『例え悪霊になろうとも_。』
うりさんが死んだ。
交通事故だった。
先日、夜道を一人で歩いていた所、飲酒運転の車にはねられたらしい。
交通人が発見した時には、もう手遅れな状態だったらしく、体のあらゆる部分が欠損していたんだそう。
今日はうりさんのお葬式の日。
女子組は口を抑えて声を押し殺して泣いている。
ゆあんくんとヒロくん、どぬちゃんはあまりにも急なメンバーの死に、現実を受け入れられないでいるようだ。
じゃぱさんとたっつんさんは、じゃぱさんがずっと泣き止まないので、たっつんさんが心配そうにじゃぱさんの背中をさすっている。
もふくんとシヴァさんは、棺桶の中の死体とは思えない程の綺麗な顔のうりさんを見て、うりさんとの日々を思い返しているのか、互いに慰め合いながら泣いている。
僕も当然悲しい。
僕とうりさんは付き合っていた。リスナーさんには言っていないが。
うりさんの死を聞いた時は頭がどうにかなりそうだった。
皆でうりさんに最後のお別れをして、葬式場を出た。
葬式の数週間後
大学の時仲が良かった友達と、心霊スポットに行く事になった。
あんな事があったので、死に関わる所へは行きたくなかったが、友達が強引な人で、無理やり連れていかれる事になった。
後日
「よっしゃ~着いたぜ心スポ!!」
「何でそんなテンション高いんですか…」
「そんな事より聞いてくれよ、ここの心スポ、悪霊が出るらしいぜ…!?」
「へぇ…霊が…」
「それに、その霊が出始めたのがほんの数週間前なんだってよ!」
「数週…ん?」
「しかもその幽霊に見つかると、車の事故に合って死ぬんだとよ…!」
「車…ですか」
数週間前から出始めたと言う事や、見つかれば車の事故で死ぬ、という情報から、うりさんとの関係性を連想してしまう。
まぁ、偶然だとは思うが。
「なんだよ乗り気じゃねぇなぁ!まさかビビってんのか!?」
「ビビるわけないでしょ!さぁ早く行きましょう」
「ちょ、置いてくなって~!!」
この心霊スポットは、トンネルとかいういかにも幽霊が出ますよ、って感じの所ではなく、ただの道。
街灯がぽつん、ぽつんと続くだけのこの道は、たまに車が通り過ぎる位でそれ以外は何にもない静かな場所。
「それでさ~!!」
友達は何かずっと楽しげに話しているが、僕はずっとうりさんの事を考えていて、内容を全然聞いてない。
ぴたり。
友達が突然止まる。
「どうしたんですか?」
声をかけると、
「い、居る…!」
「え?」
友達が指さす方を見ても、僕には何も見えない。
「何もいませんけど…」
「いや居るって!兎に角走って逃げよう!!」
「えっ、待っ…」
腕を引かれて、僕は友達と一緒に全力で逃げた。
僕には何も見えなかったが、あの反応からして、本当に居たのだろう。
「はぁ…はぁっ、」
「もう…急に走りすぎですよ…」
「ごめんって!てか今日はもう帰ろうぜ、なんか嫌な予感するし」
「そうですね」
友達と別れて、一人で車を運転して帰る。久しぶりに運転するな~、なんて思ったり、うりさん連れてお出かけ行ったりもしたな~、とか思い出に浸っていると、
ガゴッ、
「えっ、」
何かを轢いた。感じがした。
人か動物かと思って、急いで車を止めて外に出る。
「…あれ」
車の下を見ると、何もいない。
石や突起物すらない。
「勘違いかな…」
そう思って、また車に乗り込む。
ふと、サイドミラーに目をやる。
「…っ、!?」
車の後部座席に、誰かが乗っていた。
茶色い髪の毛に、右耳にいくつかのピアス、黒い服を纏った男の人?が居る。ただし、顔は死体に被せる布?で隠されているから全く見えない。
「う…うりさん…?」
あの日、あの時。
棺桶の中に居たうりさんと似ている。
まさかあの心霊スポットの幽霊というのは…
ピコンッ
通知が来た。
それを合図にあの人は居なくなっていた。
あまりに急な出来事に理解が追いつかないが、とりあえずスマホを手に取る。
さっきの友達とはまた別の友達からメールが来ている。
『どうしたんですか?こんな夜中に』
『いやそれが…○○が車の事故で意識不明の重体だって…』
「…え?」
○○とは、さっきまで一緒にいた友達の名前。
「嘘、だろ…」
流石に動揺を隠せない。
ニュースを見ると、まさにその事故のことがとりあげられている。
友達は、あの人を見てしまったから…
そんな考えが頭をよぎる。
でも、僕も今さっき見てしまったではないか。
これ、相当まずいのでは、?
今の僕に出来る事は何も無いので、兎に角細心の注意を心がけて帰ることにした。
家まであと数百メートル。
ゆっくり、最後まで細心の注意を払って…
何とか家にたどり着けた。
いや、そもそもあんなの所詮人間の作り話。信じる方がおかしい。
けれど、だとしたら友達は…?
「まぁ…たまたまだろうけど…」
自分の中で勝手に結論付け、玄関のドアノブに手を伸ばす。
〝な…き…さん〟
「え、?」
真後ろから声がして、思わず振り返った。
あの人だ。
さっき僕の車の後部座席に乗ってた、あの人だ…。
ここまで追いかけて来たというのか。
でも僕は死ぬほどホラー好きなので、こんくらい少しビビりはするが、めっちゃ怖いという訳では無い。
「あの…何の用ですか」
あえて強気で話しかける。
すると
〝会…来…〟
なんて言っているか聞き取れない。
〝会い…来…〟
少しずつ、なんて言ってるか分かるようになってきた。
〝会いに来た〟
この人は、僕に会いに来たらしい。
何が目的?そもそも誰?人?幽霊?
疑問が数え切れないほどある。
でもまともに話せる状態ではなさそうなので、必要最低限の事だけ聞く。
「…うりさんですか?」
違かったら凄く失礼な質問かもしれないが、兎に角僕はそれが気になって仕方なかった。
〝…〟
何にも喋らない。
布で顔が隠れていなければ、誰なのか確認する事が出来るのに。
「顔、見せてもらっても良いですか?」
大胆な行動に出る。
だって顔が見れない事には、声もかすれていて誰なのか分からない。
〝…〟
喋らない。
けれど、少し頷いた気がした。
近づいて、恐る恐る布をめくる。
「…うりさん」
生前と同じ、整っていてかっこいい綺麗な顔。
でも目には輝きがなく、肌は透き通るほど白く、真顔。もはやうりさんと呼べるものでは無いのかもしれないと思った。
でも、それでも。
僕はうりさんに会えたのが凄く嬉しかった。
もう死んでいたとしても。
幽霊だとしても。
「あれ…」
僕はいつの間にか泣いていた。
その涙を、うりさんが細い手で拭ってくれた。
僕は思わず抱きしめたくなった。
その時。
キキーッ!!
車が僕たちの方に突進してきた。
next▸︎▹︎▸︎▹︎♡500
コメント
2件
🌷🎸きたああああ!! 1番好きだから最高😭💕 こういう感じ大好き🥺💗💗 ♡500しました!!続き楽しみ…✨