両親の説得より事業計画・返済計画の時間が掛かったのは訳がある。
単純に、親に必要とされたのがこの二つだけでは無かったためだ。
最終的に要求されたのが、
1.事業計画
2.返済計画
3.冒険者事業並びに関連組織の説明
4.経営理念(探索方針)
5.使用する探索用装備・備品リスト
並びに性能情報
6.遺言書
である。
1.事業計画は一回の探索の収入見込み額から経費を引いて、一回の探索をどの位の期間で行い、年間で幾らの収益が見込めるかを一ヶ月単位で纏めたものになる。
試算してみたところ、初心者の内は収益最大見込み・経費最小に抑えて利益がトントン、何かアクシデントがあればすぐに赤字に転落しそうだった。
2.返済計画は事業計画を元に年利1%で高校卒業までに返済する見込み内容で、作らされた。
利子に関しては少なすぎると思ったが、父さんがこれは練習だと言っていた。
今回の件が無くても借金自体は、お前もいつかするだろうから、と計画を立てる練習にちょうど良かったそうだ。
初期から完了まで返済額を尻上りに上げていく様に見積もって見た。父さんには許可をもらえたが、
実社会では認められない返済計画だと言われた。父さんが見本で作成した計画だと最初から最後まで同額の返済となり
初期の資本となるお金が如何に大事なものか痛感させられた。
3.冒険者事業並びに関連組織の説明だが、これは俺が調べた事を両親に説明し、
そこから両親が疑問に思ったことを再度調査、説明すると言う形になった。
冒険者事業は複数かつ国際的な組織もあるので、説明完了まで何週間か掛かってしまったが、
その甲斐あって、少なくとも日本の冒険者事業の在り方は相当に理解できたと思う。
4.経営理念(探索方針)は自分の冒険者としてのスタンスの表明だ。
何を目的とし、どのような手段で、何を行っていくか。
……正直に彼女が欲しいと言えなかった自分は、やはり親不孝者なんだろうなぁ……
5.使用する探索用装備・備品リスト並びに性能情報は基本的にはネットの情報を元に資料を作ってみたが、
実はコレが一番難航した。
最初に作ったのは二日で出来た。ネットにあった初心者用オススメセットのテンプレに自分なりに考察した備品を追加してみた物を両親に見せてみたのだが、
二人がリストの中から絶対に必要と思われる物だけ抜き出してみて実際に購入・準備して、それらを俺が装備して一時間ウォーキングしてみたところ……
何ということでしょう。最初は少し重かったぐらいの防具・リュックが匠の技で、全身の体力をくまなく奪い、さらに一時間後には足を棒に変えてしまったのです。
”必要最低限と思われる”装備でこの様である。このままダンジョンに突入したら初日で赤字確定となるところだった。
結局ジョギングによる基礎体力作りと更なる装備・備品の選別で最後まで準備に時間が掛かってしまったのであった……
6.遺言に関しては、冒険者の登録時に必要とされるものでもあるが、やはり、心に重いものがあった。
登録時の提出分、両親分の二通用意して父さんに渡した。
正直に言うと、この時点で冒険者にならない事も考えた。
だが、ここまで準備をした事と、ならなかった場合の自分の未来予想を思い起こして、覚悟を固めなおした。
冒険者になる決意から四ヶ月。
冒険は未だ始まらない。
ひのきのぼうと五十G(おそらく五万円相当)の準備金で旅立てたDoQuokano勇者はマジ勇者だと思う。
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