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私はシャルムに復帰して、以前いた店舗で働き始めた。お迎えまでの時間だけど、久しぶりの環境に最初は少し緊張や不安もあった。
でも、周りのスタッフやお客様のおかげで、すぐに慣れることができた。毎日、家で練習してた甲斐もあったと思う。
ずっと一緒だった輝くんは、今、シャルムの別の店舗に異動になって、スタイリストとして大活躍している。きっと、たくさんの指名を受けているんだろう。
実は、私の復帰を聞いて、1度だけ店が終わってから会いにきてくれた。アンナを出産した後すぐに、シャルムの仲間と一緒にお祝いに来てくれた以来、久しぶりの再会だった。店の近くでの立ち話だったけど、懐かしくて嬉しくなった。
「穂乃果さん、復帰おめでとうございます。良かったですね、また戻れて。アンナちゃん大きくなったでしょうね」
「ありがとう。うん、3歳になったの。毎日元気に保育園に通ってる。輝くんは? 違う店舗で頑張ってるんでしょ」
「はい。今いるところにもたまに悠人さんが顔出してくれて、声をかけてもらってます。悠人さん、毎日忙しくされてますよね。穂乃果さんは……寂しくないですか?」
「……うん、そうだね。確かに忙しくて、なかなかゆっくり話せない時もあるよ。でも、家族でいる時は、私達のことだけ考えて大事にしてくれてるから、寂しいなんて思ってないよ。仕事の合間に、アンナは元気か? とか聞いてきたりして、私が体調悪い時も、ずっと心配してくれたり。あんなに優しい人は……いないと思ってる」
その答えの後、ほんの少しだけ沈黙が流れた。
「……そうなんですね。それなら、良かったです。悠人さんは、スーパーマンですね。僕には……とてもできない」
微笑みながら、それでも、どこか寂しげな表情を浮かべる輝くん。
「みんな悠人みたいにはできない。だけど、輝くんは今もちゃんと輝いてるよ。私にはそう見える。輝くんには、輝くんの良さがあって、そのままの自分でいいんだよ。それに、結婚して家庭を持てば、必ず立派な旦那さん、パパになれるよ。私が保証するから」
「ありがとう……ございます。あれからずいぶん経つし、穂乃果さんには、最高に幸せな家族があるってわかってます。悠人さんがいて、そして、アンナちゃんがいる。アンナちゃんも、きっとめちゃくちゃ可愛いだろうし。本当に……穂乃果さんの幸せが嬉しいです。でも僕は……」
急に視線を落とす輝くん。
そして、すぐにまた私を見て言った。
「あれから、僕のことを好きだって言ってくれる人も何人かいました。でも、どんなに告白されても、どんなに誰かを好きになろうと努力しても、どんなにあなたを忘れようと頑張っても……僕の中からあなたは出ていってくれない。本当、自分でもどうしようもなくて」