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――長期任務四日目/氷原夜営地・深夜
吹雪は止み、空は静かだった。
夜営は簡易配置。
小型テントが二基――
焚き火は既に落とされ、
見張りは交代制。
今は――
カ「見張りは任せた」
ド「了解した」
隊長は短く告げ、
自分のテントへ入る。
数十分後。
氷原は無音。
博士は見張り位置に立ちながら、
端末を操作していた。
ド「外気温マイナス三十八」
ド「テント内でも低体温域だな」
視線を隊長のテントへ向ける。
ド「長期観察対象を単独低温環境に置くのは非効率だ」
数秒。
ド「……合理的判断だ」
そう呟き――
見張りを放棄して歩き出した。
テント内
隊長は横になっていた。
完全装備ではないが、
鎧の一部は外したまま。
だが眠れないのか、目を開けている
布が揺れる音。
カ「……誰だ」
仮面越しでも分かる警戒。
ド「私だ」
博士が当然のように入ってくる。
カ「見張りはどうした」
ド「外周センサーを設置した」
ド「人力より精度が高い」
隊長は起き上がる。
カ「規律違反だ」
ド「合理的改善だ」
狭いテント。
博士は当然のように座る。
ド「温度が低すぎる」
外套を外しながら続ける。
ド「単独就寝は体温低下を加速させる」
カ「問題ない」
ド「数値上は問題ある」
隊長の隣を軽く叩く。
ド「詰めろ」
沈黙。
カ「自分のテントへ戻れ」
ド「拒否する」
淡々と。
ド「観察対象の体温維持は研究責任だ」
そのまま外套を広げ、
半ば強引に肩へかける。
カ「……やめろ」
ド「保温だ」
距離が近い。
横並び。
肩が触れる。
ド「脈拍上昇」
耳元で低く。
ド「やはり私が近い時だけ変動する」
カ「測定をやめろ」
ド「観察だ」
そのまま、
外套の中へ腕を通す。
焚き火時と同じ配置。
だが今回は――横臥距離。
体温がより伝わる。
カ「……過剰だ」
ド「低温環境だ」
少し間。
ド「それとも」
顔を寄せる。
ド「この距離が問題か?」
仮面同士が少し触れる。
呼気がわずかに当たる。
カ「……任務中だ」
博士は笑う。
ド「便利な言葉だな」
だが距離は離さない。
ド「安心したまえ」
ド「今夜も観察だけだ」
低く続ける。
ド「壊す気はない」
静寂。
外は無音。
やがて。
カ「……見張りはどうする」
ド「センサーがある」
カ「完全ではない」
博士は少し考え――
ド「ならこうしよう」
隊長の腕を取り、
自分の外套内で固定する。
ド「異常があれば私が起きる」
ド「君は休め」
カ「逆だ」
ド「効率の問題だ」
低く囁く。
ド「観察対象を疲労させたくない」
沈黙。
やがて隊長は抵抗をやめた。
カ「……短時間だけだ」
博士の声がわずかに低く笑う。
ド「十分だ」
数分。
静かな呼吸だけが続く。
ド「……やはり逃げないな」
小さく呟く。
ド「焚き火でも」
ド「医療区画でも」
ド「そしてこの距離でも」
顔をわずかに寄せる。
ド「興味深い」
だが触れない。
その直前で止まる。
ド「観察は長期的に行うべきだ」
囁きだけ残し、
距離は保ったまま。
夜は静かに過ぎていった。
夜明け前。
博士は先に起き、外へ戻る。
去り際、小さく。
ド「体温維持率、良好」
テントを閉じる。
数秒後。
隊長は目を開いた。
カ「……狂人め 。」
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