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アニメ全話見てない時に書いてた敦芥。設定が違うところがあるかもしれませんw
ヨコハマを包む雨は、すべてを灰色に塗り潰していく。 任務の帰り道、敦は高架下で足を止めた。数メートル先、漆黒の外套を纏った男が壁に背を預けて立っていたからだ。
「……芥川」
「貴様か。人虎」
芥川の視線は冷ややかだが、殺気はない。ただ、その肩がわずかに震え、重苦しい咳が静かな雨音に混じった。
「風邪? 珍しいこともあるもんだね。……ほら、これ」
敦が差し出したのは、先ほどコンビニで買ったばかりの温かいほうじ茶のペットボトルだ。芥川はそれを忌々しげに睨みつけたが、敦が強引に手に押し付けると、観念したように指先で受け取った。
「憐れみのつもりか。不快だ」
「いいから。君に倒れられたら、次の共同任務で僕が困るんだよ。太宰さんにだって怒られるし」
「……太宰さん」
その名が出た瞬間、芥川の瞳にわずかな光が宿る。彼はボトルを開け、一口だけ口に含んだ。熱が喉を通り、強張っていた彼の体からわずかに力が抜ける。
「人虎。貴様は相変わらず理解に苦しむ。何故そうも、敵対する者に無防備でいられる」
「敵対……まあ、そうなんだけど。でも、君と僕はもう『ただの敵』じゃないだろ」
敦は雨のカーテンを見つめながら、少しだけ笑った。 かつて命を削り合って戦った。今は背中を預けて戦うこともある。そのどちらでもあって、どちらでもない不思議な空白が、今の二人にはあった。
「……六月までだ」
芥川がぽつりと呟いた。太宰と交わした「半年間、人を殺さない」という約束。
「それまでは、貴様の首を胴体に繋ぎ止めておいてやる。だが、その先はないと思え」
「わかってるよ。僕だって、君に負けるつもりはないから」
雨足が少しだけ弱まった。 芥川は手元のペットボトルをコートのポケットにねじ込むと、踵を返して暗闇の中へと歩き出す。
「人虎。次は、戦場で会おう」
「……お大事に、くらい言えないのかな」
敦は去りゆく黒い背中を見送った。 混じり合うことのない白と黒。けれど、雨に濡れたアスファルトの上では、二人の足跡が同じ泥に塗れて、どこまでも続いていた。