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恋ごと抱きしめて

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恋ごと抱きしめて

9 - 第9話 初めての屋上

2026年02月04日

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次の日の昼休み。


屋上の扉を開けると、陸がぱっと顔を明るくした。


「お!来た来た!ありがと!」


紗良が小声でつぶやく。


「男子とお弁当食べるの、ちょっと緊張するかも」


「たしかに緊張するね……」


泉が返すと、その横で優がそっと立ち上がり、離れた場所へ歩き出した。


陸がすぐに声をかける。


「優、どこ行くんだよ」


「離れたところで食おうと思って。女苦手だし」


ぶっきらぼうな声。


でも、昨日より少しだけ柔らかい。


泉はその背中を見て、ふっと息を吸い、優の方へ歩み寄った。


優が驚いたように振り返る。


「……なんだよ」


泉はまっすぐに言った。


「“女”って呼ぶの、やめてください。私は茅野泉。

彼女は住田紗良です」


その真っ直ぐさに、優は一瞬だけ言葉を失った。


「……っ」


圧倒されたように目をそらし、小さくつぶやく。


「……わかったよ。一緒に食べりゃいいんだろ」


陸がにやっと笑う。


「やるねぇ……泉」


その名前を呼ばれた瞬間、泉の胸がドキッと跳ねた。


瞬も感心したように言う。


「優を手懐けるとは。すごいな」


「手懐けるってなんだよ。犬みたいな言い方すんなよ」


優がむくれると、泉は思わず笑ってしまった。


「フフッ」


陸が嬉しそうに言う。


「やっと笑ったね」


「え?」


「やっと笑ってくれた。まあ、優のおかげだけど」


「俺は何もしてねえよ」


そんなやり取りの横で、紗良が瞬に話しかける。


「……っていうか、春谷くんって昼ごはんの時も勉強してるの?」


瞬はペンを回しながら答える。


「勉強しないと落ち着かない症候群みたいな感じなんだよね」


紗良がむっとする。


「なんか、見せつけみたいでムカつくなあ」


「は?なんだよ。別にいいでしょ、俺の自由なんだから」


「はいはい。いいですよー、どうぞご自由に」


この二人は美術部で一緒なため、言い合いながらもどこか楽しそうだった。


――なんだろう。

この五人で過ごす昼休み、悪くないかも。

泉はそう思った。

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