切ない言葉が、私の胸を締め付けた。
「輝くんは、真面目で優し過ぎるんだよ。私みたいな女のことは、あんな女こっちから願い下げだって……さっさと切り捨ててくれればいいんだよ。自分に告白してくれた人や周りにいる人、その人達と私を、本当にちゃんと比べてみて。そしたら、輝くんが好きになれる人、必ずいると思う。私なんかじゃなく、ちゃんと……」
確かに、私のことを今でも好きでいてくれてすごく嬉しい。だけど、輝くんにとって、それでは何も生まれない。輝くんの人生がマイナスになってしまう。
「お願い……私っていう重たい壁を1回とっぱらってほしい。きっと大切なものが見えてくるはずだから。大事な輝くんの人生を、私で止めてるのは絶対もったいないよ……」
そうだよ……未来ある輝くんの大切な人生なんだもん、もっとキラキラしてなきゃおかしいよ。
「私は今、とっても幸せなの。悠人とアンナを絶対大事にしたいから……だから、輝くんのことは……やっぱりどうにもしてあげられない」
きついこと言ってごめんね。
「良かった……です。今日、ここに来て、最後までダメなやつでしたけど、でも、穂乃果さんにそうやって言ってもらえてスッキリしました。自分でもどうしたらいいのかわからなくて。ちゃんとケリをつけたかったのかも知れません、穂乃果さんを忘れられるように……。僕も、新しい人生を歩めるように頑張ります」
「輝くんなら大丈夫だよ。新しい人生、お互いに頑張っていこう」
輝くんは、小さくうなずいた。
「あなたを好きになって良かった。いっぱい楽しい思いもしたし、悩んだり辛かったりもしたけど、穂乃果さんを好きになれて、自分自身成長できたと思います。本当にありがとうございました。あっ、新しい彼女ができたら紹介しますね」
私は微笑みながら、うなずいた。
「楽しみにしてる。体には気をつけてね。スタイリストとして活躍してる輝くんを、陰ながら悠人と一緒に応援してる。お互い絶対トップスタイリストになろうね」
「はい、負けませんよ! 絶対に、悠人さんみたいな最高の美容師になります。穂乃果さんも、体には気をつけて下さいね」
「ありがとう……、輝くんも」
輝くんは手を振って、私から遠ざかっていった。ピンと背筋が伸びた後ろ姿が、とても頼もしく思えた。
将来、必ず立派な美容師になる、輝くんは――
本当に私も負けてられないな。
輝くんに出会えて、こちらこそいろいろ教えてもらえた。
本当に……ありがとう。
梨花さんも、今は新しい環境で頑張ってるって悠人から聞いている。
シャルムで一緒に頑張っていたメンバーが、新しい環境で、みんなそれぞれに活躍してて、それがすごく自分の励みになってるし嬉しかった。