※今回は、寧々ちゃん視点での話になります。
今日は、えむが考えた特別なショーをする。
それは、えむにとって大切な先輩の為だけのショー。
何で私の為のショーじゃないんだろうとか考えてしまう。
どうして、「寧々ちゃんの為だけのショー」じゃなくて「朝比奈先輩の為だけのショー」なんだろうって。
そんな事を考えていると、えむがやってきた。
「寧々ちゃん、今日はよろしくね!」
「うん。 こういう題材のショーは、初めてだから
緊張する。」
「大丈夫だよ! 私も類くんも司くんもついてるから!」
えむは、いつもこうやって不安になりがちな私に
大丈夫と言ってくれる。
今日は、えむだって不安なはずなのに心配を
かけてどうするんだ。
今日のショーは、えむが脚本と演出を考えた
えむが主役のショー。
えむは、「私は、朝比奈先輩に本当の自分を見つけてほしい。 そして、朝比奈先輩が本当の自分を見つけるお手伝いを私はしたい。
だから、今回はこんなショーを作りたい!」
と言った。
簡単にあらすじを説明すると、主な登場人物は
主役の騎士とヒロインのお姫様。
そのお姫様は、本当の自分が分からないままずっと
生きてきて、自分の部屋に引きこもっていた。
でも、騎士が突然ある日お姫様を外に連れ出した。
そこから、騎士とお姫様の本当の自分を探す為の
旅が始まる、という感じだ。
騎士役はえむ、お姫様役は私、ナレーションが
司、裏方が類。
ステージのスポットライトがつき、私に降り注ぐ。
そして、司のナレーションが入る。
「とある国にとても可愛らしいお姫様が居ました。
しかし、そのお姫様は本当の自分が何か分からず
自分の部屋に引きこもっていました。」
「私は、何故自分が分からないのでしょう。
本当の自分を見つけたい。でも、どうすれば、、、」
コンコン
「姫、いらっしゃいますか?
姫とお話がしたくて、やって参りました。
お部屋に入れて頂けないでしょうか。」
「ええ、どうぞ。 入って下さい。」
「ありがとうございます。 失礼します。」
「私とお話がしたいと言っていたけれど、
なにをお話ししましょうか。」
「姫、何かお困りの事が有りませんか?」
「何故、私が困っていると思われたの?」
「すいません、お気に触られたのなら謝ります。
ですが、姫はずっとお部屋に引きこもっていられます。何かありましたか?私で良ければ、お話聞きますよ?」
「誰にも、言わないでくれますか。」
「もちろんです。お約束します。」
「実は私、本当の自分が分からないの。何をしたいのか、何が欲しいのか、何が嬉しいのか、悲しいのか。
私は、本当の、ありのままの自分を見つけたい。
でも、どうすればいいのか分からないの。
ごめんなさい、急にこんな話をしてしまって。」
「いえ、構いませんよ。姫、私で良ければお手伝いさせて下さい。私も姫に本当の自分を見つけて頂きたいのです。」
「良いのですか? でも、どうやって見つければ。」
「外に出ましょう。外の世界は、危険な事もありますが楽しい事も沢山あります。外の世界を見れば姫が
本当の自分を見つけられるかも知れません。」
「外、ですか。お父様が許してくださるかどうか。」
「王には、既にお話ししてあります。許可も頂きました。だから、大丈夫ですよ。」
「そうなのですか。なら、お願いします。
私の本当の自分を探すお手伝いをして頂けませんか。」
「もちろんです、姫。」
そして、物語は進み、お姫様は本当の自分を見つけた。
「何故、貴方は私を手伝ってくれたの?」
「何故、ですか。 姫、こちらを向いて下さい。」
「ええ。」
「私は、ずっと姫に恋をしていました。
私は、騎士という身。 中々、姫にお会いできませんでした。でも、王から姫の事を頼まれ、これは良い機会だと思いました。姫とお近づきになれればと。
姫が、外に出る様になれば隣国の王子とご結婚される事を私は分かっていました。
だからこれは、姫との最後の思い出作りだと思って
姫のお手伝いをする事に決めたのです。」
「そうだったのね。でも、驚いたわ。
貴方も私と同じ気持ちだったなんて。」
「え?同じ気持ちですか?」
「ええ。私も貴方に恋をしていた。
私は、さっき貴方が言っていた通り隣国の王子と結婚する事が決まっている。
だからこれは、貴方との最後の思い出作りにしようと思った。」
「姫。」
「何?」
「私は、これからも貴女と一緒に、貴女の隣に居たい。王が、国民が許してくれるかどうか分かりません。もちろん、隣国の王子も。誰も許してくれなくてかったとしたら、私は貴女を連れて遠くに行きます。
この命をかけて、貴女をお守りします。
だから、私とお付き合いして頂けますか。」
「ええ、喜んで。もし、遠くに行くことになっても、
そうじゃなかったとしてもまた私と旅をしてね。」
「もちろん。姫が行きたい所にお連れしますよ。」
「そうして、国に戻った騎士とお姫様の二人は
王、国民、隣国の王子達の許しを得ました。
二人は結婚し、沢山旅をし、幸せに暮らしましたとさ。」
「寧々ちゃーん! お疲れ様ー!」
「お疲れ様、えむ。」
「二人とも、お疲れ様。」
「類、何で「二人」なんだ! 俺だってナレーションをしただろう!」
「いや、司は台本を見ながら言ってただけじゃん。
それも、少しだけだし。」
「確かにそうかも知れないが、俺は座長だぞ!」
「今は、座長とか関係ないでしょ。
それに今回1番頑張ったのは、えむじゃん。」
「二人とも喧嘩しちゃダメだよ!」
「えむの言う通りだな。言い争っても良い事はない。
改めて、えむ、寧々。お疲れ様。」
「お疲れ様。えむ、そういえば朝比奈さんの所
行かなくて良いの?」
「あ、そろそろ朝比奈先輩帰る時間だ!
ありがとう、寧々ちゃん!」
「はいはい、どういたしまして。」
「それでは、僕たちは片付けてこようか。
寧々は、疲れただろうから休んでると良い。」
「そうだな。寧々は休んでおけ。」
「ありがとう。」
「朝比奈センパーイッ!」
「鳳さん。」
「どうでしたか? 私達のショーは。」
「とても凄かったね。思わず見入っちゃったよ。」
「それなら良かったです!
今回の脚本と演出、私が全部考えたんですよ。
朝比奈先輩に本当の自分を見つけてほしいなって
思ったから、ヒロインのお姫様は、朝比奈先輩をモデルにしたんです!」
「そうだったんだ。鳳さん、凄いね。
もしかしてって思ったけど、モデルにしてもらえた何て嬉しいな。ありがとう、鳳さん。」
ギュッ
「朝比奈先輩⁉︎」
朝比奈さんとえむがハグしてる?
何でどうして、貴女なの?
えむと先に出会ったのは私なのに。
もし、私が宮女に通っていたら、同じクラスだったら
私が毎日お弁当を一緒に食べて、沢山の時間を
過ごしていたはずなのに。
えむは、まだ気づいていないけどえむは朝比奈さんの事が好きで、朝比奈さんはえむの事が好き。
いわゆる両思い。
遅かれ早かれ二人とも自分の気持ちに気付く。
私の入る隙間なんて無い。
どう転んだって私の気持ちがえむに届く事はない。
私がえむと結ばれる未来は、、、無い。
だから、諦めようと思っていたのに。
私、えむの事が好き。
だから
「やっぱり諦めきれない」
コメント
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三角錐の関係(≧∇≦)b
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