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次の日の昼休み。
屋上の扉を開けると、陸がぱっと顔を明るくした。
「お!来た来た!ありがと!」
紗良が小声でつぶやく。
「男子とお弁当食べるの、ちょっと緊張するかも」
「たしかに緊張するね……」
泉が返すと、その横で優がそっと立ち上がり、離れた場所へ歩き出した。
陸がすぐに声をかける。
「優、どこ行くんだよ」
「離れたところで食おうと思って。女苦手だし」
ぶっきらぼうな声。
でも、昨日より少しだけ柔らかい。
泉はその背中を見て、ふっと息を吸い、優の方へ歩み寄った。
優が驚いたように振り返る。
「……なんだよ」
泉はまっすぐに言った。
「“女”って呼ぶの、やめてください。私は茅野泉。
彼女は住田紗良です」
その真っ直ぐさに、優は一瞬だけ言葉を失った。
「……っ」
圧倒されたように目をそらし、小さくつぶやく。
「……わかったよ。一緒に食べりゃいいんだろ」
陸がにやっと笑う。
「やるねぇ……泉」
その名前を呼ばれた瞬間、泉の胸がドキッと跳ねた。
瞬も感心したように言う。
「優を手懐けるとは。すごいな」
「手懐けるってなんだよ。犬みたいな言い方すんなよ」
優がむくれると、泉は思わず笑ってしまった。
「フフッ」
陸が嬉しそうに言う。
「やっと笑ったね」
「え?」
「やっと笑ってくれた。まあ、優のおかげだけど」
「俺は何もしてねえよ」
そんなやり取りの横で、紗良が瞬に話しかける。
「……っていうか、春谷くんって昼ごはんの時も勉強してるの?」
瞬はペンを回しながら答える。
「勉強しないと落ち着かない症候群みたいな感じなんだよね」
紗良がむっとする。
「なんか、見せつけみたいでムカつくなあ」
「は?なんだよ。別にいいでしょ、俺の自由なんだから」
「はいはい。いいですよー、どうぞご自由に」
この二人は美術部で一緒なため、言い合いながらもどこか楽しそうだった。
――なんだろう。
この五人で過ごす昼休み、悪くないかも。
泉はそう思った。