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足元には、くれぐれもご注意を
趣味を詰め込みました。
作者は医学、薬膳などの専門家ではないので、間違っているところ、おかしいところがあるとは思いますが、気にしないという方のみお進みください。批判は御遠慮ください。
前日まで、雨が降っていた。
「相当ぬかるんでやがんな…」
「おお…うっかり足でも滑らせたら大変な事になんな…」
素材の探索に来た千空とクロムは話しながら進む。
周りは崖だ。
死ぬような高さでないとはいえ、怪我くらいは覚悟しなければならないだろう。
打ち所が悪ければ骨くらいは折れるかもしれない。
それに、コケたりなどしたら泥だらけになってしまう。
それも避けたい。
衛生面にも気を使わなければならないのだ。
「ッ…!」
「千空!!」
そう話していた矢先に、足を滑らせた。
まずい、と思った瞬間、身体に強い衝撃が走った。
「…………っ、」
ぱちりと目を開ける。全身が痛い。
はて、なぜこんな事になっているのか。
考え始めて0.2秒で理解した。
そうだ。
足を滑らせて、崖から落ちたのだ。
全く、気を付けなければと考えていたそばから落ちるとは。
ゆっくりと身体を起こす。
……どうやら、細かいかすり傷や打撲で済んだようだ。
幸いな事にどこも折れてはいない。
「この花がクッションになったのか」
見た事のない花だ。
雨が降ったというのに、泥が付いていない。
周りにも見当たらない。一面の花畑だ。
しかも、花が生えている地面は石だ。
土がなくても育つのだろうか。
だが3700年も経っているのだから、新種の花があってもおかしくはないだろう。
「せんくーーっ!!!大丈夫かーーっ!!」
クロムの叫ぶ声が聞こえる。
「足滑らせただけだ!!心配すんな!!」
幸い崖は大して高くなかった上に、急でもない。
これなら手を借りずに自力で登れそうだ。
「オウ千空!大丈夫か!?怪我は!?」
「かすり傷だ」
千空に言われ、クロムが本当かと服を捲るが、間違いはなさそうだ。
「あの花に助けられたな」
千空はそう言って崖の下の花を指す。
「ほーん…?綺麗な花だなぁ」
クロムがしげしげと花を観察している。
本当はもっと近くで見たいのだが、今はとりあえず探索で獲た戦利品を持ち帰らねばならない。
「……っ」
「千空?」
村に帰る道中、僅かに眩暈がしたため立ち止まる。
「どうした?」
「…ちーっと眩暈がしただけだ」
その言葉通り、眩暈はもう収まっている。
「大丈夫なのか?」
「あ”あ」
寝不足だろうか。
最近睡眠時間を削りすぎたか。
いい加減にしっかりと眠らなければならないのかもしれない。
そんな事を考えていると、いつの間にか村に着いていた。
「あっ!おかえりなんだよー!!」
「おう!見ろよ、こんなに素材が手に入ったぜ!」
「これはまたゴイスーたくさん集めたねぇ」
「キラキラしたのがいっぱいなんだよ!!」
クロムが背負ったカゴを見せつけ、スイカが目を輝かせている。
次はどんな面白いものが見れるのか、楽しみで仕方がないといった顔だ。
千空はそれを見て笑みを浮かべると、素材の入ったカゴを持ち直した。
クロムが持っている分は、後で彼自身が持ってくるだろう。
「……ッ、…?」
科学倉庫に素材を置き、外に出ると一瞬、ドクンと鼓動が大きく乱れた。
胸に手を当てるが、乱れたのは一瞬でもう何ともない。
「おーい千空ーー!!」
クロムが大声で呼んでいる。
大きく手を振っているところを見ると、こっちへ来いという事か。
「おー、今行……ッ!!」
バクンッ!!と、先ほどの比ではない衝撃が走った。
「ーーーーッ、か、は……ッ!!」
胸元を皺が出来るほど握りしめ、地面に膝をつく。
ーーー苦しい。
心臓を鷲掴みにされたような感覚。
息が詰まる。
バクバクと鼓動が速くなっていく。
「ーーーぁ”……っぐ、」
「千空…!!?」
クロムたちが駆け寄ってきている。
「ーーーッ、ごふ…ッ!」
喉元まで、何かがせり上がってくる。
それを押し留める事が出来ず、そのまま吐き出した。
「……は……」
呆然と目を見開いた。
ビチャビチャと音を立てて吐き出されたソレは、鮮明な赤色をしていたのだ。
「千空!!!」
コハクの悲鳴のような声が聞こえる。
「ーーーっごふッ!ごほッ!!……っぐ、ぅえ……ッ!」
口から溢れる鮮血は、止まる気配がない。
「っ大丈夫、大丈夫だからな…!!」
クロムが必死に声をかけながら、身体を震わせて吐血し続ける千空の背をさする。
「ーーーっは……ッ、はーーッ…はーーッ……!…けほっ…!」
ようやく吐血が止まった頃には、千空の前に血溜まりが出来るほどになっていた。
これは、どう考えても異常だ。
病気にしても、この吐血の量は有り得ない。
「っせ、千空!!何か心当たりはないのか!?」
コハクが聞く。
病気にしても、他の要因にしても、千空本人にしか分からないのだ。
「……っ、花……」
「……花?」
ゲンが首を傾げる。
「…見たことねぇ、花が、はぁ…あってな」
苦しいのか、胸元を押さえたまま話す。
「…千空ちゃんでも知らない花?…新種かなぁ」
「どんな花だったのだ?ルリ姉なら何か知っているかもしれん」
コハクが言う。
村一番の博識なルリなら、新種の植物の事も誰かから聞いているかもしれない。
「ーーーっ、はーーっ……はっ……」
「っ綺麗な花だったぜ!近くで見たかったけど、崖の下にあったから見えなかったんだ。千空は足滑らせて落ちたから近くで見れたみたいだけどな…」
答えようとしたが、呼吸をするのに精一杯な様子の千空を見て、クロムが代わりに説明する。
「白い花で、たくさん咲いてたぜ。…千空、匂いとかはあったか?」
「………、」
こくりと頷く。
「どんな匂いだ?甘い匂いか?」
「………、」
今度は首を横に振る。
「っ柑橘、系、の……」
「かんきつ?」
「みかんとか、そういう香りの事だよ」
ゲンが説明する。
「ふむ…みかんの香りの花か…」
これは、かなり分かりやすい特徴だ。
「よし、私がルリ姉に聞いてこよう。千空は休んでいろ」
コハクはそう言うと、あっという間に見えなくなった。
「千空、ちょっと動かすぜ」
「ゆっくり行くからね」
「っ、あ”あ…」
クロムとゲンが両肩を支え、立ち上がらせる。
なるべく楽に休める場所がいい。
村の方には家の中だがストーブがある。
どれか一つを譲ってもらおう。
きっとどこかは空いているだろう。
「スイカが見てくるんだよ!」
今の千空は早く歩けない。
スイカが先に走って見に行った方が、わざわざ探す手間も省けるというものだ。
「はーー…はっ……っ…」
「千空、大丈夫か…?」
眉を寄せ、苦しげに呼吸をしながら進む千空。
少しずつ休憩を挟みながら歩いてはいるのだが、それでも辛そうだ。
「ーーーっげほッ!げほっゲホッ!!……っごふッ!!」
「千空!!」
がくりと千空の膝が折れ、蹲って大量の鮮血を吐き出す。
発作のように周期があるのだろうか。
先ほどの吐血からそんなに時間は経っていない。
このペースで吐き続けたら、吐血だけで失血死してしまうのではないか。
「はぁっ…はぁっ…!」
「…収まった…かな?」
ゲンが千空の顔を覗き込む。
身体全体を使って、必死に酸素を取り込もうとしているようだ。
だが千空の様子を見る限り、充分な酸素を取り込めていない。
呼吸はしているはずだが、真綿で首を絞められているように、息苦しさがずっと続いているのだ。
「酸欠とかにならないといいんだけど…」
酸欠は命を奪ってしまう危険があるだけでなく、脳に後遺症が残ってしまう可能性があるのだ。
「着いたぞ、千空!」
「寝かせた方がいい?それとも座っとく?」
ゲンが聞くと、すわる、と短く答えが返ってきた。
ゲンとクロムは千空を壁にもたれかからせた。
「っ千空!!」
コハクが家に駆け込んできた。
「花の正体が分かったぞ!!」
「!!何だったんだ!?」
クロムが聞く。千空も顔を上げた。
「見た目は美しい花だが、その実態は毒の花だそうだ。花粉を吸い込むと、身体に毒が回るらしい」
「あ”ー……やっぱり、そうか…」
身体の不調は、あの花の中に落ちてからだ。
それならば、毒があったのだろうと予想はつく。
「ど、毒…!?それって、ヤベーんじゃ…」
クロムが震える声で言う。
もし、命を奪うような毒なら、千空は死んでしまう。
「…いや、命を奪うような毒ではない」
「!よかった…」
「…それが、良くはないのだ」
安堵したのも束の間、コハクがそれを否定した。
「この毒を解毒できる薬がない。つまり、毒が完全に抜けるまで、耐えるほかないのだ」
「……この毒…何日くらいで抜けるの?」
「……少なくとも、5日はかかる」
絶望的な日数だ。
今でも、相当苦しいだろう。
充分に酸素が取り込めず、常に息苦しさを感じているのだから。
それなのに、5日?
想像したくもないような苦しみに、千空は5日も耐えなければならないのか。
「……っ、正確な日数が、はぁ…分かった、だけ…マシ、だ…」
「千空…」
考えてみれば、3700年間ずっと、真っ暗闇の中でいつ終わるとも知れない、いや、そもそも終わるのかも分からない、先の見えない状況で数を数え続けた精神力の持ち主だ。
それに比べれば、5日など大した日数ではない。
話し相手もいる。
真っ暗闇でもない。
だが、いくら環境が整っていても辛いものは辛い。
大体、あの量の吐血を5日も繰り返していたら毒が抜ける前に失血死する可能性もゼロではないのだ。
ルリの話によると、あの毒を吸ってしまった者は、苦しみに耐えかねて自ら命を断つか、失血死か。
そのどちらかで命を落としているという。
「……クロム…」
「!!なんだ、千空!?」
「……俺が、言う通りの、モン…作れっか?」
「オウ任せとけ!!何作ればいいんだ!?」
話すのは辛かろうと、ゲンが研究室から書くものを持ってきて千空に渡す。
「…………、」
「……解毒剤…?」
僅かに震える手を押さえながらロードマップを書き上げた。
「たしかに、少しは症状を和らげる事が出来るかもしれんな…!」
コハクが言う。
少しでも症状を抑えられるのなら、それに越したことはないだろう。
「分かった!すぐ作ってくるぜ!!」
幸い、材料は足りている。
作るのもそこまで手間ではない。
千空が毒に侵されてから4日が経った。
毒が抜けるまで、あと1日のはずだ。
クロムの作った解毒剤もきちんと効果を発揮し、吐血の回数も減っている。
まだ呼吸は辛そうだが、呑まないよりはマシなようだ。
「クロムが採ってきた素材をすべてぶちまけてな、真っ黒な姿になっていた事があったのだ…」
「コハク!!もうその話はいいだろ!!」
赤い顔で怒鳴るクロム。
「んな事いったら銀狼なんかただの鳥にビビって川に落ちただろ!!」
「しょうがないじゃん!!暗くて怖かった
んだからさ!!」
一周回って開き直る銀狼。
「この間、チョークとのお散歩中にきれいな石を見つけたんだよ!」
皆、千空の周りに集まって明るい話、楽しい話をしている。
スイカだけが唯一他人の失敗談ではない、ほのぼのエピソードだ。
「………、」
口元に僅かに笑みを浮かべてそれを聞く千空。
こうしてわいわいとしていた方が、気が紛れるのではないかというゲンの意見を採用し、皆でここに集まっているのだ。
だがもしその意見がなくとも、心配で放っておく事など出来なかったとは思うのだが。
「ーーーーッ、」
不意に、脈が乱れた。嫌な予感を感じた、次の瞬間。
「ーーーっがッ……ァ、」
「千空!?」
バクン、と一つ、心臓が大きく脈打った。
「ぁ”、かはッ…!!……っぐ、ゲホッ……げほッゴホッ!!」
最初に発作が起きた時よりも酷い。
心臓を鷲掴みにされるような、圧迫感のようなものだけではないのだ。
「あ”ぁあ…ッ!!」
絞り出すように苦痛の声を上げている。
「ぁ”、ぐ、…ーーーーーッ!!!」
「千空!!?オイ、どうした!!?」
とても座っていられず床に横倒しになり、声にならない声を上げてもがき苦しむ。
どう見ても異常だ。
ーー苦しい。痛い、痛い、痛い…!!
心臓を無数の針で突き刺されているような痛みすら覚える。
呼吸がままならない。
「ーーーーっひゅッ…!!ぁ、がふッげほッ!!ひゅッ…ごぼッ!!…ごふッ!!」
今までの比ではない、大量の鮮血を吐き出す。
しかもこれは、息が出来ていない。
息を吸おうとすると、喉の奥から鮮血が溢れて呼吸を遮ってしまうのだ。
「4日目なんだぞ…!?治ってくんじゃねーのかよ!!」
クロムが叫ぶ。
先ほどまで、解毒剤が効いて症状は緩和していたのだ。
まだ効果が切れる時間でもないのに、突然悪化するなんて。
「ひゅ、ッ……けほッ……っひゅ、」
「千空、千空…!!きちんと息をしろ…!!」
コハクが必死に声をかけるが、息が吸えていない。
「ーーーッ、ーーーっ…」
ふ…と千空の目が閉じられた。
酸欠か、毒のせいかは分からないが、気を失ってしまったのだ。
しかも恐ろしい事に、胸が上下していない。
「うっ…嘘だろ!!?おい、千空っ!!!」
クロムたちがパニックに陥る。
「どいて!!」
ゲンがクロムを押し退け、千空の鼻を押えてから口を合わせた。
人口呼吸だ。
いくらも効果などないかもしれない。
だが、少しでも助かる可能性があるのなら、賭けてみるべきだ。
「っ、頼む、千空…!!」
「死ぬな…!!」
祈るように手を握り合わせるクロムとコハク。
身体に酸素が行き渡らなくなると、約4分ほどで脳が使い物にならなくなる。
2分を過ぎたところで、救命率が下がり始める。
つまり、時間との勝負なのだ。
「ーーー、っ」
「!!」
何度か人口呼吸を繰り返していると、千空の手がピクリと動いた。
ゲンはすぐさま口を離す。
「ーーーっひゅッ!っは…ッ、げほっげほッ!!ひゅ、はっ…はッ…!!」
「そうそう上手だよ千空ちゃん…ゆっくり息して…うん、俺の呼吸に合わせて?すってー…はいてー……」
ゲンが千空の耳元でゆっくりと言い聞かせる。
徐々に、千空の呼吸が落ち着いていく。
「はっ……はぁっ…はぁっ…」
呼吸が落ち着くと、千空がぼんやりと目を開いた。
「千空ちゃん、大丈夫?俺が分かる?」
「……げ、ん……」
目の前で手を振られ、まだ朦朧とする意識の中で答える。
「…はー……はー……っ、な、にが、」
何があった、何が起こった。
何時もなら迅速に動き出すはずの脳が働いてくれない。
それほどの衝撃だったのだ。
「…峠です」
「ルリ姉…」
騒ぎを見た村人の誰かがルリを呼んだのだろう。
「峠さえ越えれば、後は毒が抜けるのを待つのみです」
「っ!じ、じゃあ!!」
「はい」
ルリはにっこりと微笑んで言った。
「危機は去りました」
「!!!」
パァァッ!と顔を輝かせるクロムたち。
「オウやったぜ千空!!あとは楽になるだけだってよ!!」
「……あ”あ…」
口角を上げて答える。
耐え切ったのだ。
生き残る者がいないとされていた毒に、打ち勝ったのだ。
「千空特性の解毒剤のおかげだな!」
「やっぱ科学はすげーな!!」
精神的にやられなかったのは、クロムたちがわいわいと盛り上げてくれたからなのだが、それは言わないでおこう。
第一、みんなの友情の力で、などと言うのは千空のキャラではない。
それに解毒剤はどちらかというと薬学の部類に入るのだが、クロムたちがそれを知るはずもない。
「千空!もう苦しくはないか!?」
5日目の朝一番にコハクが聞く。
「あ”あ…問題ねぇ」
昨日までの息苦しさが嘘のようだ。
どうやらコハクは千空の呼吸を聞き、苦しげな呼吸が聞こえなくなった瞬間に顔を覗き込んできたようだ。
息がきちんと吸える事にこれほど喜びを覚えたのは初めてかもしれない。
「立てるか?千空」
「?何言ってんだ……っ、」
いまいちコハクの言葉の意図が読めず、首を傾げて立ち上がろうとしたが足に力が入らず、ぐらりと体勢を崩した。
「やはり体力を相当消耗しているな」
倒れ込む前に受け止めたコハクが言う。
「…………、」
体力を消耗している事なら分かっていたが、まさか立ち上がれないほどとは。
「もうしばらくは寝ているといい」
寝かせた千空に布団をかける。
「あ”ー……そうさせてもらうわ」
そう言って目を閉じる。
さすがの千空でも、この状態で動こうとは思わないらしい。
「せんくー!!お昼ご飯なんだよ!!」
「おー、おありがてぇ……って、何だこれ…」
「”やくぜん”ってやつなんだよ!!栄養つけて、早く元気になってもらいたくてスイカが作ったんだよ!!」
何やらキラキラとしながら椀を差し出してくる。
だが、スイカは勘違いをしている。
薬膳とは、ただ薬草を煮詰めればいいというものではない。
「……………、」
スイカが期待に満ちた雰囲気で見つめてくる。
合理的を貫く千空でも、スイカの純粋な好意を無下にする事など出来なかった。
「……………っ、」
もしかしたら美味いかもしれない。
そう期待を込めて、薬膳もどきを口へ運んだ。
「ーーーーヴッ」
一瞬で血の気が引いていく。
反射的に口元を押さえる。
「?どうしたんだよ?」
スイカが首を傾げる。
「…………っ、や、薬膳は……薬草を煮詰めたモンじゃ、ねー……」
「えっ!?そうなの!?」
「身体に良くて体調に、合わせた…食材を、っ…組み合わせる、モンだ…」
「そっ…そうだったんだ……ごめんなさいなんだよ…」
「気にすんな…次は、作れるな?」
「!うん…!!」
時々詰まりながら説明すると、パァッと顔を輝かせるスイカ。
「…千空、水だ」
コハクが水を差し出す。
「あ”ー、コハク」
「ん?」
千空がいくつかコハクに伝える。
「…!!なるほど、分かった!すぐに持ってくる!」
コハクは笑みを浮かべると、すぐに走っていった。
「持ってきたぞ!」
「……野菜…なんだよ?」
スイカが首を傾げる。
コハクが持ってきたのは、野菜や肉などの食材だ。
「これを何やかんやする」
「何やかんや…」
千空はスイカの作った薬膳もどきに食材、調味料を加えていく。
ちなみに加熱はストーブの火を使った。
「おお…!」
「なんだか美味しそうなんだよ…!!」
真緑だった椀に彩りが加えられ、たしかに美味しそうに見える。
「…………、」
さて味はどうかと、料理を口へ運んだ。
「……………、」
その様子を固唾を呑んで見守るスイカとコハク。
千空は顔を上げると、ふっと笑みを浮かべた。
どうやら成功したらしい。
「美味しくなってよかったんだよ!!」
スイカは笑顔でそう言うが、すぐに表情が暗くなる。
「……お役に立てなかったんだよ…」
「スイカ…」
「んな事ねーよ」
コハクが言い淀むと、千空が否定した。
「ここに入ってる薬草は、体力回復に超絶役に立つモンだ。スイカ、お前がコレを摘んできたおかげで、俺はまたすぐに動けるようになんだよ」
「……!!本当なんだよ!?」
「あ”あ、本当だ」
この料理の問題点は味だけで、効果の方は全く問題がないのだ。
「……なるほど…この花粉が問題なだけで……花自体に毒はねーのか…」
千空は全快してすぐに毒の花の調査に出た。
何本か摘み、研究室に持ち帰って調べているのだ。
もちろんクロムも覗きにきている。
3700年経ったこの世界には、まだ誰も見たことのない新種の植物や生物がいるのかもしれない。
今回のように危険なものも、もしかしたらすごい薬になるものだってあるかもしれない。
「…唆るぜ…これは…!!」
千空は口元に笑みを浮かべて、そう言った。