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蝶舞(かれん)@常にスランプ
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絶句したまま固まっているレイブの顔を覗きこんだアスタロトは言葉を続ける。
『あれか? やっぱりちゃんと止血した方が良かったのか? 高熱で焼こうかとも思ったんだけどな、そっちの方が良かったかな? レイブ?』
延命処置としてはマシかもしれない、が、決して良くは無い、あくまでもマシはマシ、そのレベルの比較的肯定に過ぎない、言葉は正確に!
レイブは顔面を蒼白に変えながら言葉を搾り出したが、その色味の理由は失血の為だけではなかったのではなかろうか?
「アスタさん、回復とかは出来ないんですか? 焼くとか麻痺とかじゃなくて根本的に治す方向で」
『あー、我は出来ないんだよなーそっち系、配下の青い奴等とかは得意なんだけどなー、まだ戻っていないみたいだしなー』
「え、俺って絶望? えー」
『慌てるなよレイブ、さっきお前自身が言っていただろうが! 願いが叶うんだろ? やってみろってぇ』
突然降り掛かった、と言うか不意に気が付いた左腕の消失と決して少なくない出血。
やはり動揺していたのだろう、俺とした事が…… そんな表情を浮かべたレイブは徐に例のヤツ、お願いを始める。
「えーおほん、行きます! 『死なないで(バイマイセルフ)』っと…… どうかな?」
暫くの間、二人はレイブの左腕、正確には元左腕が存在していた辺りに注目するのであった。
傷が塞がったり出血が止まる気配は無いし、勿論失われた腕が再生する、そんな劇的な変化は見られない。
アスタロトが呟きを漏らす。
『効いてないみたいだな』
「おかしいなー、あれかな? 岩窟から離れ過ぎているからかな? どれどれ、よいしょっと」
首を傾げて言いながら腰を上げようとするレイブにアスタロトがやや慌てた声を掛ける。
『おいおいレイブ、お前何する気なんだよ!』
レイブは訝しそうな表情で答える。
「何って岩窟に戻って『死なないで(フォースタイム)』をやり直してみるんですよ、このままじゃ死んじゃうんですから当然でしょ?」
『ばっ、お前! あそこに戻ったりしたら我が吸収されちゃうじゃないか!』
「あーそうなるかー、吸収される直前に完治、とか結構際どい感じかー、どう思います?」
『お前…… それじゃあ、吸収される直前にお前が治ったとしても我が消えるのには間に合わないじゃん…… 物凄い事言うなお前……』
「うーん、行き詰っちゃいましたねー、どうしよ」
言いながらレイブは、背に腹は変えられん、すまん神様、的な覚悟を決めつつ猛ダッシュのタイミングを計っていたが、思いの外真面目なアスタロトの声音がスタートを思い留めさせたのである。
『レイブよ我の話しを良く聞くのだ、良いか』
「? アスタさん?」
『お前達と過ごしたこの数日間は我にとって愉快で楽しい一時であった…… だがそれもここまでの様だ……』
ゴクリ
レイブの喉が大きな音を立てた、心の内を見透かされたと思ったからだ。