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シャワーを浴び終えてリビングに戻ると、テーブルの上には、カツカレーが用意されていた。


「僕の好きなもの……。健吾さん、ありがとうございます」


用意されたテーブルの前に、嬉々として正座したら、憂いを湛えたまなざしが自分を射竦める。


「喜んでるところ悪いが、はじめてカツを作ったからな。美味しいかどうかは、正直なところわからないぞ」


向かい側であぐらをかいた恋人を見つめつつ、満足げに頬を緩ませた。


「健吾さんの作るものは、全部美味しいですよ。いただきます!」


カツと一緒にカレーをスプーンですくって、はぐっと食べる。サクサクの衣とカレールーのスパイシーな感じが、絶妙にマッチしていた。口の中でそれぞれの美味しさが、ここぞとばかりに弾ける。


「……どうだ?」

「ふっごくおいひいですっ!」


口の中のものを完全に咀嚼していないのは、かなりはしたないことだと理解していても、感想を告げずにはいられなかった。


「そうか、良かった……」


安堵のため息を深くついてから、同じようにカレーに手をつける恋人の姿を、口を動かしながらじっと眺めた。


(同じ食器を使って、同じ物を食べているはずなのに、健吾さんの食べ方はいつも上品で見惚れてしまうな。僕との違いは、どこにあるんだろう?)


「敦士どうした。俺のことをそんなに見つめて」

「へっ!? あっ、そのぅ」

「俺を食べたいのはわかるが、今はテーブルの上にある、カツカレーに集中してくれ」


さらりとすごいことを言われたせいで、顔じゅうが一瞬で熱くなってしまう。


「違っ、そんなんじゃないですって」

「だったら、食べたくないのか?」

「やっ、あとから必ず食べますけど……」

「ということは敦士にとって俺自身は、食後のデザートになるのか?」


くすくす笑う口達者な恋人に、どうにも反論ができず、赤ら顔をそのままに、カツカレーを食べることになった。

歪んだ関係~夢で逢えたら~

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