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「 木洩れ日の奥で 」
もりょき
「 涼ちゃん……ごめん、ちょっと……気持ち悪い… 」
帰り道、元貴がふらりと足を止めた。
顔色がどんどん悪くなっていく。唇も乾いて、体が小刻みに震えていた。
「 ちょ、元貴、大丈夫!? 」
涼架が慌てて駆け寄り その背中を支える。
「 や、やだ……涼ちゃんの服……汚しちゃうから… 」
「 そんなの、気にしないで!立てる?無理しなくていいから 」
その瞬間、元貴の口からかすかに嗚咽が漏れ 体が崩れ落ちるようにしゃがみ込んだ。
「 あ、う……っ、ぅ……! 」
道端に膝をつき、何度も何度も吐いていた。
苦しそうに 喉を震わせながら、涙と唾液と、熱と痛みにまみれて。
「 元貴、……ごめん、ごめんね……もっと早く気づいてあげられなくて……! 」
涼架は震える手で元貴の背中をさすり続けた。
その手がどれだけ震えていようと、必死で。
「 っ……寒い…… 」
小さな声が漏れた瞬間、涼架は自分の上着を脱ぎ、元貴の肩にかけた。
「 もう少しで救急車来る……だから、頑張って、元貴……っ! 」
握っていた手が冷たくなっていた。
唇も、白く乾いていた。
けれど、それでも──
「 ……涼ちゃん……いる……? 」
「 ああ、いる。そばにいるよ、元貴 」
「 ……よかった…… 」
か細く微笑んで、元貴はゆっくりと目を閉じた。
病院のベッドの上。
点滴の針が刺さったままの腕は、細く 透けるように白かった。
「 なんで……こんなになるまで我慢してるんだよ……バカ… 」
涼架の目に涙が浮かぶ。
「 熱……39℃超えてたって……水もろくに飲んでなかったって……っ 」
「 ───涼ちゃん、泣いてるの……? 」
ふいに、小さな声がベッドから返ってくる。
「 うっ……!バカ、起きてんじゃねぇよ…… 」
「 ふふ……だって、涼ちゃんが泣いてたら、僕も泣きたくなっちゃうじゃん…… 」
「 じゃあ泣いてよ。今は、泣いていいときだよ 」
「 ……涼ちゃん、ずるい 」
「 元貴がずるいんだよ。僕に心配ばっかさせてさ……でも 」
涼架は、そっとその手を握る。
「 それでも、元貴が生きててよかった。ほんとによかった 」
小さくうなずいて、元貴は涼架の手を握り返した。
「 ……また、涼ちゃんの夜空……見たいな 」
「 俺が見せてやるよ。何回でも 」
ふたりの手の温度が、静かな夜の病室をあたためていた。_____
#6.「 祈るような夜 」
ひゃぁ……。どうなっていくんですかね悩
難しいです…