じゃあ、友也はテントなんだ」
(冷静に、冷静に、冷静に、)
頭では思っても、つい声が大きくなった。
「テントに誰と泊まったの!?」
友也は、右耳 を触りながら答えた。
「え……? 一人で」
「嘘よ! 嘘つき!」
「いや、ちょっと待って 」
「謝りもしないのね!」
「誤解だって」
「今日だって、一緒にいたんでしょ!!」
「はぁ? なに言ってんの? 怒るよ」
「怒る? 本当のことだから?」
「俺がどれだけ頑張ってるか」
「私だって、この家と友也のために、必死で……」
「俺もだよ。信用できないの?」
「できない!!」
沙耶は、肩を抱こうとする友也を突き離して、玄関から飛び出した。