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悪魔ブレイカー

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悪魔ブレイカー

1 - Prologue

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2024年07月28日

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 どいつもこいつも、シケたツラしやがる。 俺の道の前は自然と開かれる。いつものことだ。

「わっ! やめてください!!」


「あ……?」


 声のする方へ目を向けると、眼鏡を掛けた貧弱そうな奴が、数名の男たちに絡まれていた。

 正義感もクソもねぇ。


 だが……


「俺の目の前で、腐ったことすんじゃねぇ!!」


 気に食わねぇもんは、全部ぶっ壊す。


 ヤンチャしてそうな相貌だが、弱い奴を揶揄う程度のことしかしてこなかった連中だ。

 想像通り、喧嘩慣れはしていない様子で、数発殴ったら捨て台詞も無しに睨みながら去って行った。


「はっ、雑魚が」


「あ、あの……」


 眼鏡は、ブルブルと震えながら立ち上がる。

 別に善意で助けたわけじゃない。

 俺が無視して去ろうとすると、震えながらに、俺の袖を掴んで止めた。


「これ、落としましたよ……」


 眼鏡の震えた手には、俺が喧嘩中に落としたであろうバッジが握られていた。


「お、おう……すまねぇな……」


 そっと受け取り、再び去ろうとするが。


「そのバッジ……。君も、幽玄ゆうげん高校” なんだね! 僕もこの春から新一年生なんだ!」


 その言葉に、俺は振り返る。

 俺の落としたバッジは、この春から新しく入学する幽玄高校の証のバッジだった。

 そして、その色から、同い年だと判断したらしい。


 でも、


「てめぇ、俺は善意でお前を助けたわけじゃねぇ。同じ学校だからって、話し掛けてくんじゃねぇぞ」


 その後も、何かゴチャゴチャ言っているようだったが、俺は知らぬ顔をしてその場を後にした。


 



「やあ、待ってたよ。君が、鬼塚侑オニヅカ ユウ” くん、だね?」


 門の前で水やりをしていた爽やかな好青年の姿に、俺は少しドキリと身構える。


「さあ、入ってよ! ご馳走も用意してあるんだ!」


 何故ならここは……。


「ようこそ! 芦屋組あしやぐみ へ!」


 指定暴力団、芦屋組の本家お屋敷だからだ。


 俺は、青年に案内されながら、屋敷内へと上がる。

 そして、いきなりご馳走の並ぶ部屋に通された。


「あの……頭にご挨拶とかは……?」


「あぁ……。ウチはそういう堅苦しいのはないんだよ。もう少ししたら、人も集まるはずだ。あ、自己紹介がまだだったね! 俺は若頭補佐北上結弦キタガミ ユヅルだ!」


 この見るからに好青年で、暴力団なんかとまるで縁もないような男が……若頭補佐なのか……?


 戸惑いながらも、俺は小さく「うす……」と返した。


 その内、段々と柄の悪い連中がやんや賑わいながら入って来ては、皆明るく俺と握手してから席に着いた。

 食事中も、口喧嘩が始まったり、腕相撲大会や、酒の飲み比べで、騒がしい歓迎会を催された。

 しかし、その場には、頭の姿も若頭の姿もなかった。


「はぁ……。疲れるな……」


 慣れない人の賑わいに、トイレと脱げ出し外に出る。


「ここは……星が綺麗だな……」


「そうだろ?」


「え……?」


 空を覗いていると、遠くから声が聞こえる。

 白髪に、小柄な少年だった。

 学生鞄を持って、恐らくは塾か何かの下校中に思われるその少年は、俺を見るなりニコッと微笑んだ。


「こんばんは」


「あ、こ、こんばんは……」


 ふと見ただけじゃ分からなかったが、声を交わしてみて俺は感じ取れてしまった。

 その瞬間、屋敷の中からバタバタと物音が鳴り響き、宴真っ只中だった連中がこぞって外に出てきた。

「お帰りなさい!! ”若頭” !!」


 そして、軍隊のように声を合わせ、揃って頭を下げる。


「そういうの、いいって……。近所迷惑だし……」


 見た目とのギャップにも驚かされたが……コイツ……。


「それに、今日の主役は彼……侑くん、でしょ?」


 そうしてまた、ニコリと俺を見て微笑んだ。


 コイツ……俺と同じ、“紅い眼” をしている……!


 それが俺、鬼塚侑と、指定暴力団 芦屋組の出会いだった。

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