テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「心配しないでください……」
三日月が諭すように言う。
「彼は、あなたのためにも、必ず目覚めるはずですから……」
「うん…」と、三日月に答えた。「つまらないことを言って、ごめんなさい……」
「いいえ…理沙。彼のそばに付いているあなたが本当に辛いことは、私たちもわかっていますから……」
「三日月…私…」
止めていたはずの涙が、目尻から溢れ出る。
「ええ、大丈夫ですから……だから、泣きたければ泣きたいだけ……泣いて構わないので」
三日月の服にしがみつくと、彼が腕をまわし、震える背中を固く抱いてくれた……。
……4日目の夜になり、流星がふらりと病室に入ってきた。
「……来てくれたんだ」
「ああ…」とだけ、短く流星が応える。
「……あの女は、捕まえて、警察につき出しといたから……」
「えっ…あの女って……」
「ああ…そいつを刺した女だ…」
と、流星が銀河の方をあごでしゃくる。
「見つかったの…?」
「見つけた……見つけて警察へ連れていったら、あっさりと逮捕されることになった……」
「逮捕…されるんだ…あの人…」
「ああ…本当は、俺が制裁を加えてもやりたかったが……、三日月の言ってたこともわかったしな……」
流星は口惜しそうにも話して、
「……だから、あとは警察に任せた」
と、私に告げた。
「うん…」頷いて、見るともなく銀河の方を見やると、流星も同じように彼に目を落としていた。
普段はきつくも見える目を細めて、流星が慈しむような眼差しをする。
「まだ、起きないのか…こいつは…」
「うん…もう4日もたつのに…」
彼の額にかかる髪を、流星が指でそっと掻き上げる。
「起きろよ…早く。おまえがいねぇと、つまんねぇだろ…」
流星の目から流れた涙が、銀河の頬の上にぽたりと落ちた。
その涙を隠すように背を向けて、
「じゃあな…俺は、もう帰るから…」
何気ない様子で軽く手を振ると、流星は病室を出ていった──。
コメント
1件
優しいね😭