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それから何もなかったかのようにみんなで過ごした。手紙は来ていない。視線はまだあるが。
「セリの近くにいるとすごい視線を感じる気がする」
「でしょ?」
朝のランニング。ヒロが零す。
「何なんだろうね」
「キモイな」
「ね」
みんなには言ってないが視線の種類が最近変わった。憎しみを含んだ視線だ。多分、みんなと仲良くしてるのが本当に嫌なんだろう。近々何かあるかもしれない。みんなのことは私が守らないと。
移動教室後。
クシャッ
「…」
久しぶりだ。紙が入っている。
「封筒?」
いつもの紙切れではなく封筒になっていた。なんだろう。手で切り開ける。
「いっ…!!」
封筒の入り口に刃がついていた。無下限を張っていなかったから思いっきり深く切ってしまった。失態だ。
「セリ?どうした?」
ゼロが私の声に反応した。
「な、なんでも」
「なくねえだろ!」
松田に見られた。みんなが集まってくる。
「おいおいおいおい!」
「セリちゃん手が!」
「か、紙で切っただけで」
「今更隠さないでよセリ」
「…ごめん」
「保健室行くぞ」
「うん」
松田に連れられる。
「これ、ただ事じゃないね」
「立派な傷害事件だ」
セリの血が溜まった床を見る4人。
「教官呼んでこよう」
医務室に着いた。先生はおらず、松田が手当してくれる。チャイムが鳴ってしまった。
「ごめん。迷惑かけて」
「そこはごめんじゃねーだろ」
「…ありがと」
「ん」
手に軟膏、ガーゼ、包帯をしっかりしてくれる。
「しっかし、深くスパッといったな」
「ねー。怪我なんて久しぶり」
任務じゃ怪我無しな私だ。ある意味、私に傷をつけれた犯人はすごい。無下限張るかあ。でも、不審がられるのはダメだな。
「はい、完了」
「ありがと」
「ん」
「ん?」
松田が手を広げる。
「何?」
「萩原の胸は借りられて、俺の胸は借りられねえの?」
「でも授業が」
「お前、気づいてねえのか?やつれてんぞ」
え、嘘。私が?やつれる?こんなことで?
「疲れてんだろ」
その言葉にどっときた。久々の暗殺めいたことに疲れていたのだろう。しかも相手は一般人。呪詛師だったら殺せるが一般人はそうもいかない。
「うん」
私は松田に抱きつく。
「気付かなかった。松田、ありがと」
「おう」
松田は抱きしめ返してくれる。
「…私ね。昔から人の視線には敏感なの」
疲れたからか、松田の暖かさか、口が滑る。
「悪意ある視線からは特に。小さい頃からだったから。だから慣れたと思ってた」
「んなもん慣れちゃ駄目だろ」
「そうかな」
「おう」
「でもね、慣れなきゃ生きていけなかったの」
「…」
「松田、ありがと」
私は松田を抱きしめる。
「…ん」
松田は私を抱きしめ返した。
ガラガラガラ
医務室の扉が開く。
「セリ、だいじょ、は?!」
「ヒロうるさいよー」
「そうだぜヒロの旦那」
「松田!セリに何してる!!」
「ゼロもうるさーい」
「松田でもそれは許せない」
「お前だってこの前やってたろーが」
「ははっ、五条モテモテだな」
「班長、それは語弊だよ。みんな仲間想いなの」
「「「「…」」」」
「お前ら、先が思いやられるな…」
「…で?なんで松田がセリを抱きしめてんだ?」
「暖かさをお裾分けしてもらってた」
「セリちゃん言い方可愛いね」
「こいつ、やつれてんの自分で気づいてなかったから休ませてた」
「別に松田の胸である必要ないじゃん。ほら、セリおいで」
ヒロが手を広げる。
「今は松田がいい…」
私はぐりぐりと松田の胸に頬擦りする。
「っ、」
「ははっ。陣平ちゃん顔真っ赤」
「っせ!萩!!」
「どんまい諸伏」
班長に慰められるヒロ。
「そう言えばみんな、授業は?」
「ああ、さっきのこと教官に伝えたら立派な傷害事件だからって警察が捜査ってことで授業は無しになったよ」
「教場のみんなに迷惑かけちゃった。後で謝らなきゃ」
「五条はなんも悪くねえよ」
「そうだよ。セリちゃんは被害者だ」
「…うん」
この後、今までのことを教官に話し、ストーカー事件として扱われることになった。