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そんな中、紗良がふと思い出したように泉へ向き直る。
「そういえば泉、部活どうするの?」
「あ、ほんとだ……忘れてた。どうしようかな」
紗良はぱっと笑顔になる。
「よかったら美術部入んない?人手足んないんだよねえ」
「美術かあ……私、絵下手なんだよね」
「ぜんっぜん大丈夫!ほら、この人なんて絵下手だけど美術部なんだから!」
紗良は瞬を指さす。
瞬はむっとした顔で言い返す。
「なんだよ、別にいいでしょ。ってか紗良、今制作してるやつちゃんとしてよ」
「今それ関係ないでしょ!」
言い合いながらも、どこか楽しそうな二人。
美術部で一緒だからこその距離感だった。
泉はその様子を見て、思わず笑う。
「ふふっ……仲いいんだね」
「仲良くない!」
「仲良くない!」
二人が同時に否定し、陸と優が吹き出した。
そのタイミングで、陸が泉の方へ向き直る。
「泉、部活まだ決めてないならさ……陸上部、見に来ない?」
優がちらっと陸を見る。
「……お前、また急だな」
陸は気にせず続ける。
「俺と優、陸上部なんだよ。でさ、マネージャーが三年の先輩一人しかいなくてさ。部員は多いのに、完全に回らなくなってるんだよね」
「その先輩、一人で全部抱えてて……正直、かなり大変そうなんだ」
陸が泉の目をまっすぐ見つめる。
「だからさ、泉。もしよかったら……マネージャーやってみない?」
泉は少し戸惑いながら、優の方を見る。
「……西川くん、私、陸上部入ってもいい?」
優は一瞬だけ固まった。
「なんで俺に聞くんだよ……」
そっぽを向いたまま、でもはっきりと。
「……別にいいと思うけど」
その言い方はぶっきらぼうなのに、どこか優しかった。
陸が嬉しそうに笑う。
「よし、決まり!」
転校してきて三日目。
まだ慣れないはずの学校で、こんなふうに誘ってくれる人たちがいるなんて――
泉の胸の奥がじんわり温かくなる。
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