お前だけは 、決して渡してやらぬ
ずっと 、私から離れぬまま 。
色恋に目覚めぬまま 。
ずっと私の手の中に収めておきたい
「なぁ、本当に知らねぇか?」
五年生で朝食を食べている時 、
五年は組の食満留三郎が話をしだした 。
「知らないって言ってんだろうが」
「穴掘り小僧っつっても 、
ただ穴掘ってる生徒だろ??」
「それのどこが迷惑なんだぁ??」
文次郎 、小平太がそう問えば
留三郎は勢いよく話し出した
「ちげーんだよ!!」
「そいつが掘ってんのは落とし穴で!
毎回伊作やら保健委員やらが落ちるんだよ!」
「それに 、毎回用具委員会で埋めるんだよ!」
「なんだ 、不運委員会なんだから当たり前だろう」
「仙蔵までそっちかよ!!」
「昨日だって 、竹谷が落ちたっつって….」
「竹谷が落ちたのか!!」
意気揚々と小平太が聞き返し 、そうだと言えば
思いっきり笑い出して 、すくっと立ち上がる
「よーし!俺!穴掘り小僧を探してみる!!」
「本当かッ!!」
「僕も 、顔ぐらいは見てみたいなぁ」
「….確かにまぁ 、どんなガキかは見てェな」
「……もそもそ」
「….ま 、まぁ、、探してはみよう 。」
これは困った 、何か策をたてねば 。
そう思い 、米をかきこみ
食器を返却しに行った 。
「なんだ仙蔵 、急ぎの用か」
そう文次郎に聞かれれば
偽物の用事を作って言った
『あ、あぁ…作法委員会について少しな』
「お 、それは順調か?作法委員会委員長」
「いやー委員会を作っちまうとはなぁ」
「仙蔵は火薬委員会委員長だと思ってたぞ!」
「ま 、頑張ってね?」
「…..応援してる」
『あぁ 、ありがとう』
『行ってくる』
そう言って 、食堂を出れば
向かう場所はひとつ
裏山に入ったすぐ横にある
大きな苔むした岩んある雑木林
『…..喜八郎』
「立花せんぱい」
穴からひょこっと顔を出せば 、
お得意の踏鋤の踏み子で穴から出てきては
テクテクとこちらへ寄ってきた
その泥だらけの顔を 、
自身の手ぬぐいで優しく擦ってやれば
決まってお前は目を瞑る
その長い睫毛を見つめながら
瞼にひとつキスを零せば
お前はやっと目を開ける
『朝食はとったのか?』
「あ 、もうそんな時間ですか」
『全く 、仕方がないな』
ほれ 、と先程食堂のおばちゃんに持たされた
小さなおにぎりを三つ四つ手渡した
「やっぱり食堂のおばちゃんの作る
おにぎりは美味しいですねぇ」
なんてほころぶ喜八郎の頬についた
米粒を取って食えば 、おやまぁと
気の抜けた声が聞こえる
こんな幸せな日常をあやつらになんか
絶対見つかってはならぬ 、そう決めていた
喜八郎を好きなのは 、私だけで十分
喜八郎が懐いているのも 、私だけがいい
そう願っていたのに___________
あれからさほど時間が経っていない日のこと
その日は 、お休みで家に帰るものがほとんどで
家に残っているのは 、私達六年と
お前達くらいだった 。
「おーーい!!滝夜叉丸!!」
六年長屋の縁側で私と伊作はお茶をしていて
他の奴らは鍛錬やら手合わせやらをしている時
小平太が 、遠くの廊下を歩く
ふたつの影に声をかけた 。
待て待て 、あの平の横にいるのは____
そう思った矢先 、それは起こった
「七松先輩 、お早うございます 。」
「….」
「おい喜八郎ッ…挨拶をしないか!」
平が喜八郎の手を引きながら 、
こちらへやってきてしまった
「….こんにちはぁ」
その喜八郎の声に 、皆が驚いていた
「おまえ男か?!女か!?」
そう小平太が聞けば 、喜八郎は顔を歪ませながら
男ですけどっと高圧的に答えた
そんな姿に平は焦りながら 、謝れと叱っていた
「なんで謝らなきゃいけないの」
「そんなのより穴掘りに行かしてほしいんだけど」
喜八郎がそう言って口を尖らせれば
あ “ ーー!!と留三郎が叫び出した 。
「お前が穴掘り小僧だな!!!」
「…おやまぁ 、そうみたいですね?」
「この野郎っ……..ッ!!!」
普段の留三郎なら 、
拳骨くらい食らわせていただろうが
喜八郎のこの顔を見てしまえば無理もない
「おいおい 、何照れてんだキモイぞ留」
そう文次郎が言えば 、それに切れた留三郎は
再び喜八郎を見下ろした
「そのッ…お前の穴に落ちてるヤツもいてだなッ」
「埋めるのだって 、俺なんだぞォッ!!」
語尾が裏返ってなんとも気持ち悪かったが
それを聞いた喜八郎はひときしり留三郎を
見つめたあと 、やっと口を開く
「いつも穴を埋めるのは貴方だったんですね」
口を膨らましながら言う喜八郎を見て
耐えきれなくなりバタンっと留三郎は倒れた
「ちょっと留三郎っ!?」
「….君 、留三郎に何したのさ〜!!!」
そう言って喜八郎の肩をゆさぶれば
喜八郎はめんどくさそうに答えた
「….何もしてないです 、
勝手に倒れただけじゃないですか」
そう言い放てば 、伊作は黙り込んだ
それを追い討ちかけるように 、
喜八郎はまた話した
「それにしても 、貴方は
いつもいつも落ちてくれますけど 、」
「そんなに僕の穴が気に入りました?」
そうニヤリと笑う喜八郎に負けて
伊作はそうですよ!!と顔を真っ赤にして
しゃがみこんでしまった
( それは違うだろ 、、)
とつっこみたい所を心の中にしまった 。
ふたりも再起不能にした喜八郎は 、
六年生の顔をぐるりと見て 、私に焦点を合わせた
「あ 、立花せんぱい」
そう言って 、私の目の前に現れて瞼を閉じた
まさか 、とは言わないよな??
小声で喜八郎に問えば 、えぇ?と
あからさまな疑問を飛ばした 。
致し方無し 、と言ったところで
また同じようにキスをした 。
「 「 えぇぇええあぁぁああ!?!」 」
その場に居た全員が 、私達の行動に声を成した
伊作と留三郎はいつ起きたんだか、、
なんて思えば 、喜八郎が耳を抑え始めたため
そっと腕に収めてやった
そうすれば 、文次郎がははーん?という顔をした
「仙蔵 、お前今までずっと隠してたな」
『…….なんの事だかさっぱりだな』
「…..先日から様子がおかしいのも
私達が喜八郎に興味を持ったから」
『なっ….長次….!!』
「何だよ仙蔵!!今までずっと隠してたなんて!」
「水臭いなぁ 、仙蔵は」
「なんでそんな隠したがるんだよ?」
そう留三郎が聞いてきた途端 、
大事に大事に保ってきた細い絹糸がプツンと
呆気なく切れた 。
『お前らまで喜八郎を好きにさせない為に
決まってるだろうがッ!!!!』
肩を上下に揺らしながらそういえば 、
皆がまた驚いた顔をした
「お前ッ…仙蔵も喜八郎が好きなのか!?」
『何を言う馬鹿文次 、
既にお前だって惚れてるくせに』
「お前なんかに負けてたまるか文次郎!!」
「僕も 、燃えてきちゃった 。」
「いい勝負になりそうだなー!!」
「……喜八郎」
「??中在家 、せんぱーい?」
私達が争っていれば 、長次が喜八郎を呼び
自身の元へ寄らせた 。
「….やる」
「!!!」
「ぼーろっ 、先輩だいすきですーー」
そう言って喜八郎が長次に抱きついた
「あぁ!?ちょーじも喜八郎も狡いぞ!!」
「餌付け良くないだろ!!」
「狡いよ〜!!!」
「べべっ別に羨ましくはねぇけど!!」
『抱擁ごときに何を言ってるんだ』
「 「お前は黙れ!」 」
はぁ 、嫉妬が醜いな 。と奴らに向かっていえば
もっと逆上しだし 、それを見越した平が
喜八郎を連れ去っていった 。
『はっ 、今までずっと手元で可愛がっていた私と
今日 、今さっき知り合ったお前たち』
『喜八郎はどっちを取るだろうな?』
そう言ってまた挑発をすれば
珍しく怒り狂うヤツらと勝負をして
それはそれは楽しい休みとなった 。
それから私達は六年生へと成り上がり
喜八郎も 、穴掘り小僧から天才トラパーへと
どんどん成長していった
バレてしまった以上 、もう隠すのを辞めた
喜八郎を隠すのも 、喜八郎への思いも全て
全部さらけ出した
「おおぉい喜八郎ーーー!!!!」
「また掘りやがって貴様ァーー!!!」
「落ちる人が悪いでーす」
「これ以上留さんを怒らせないで喜八郎〜!」
「ってどわぁぁぁあ!?」
「よし喜八郎!!一緒に鍛錬へ行くぞー!」
「では竹谷先輩も」
「ちょっと俺は用事があってだな….あはは、、」
「七松せんぱーい 、竹谷先輩も行くそうです」
「お!!まぁ2人っきりで行くのはまた今度だ!」
「竹谷も行くぞ!」
「くっそ 、覚えとけよ喜八郎ーー!!」
「喜八郎」
「わっ 、今日はけえきですか」
「うむ 、嫌いか?」
「だいすきですよっ」
「よかった….笑」
「文次郎せんぱい」
「…………………………却下だ」
『何故だ文次郎』
「仙蔵…お前ってやつは、、、」
「いくら俺の心情を見透かしてるからと言って
喜八郎を使って予算を交渉してくるな!!」
『なんだ 、つれないな』
「つれませんねぇ」
「お前らなァ!」
なんて楽しい日常の中でも 、
時折見せる喜八郎を巡る戦いは
私達六年生だけがやってるわけじゃないらしく
同い年の四年生だって 、一個上の五年生も
はたまたその下の下級生だって
みんなが喜八郎を狙っているとの話も聞いた
まぁ 、そんな無駄な戦いを見るのが楽しいものだ
『喜八郎』
「!」
「立花せんぱい」
『おいで』
「…..今日は甘えたですね?」
『お前は私のものだという
自覚が薄れてきてると思ってな』
「おやまぁ 、そんなことはないのですが」
『喜八郎 、好きだぞ』
「はぁい 、せんぱい」
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もう人生に悔いはありません( ´ཫ`)
うわああ💕 もう大好きですぅ( ´›ω‹`)💕 本当にありがとうございます(≧∇≦)