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「天国と地獄」
一人の男が自殺を図った。
世をはかなんでの行動だった。
_今、生きているこの世の中に、自分の居場所はない。自分がいなくなっても、誰も気にしないだろう。
どんより曇った空の下で、そう思ったのだ。
気がつくと、男は広い空間に立っていた。
男の前には、杖を持った白髪の老人が立っていた。
この老人は神様なのだろう。
男は直感的にそう思い、神様に聞いた。
「ここはどこなのですか?天国なのですか?地獄なのですか?」
神様は、穏やかな口調で言った。
『どちらでもない。お前は生前、他人に悪いことをしたわけではない。しかし、自分の命を自分で奪うと言う大きな罪を下した。お前をどちらに送ろうか迷っている。
まずはお前に天国と地獄の様子をそれぞれ見せることにしよう。まぁ、天国だろうがなあ笑、では、行こうか』
杖をついて歩き出した神様に、男はついて行くことにした。
男が最初に連れて行かれたのは、神様が「地獄」と説明した場所だった。
地獄に着くと、男は予想外の光景に驚いた。
目の前にはなんとも牧歌的な風景が広がっていたのだ。
穏やかな陽射し、緑の木々と草原、美しい花々。
男が想像していた、針山地獄や血の池地獄があるようなおどろおどろしい場所とは大違いだった。
「ここは、天国では無いのですか?」
男はいぶかしく思った。だが、次の瞬間
「なるほど、ここは確かに地獄なんだ。」
と、男は納得した。
何故なら、異様な人々の群れを目撃したからだ。
彼らは、針金のように痩せていて、獣の様に目を血走らせながら、草原を徘徊していた。
誰もが粗野で凶暴なため、あちらこちらで醜い戦争争いが繰り広げられていた。
まさに地獄の風景。
突然、「がラーン、ガラーン!」
と鐘の音が鳴り響いた。
それを聞いた亡者達は、ぴたりと戦争争いを辞め、口からダラダラと唾液を垂らしながら、一斉に天を見上げた。
「あの鐘の音はなんですか?」
『あれは、食事の時間を告げる鐘なのだ。』
天からは無数の天使が舞い降りてきた。
そして天使達は、亡者たちの片方の手首に、スプーンをくくりつけた。
それはとても奇妙なスプーンで、柄の長さがメートルほどある。
大きな耳かきのような形をしていた。
さらにもう一方の手首には、やはり柄の長さがメートルほどある大きなフォークを括りつけた。
地獄にはあちらこちらに大鍋が並べられた。
その鍋を囲むように10脚ほどの椅子が並べられた。亡者達はそのイスに潜り着けられた。
そうなると、両手は動かせるが、その場から動くことは出来ない状態だ。
天使が、大鍋に出来たてのスープを注いだ。
肉の塊も沢山浮かんでいる。
なんとも美味そうな湯気の香りが飢えた亡者たちの食欲を一気にかき立てたようだ。
亡者たちは、目の前の大鍋に手を伸ばして、スプーンの先にスープを注ぎ、フォークの先に肉を突き刺した。
だが、それを口に入れようとしても、スプーンやフォークが腕より長いので、食べ物を運ぶことが出来ない。
「目の前に食べ物があるというのに食べられない、こんな拷問誰が考えたんだ…。神はなんという罰を与えるのだ。。」
全ての亡者達が、涙と唾液を流しながらうめくような悲鳴を上げている。
苛立ちが募り、獰猛になったある亡き者が、腹いせに鍋の向かい側にいる亡き者をスプーンやフォークで叩き始めた。
まるで、それが合図だったかのように。
地獄の亡き者達が、一斉に叩き合いを始めた。
あっというまに、誰もが血だらけになった。
神様が、おもむろに口を開いた。
『食事の度に、毎回同じことが繰り返されているのだ。』
「これが地獄なのですね、よくわかりました。」
『では次は天国を見せてやろう。』
天国に着くと、そこには穏やかな陽射し、緑の木々と草原、美しい花々。
「神様、先程と全く同じな景色に見えますが…」
『いや、大違いだ。彼らの行動をよく見るのだ。』
男は草原を散策する天国の住民達の様子を眺めていると、誰もが健康的な体をしていて、みんなとワイワイ語り合っている。
たまには、大きな笑い声も聞こえてくる
そして、食事の時間を知らせるあの鐘の音が鳴り響いた。
それを聞いた天国の住民達は、微笑みながら一斉に天を見上げた。
天から無数の天使が舞い降りてきた。天使達は同じ様に住民たちの両手の手首に、あの奇妙なスプーンとフォークをくくにつけられた。
大鍋の周りに10個ほどの椅子が並べられ、住民たちもまた、地獄と同じようにその椅子に括り付けられた。全てが地獄とおなじことの繰り返しである。
だが、不思議なことに誰もがそんな状況に不満を持たないのか、なんとも幸せそうな顔をしている。
男は神様に質問した。
「天国も地獄も、案件は全く同じですよね。
それなのに、どうして天国の住民はあんなに惨めなのでしょう。一体どうしてなのですか?」
『それはとても簡単な事だ。もう少し様子を見ていきなさい。』
神様は微笑みながら言った。
やがて、天使ができたてのスープを運んできて、大鍋に注ぎ込んだ。
天国の住民たちがスプーンやフォークを鍋に入れる。
そのあとの光景に、男は驚いだ。
天国達の住民たちの食事の仕方は、長いスプーンを使って向かいにいる人にスープを飲ませ、長いフォークを使って肉を食べさせていた。
それが交代交代に、それはそれは美味しそうに食事を楽しんでいるのだ。
『ここにいる者たちは、互いに食べさせ合うことを自ら学んだのだよ。ただ、それだけの違いなんだ。天国にこの者達が住み始めたのではない。ここに居るもの達は楽しむことを学んだから、ここが天国になったのだ。』
男はそこに住む人間の心の有り様によって、そこが地獄にもなり、天国にもなるのだと知った。
『さあて、天国と地獄の両方を見たところで、お前はどっちに行きたい?聞くまでもないと思うが。』
男は何かを考え、意を決した表情で言った
「自分勝手なお願いですが、天国でも地獄でもなく、僕を元の世界に戻して頂けないでしょうか。元の世界で、僕は周囲に関心も愛情も持っていなかったことの裏返しだったのと今気づきました。もぅ1度、あの世界で生きてみたいのです。」
神は優しく微笑んだ。
「お前がその選択をしてくれてよかった。
お前はまだ死んではいない。今の世界に居ただけだ。さあ、戻るが良い。」
「気がつくと、男の目の前には見慣れた街の景色が広がっていた。ただ少し、その風景は輝いて見えた。」
ここまで見てくれてありがとうございました。
皆さん、人生は楽しめていますか?
1度きりの人生なんですから、自分の選んだ自分で人生を変えていくんですよ。
では。