テラーノベル
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「ねー、キラリンさ。 これなんて読むか分かる?」
「……”叢“、だったっけか」
「わーーー! そーだクサムラだ!! なんかゴワゴワしてるジャングルってイメージで憶えとこ! いやーやっぱキラリンしか勝たん‼️✨ ありがとう助かり〜🙏🏻💕」
「山月記か。 次のテスト範囲の予習か?」
「そうそう! なんか山月記ってフクザツな漢字ばっかでワケわかんなくない?」
「叢なんて、まず使わないし見ないから読めなくても仕方ない気もするけどな。 ……てか、どうしてオレに?」
「キラリン、休み時間によく本読んでるじゃん? だから日本語得意そう‼️ って思って」
読んでいた小説に親指を挟んで閉じる。
六道紫明布のインタラクトは、いつも唐突だ。
にしても……、やはりギャルの思考回路ってのはすごい。
ただ教室端で陰キャしているだけだというのに、そんな肯定的な捉え方をされているとは。
「ねー、りっちょんって何で虎になっちゃったの?」
「りっちょんって、まさかとは思うが李徴のことを言ってるのか……?」
「そそ! 変な名前すぎてニクネ付けちゃたよ」
「ニクネ……?」
ニックネーム、の略か……?
これがJK言葉ってやつなのか?
少し古めかしい雰囲気の略し方な気もする。
「あ、そそそ! 現国のね、これ、これこれ! この漢字、これどう読む‼️」
「……”度し難い”だな」
「あーー聞いたことあった‼️ これがあの、かの有名なドシガタイだったんだね。 う〜ん、さすがに”度し難い”じゃなかったかぁ……」
「そんな現代的な読み方であってたまるか。 日本に語学勉強しに来た海外人が漏れなく全員ギャル化しちまうだろうが」
「いやー、度は読めたんだよ度は! でも難いの方が分かんなくて。 だって言わなくない? 難いの方がよく使うじゃん? なんでわざわざ難しい言葉にしちゃうかなー、こーゆーの。 って文句言ってても成績良くなんないんだけどさー……、あれ、ヤバっ、度し難いってホントはなんて読むんだっけ😨 色々話してたら分かんなくなっちゃった……」
はーーーもうあたしばかすぎるかも、とオレの机に顔を埋める六道。
叢は分かるが……、度し難いは流石にわざとだろ。
っつーか、わざとだと信じたい。
日本の義務教育は敗北していないと確かめたい。
「あたしさー、大学生になったら一人暮らししたいんだよね。 そのために勉強していいとこ行かなきゃなの😕」
「一人暮らしのために進学?」
「うん。 ……あのね、あたしの実家さ、お寺なんだよね。 なんか色々お家のルール厳しかったりとかして、一人娘だから跡継ぎ問題がーとか小っちゃい頃から聞かされてて。 もーーそんなの嫌‼️ ってなっちゃってさ。 お父さんお母さんのことは好きなんだよ? でも……、早く一人暮らししたい〜〜って。 それがね、ずっと夢なんだ」
「家庭の事情ってわけか」
「そそ😌」
六道は、少し憂鬱な身の上話をする時ですらキラキラと快活だった。
寺生まれのギャル、か。
それなら彼女にまつわる色々に納得が出来る。
何度も折ったミニスカートに、ブラウスに付けられたキャラ物のピンバッジ、高校生には似つかわしくない目立った化粧と付爪。
厳しい家柄の反動と反抗、その集大成なのだろう。
「うううううううこの漢字も読めない……。 てか読めても絶対書けない! もーキャパいかも🥲」
「キャパ……?」
「はい、お願いあります🙋♀️ 今度勉強会やるからね、一緒に勉強してくれない? 今度の範囲まじヤバいから頭いー人に教えてもらいたいの、お願い‼️」
「国語に必要なのは頭いいかどうかってより、ただの憶えゲーな気がするけどな……。 オレも転入したばっかでテストの問題傾向とか分かんないから教えて貰いたいし、オレで良ければ」
「ホント!? キラリンありがとマジ神すぎる🥰」
「……そのキラリンってのが、オレのニクネ?」
「うん、良くない? キラリーン✨」
「お、おう……?」
ジョン・ドゥのようにヒーロー、なんて呼び方をされているくらいだし、まだ原型があるキラリンの方が良い気もするが……、ヒーローと同レベルの恥ずかしさは感じる。
出来ればシンプルな呼び名に変更頂きたい所存である。
「あれ、あんま気に入んなかった?☹️」
「別になんて呼ばれてもいいんだが、出来れば普通に呼んでもらった方が個人的には……」
「じゃー、キラ? それか、キラキラ?」
「どうして兎に角光らせたがるんだよ。 キラだけでいいよ、キラで!」
「じゃーキラね!! あたしのコトもシンプルめでいいよ‼️」
「おう、六道紫明布さんだったよな。 じゃあ……、シャンプー?」
「ふぁっ」
シャンプーが急に、赤くなって静止してしまった。
まずい、なにか地雷でも踏んじまったか……?
シャンプーって名前は親に付けられたキラキラネームすぎて嫌がってたりとか……、そういう背景があったのかもしれねえ。
「悪い、今のはナシで……、」
「そそそそそそそっ、そうだよね。 シンプルってなったら呼び捨てだよね、うん……。 あたしが下の名前で先に呼んだし、そりゃ当然っていうか、いや不意打ち食らっちゃっただけで別に何も起きてないってかいつの間にかめっちゃ顔近かったしヤバ顔熱って何想像して自爆してんのあたしもぅううぅうぅ……」
「しゃ、シャンプー……、さん?」
うう〜、と独り言を続けた後、気合いを入れる儀式みたいに自らの頬をぺたっ!と両手で叩き、目も合わせず吹っ切れたような言い方で、
「はいっ、シャンプーですっ! よろしくね、キラ‼️」
「あ、あぁ……、よろしく……?」
と、今にでも握手を求めにいきそうな勢いのご挨拶を挟み、休み時間を終えたのだった。
全く、ギャルとは本当に分からない生き物である。
コメント
1件
いやっ、もうこの回めっちゃ良かった!!😭💕 キラ(キラリン)とシャンプーの掛け合いがテンポ良すぎてニヤニヤ止まらんかったわ…! 「叢」は読めるのに「度し難い」を「どしムズい」って言い換えるシャンプー、マジで天才か??🤣 あと「シャンプー」呼びで赤面するところ、完全に恋の予感やん…!! でも一人暮らしのために進学したいって本音パートで一気にキャラ深まったし、ギャルの皮被った真面目さにキュンとしたよ…😌💖 次回の勉強会がもう待ちきれん!!
井野匠
3,209
#異能力
ここと🌹🫶 @低浮
2,834
#異能力バトル
名無の男2
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