【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
小児科医青×天才外科医桃
小児科の看護師水さん
のお話です
今回はワードパレットでリクエストいただいた3つの言葉(タイトルになってます)を本文中に使用してのお話になります
青視点
「戻りましたー」
椅子に座って電子カルテに向き合っていると、ほとけの高めの声が響いた。
思わず時計を確認すると、昼休憩と言って出て行ってからまだ15分くらいしか経っていない。
思わず眉を顰めて不機嫌に振り返った。
「休憩ちゃんと取って来いよ。後でいいって言うたやん」
そう言う俺に、ほとけは買ってきたばかりのミックスサンドを手渡してくる。
「はぁ? 何うぬぼれちゃってんの? 僕だって今日サンドイッチ食べたかっただけだもーん。いふくんのためじゃないですぅ」
言いながら俺の隣の椅子を引き、あいつは買ってきた卵サンドの包みを開いた。
何を言ってもこんな調子で言い返されるだけだろうから、俺は「ふん」と鼻をならしただけで画面に向き直る。
「あ、そうだ。これないちゃんから預かったよ」
思い出したようについでに手渡されたのは、小さな紙袋。
「?」
眼鏡の奥で眉を寄せ、首を捻る。受け取ったそれをがさりと音を立てて開いた。
そして中を覗き込んで、思わずふっと笑みが零れる。
「なぁ、ないこになんか言うた?」
「え? キッチンカーのとこで会ったから、いふくん今日忙しそうでお昼食べに出られないんだ、ミックスサンド買って行ってあげるんだ、ってことくらいかな。話したの」
「はーん、そう」
「なんかあった?」
「いいや、なんも」
ぎっと音を立てて椅子の背にもたれかかり、電子カルテに向き直る。
そしてミックスサンドの包みを開いた。
ハムとチーズ、それにきゅうりなんてシンプルなそれを手に取り、ゆっくりと一口ずつ噛みしめるように食べ進める。
「ねぇほとけっち、休憩中ごめーん。ちょっといい?」
隣でスマホを眺めながら同じようにサンドイッチを食べ始めていたほとけに、奥から別の看護師がひょこりと顔を出して声をかけてくる。
「いいよー」と軽く応じたあいつは、卵サンドを一旦包みに戻して立ち上がった。
一人になった部屋で、たった2切れのサンドイッチをそれから時間をかけて食べ進める。
いつもの自分ならこれくらい1分もあれば食べ終わりそうだけどな、なんて考えると、思わず苦笑いが漏れた。
食べ終えて包みをゴミ箱に放り投げてから、ないこからの紙袋をもう一度開ける。
中から出てきたのは小さな錠剤と栄養ドリンク。
「バレバレやん」
ふふ、と笑ってその風邪薬の錠剤を取り出すと、俺はそれを近くに置いてあった水で飲み下した。
大変だった一日を終え、医局にある自分の個室へ戻ってからうなだれるようにして椅子に座る。
…あぁ疲れた。
加えて体調が悪いのが最悪だった。デスクの前の椅子に座り、頭だけはのけぞるようにして後ろへ傾ける。
「おつかれー」
コンコンとドアがノックされたかと思うと、返事をする間もなく開かれた。
いつもそうだ。ノックの意味は?と、小一時間この張本人を問い詰めてやりたくなる時がある。
「うわ、相当やばそうじゃん。熱は?」
「ない。倦怠感と頭痛だけ」
ずず、と滑り落ちそうな態勢で顔だけ仰向けて座る俺を、ないこが苦笑い気味に見ているのが分かる。
ドアを閉めてこちらに歩み寄ってくる踵の音が響いた。
「忙しいだけならまだしもさ、まろがサンドイッチ食べたがるなんて絶対具合悪いんだと思ったわ。しかもミックスサンドなんてなかなか選ばなくない?」
「…薬ありがとう」
「どういたしまして。ちょっと落ち着いたら帰る? 俺今日車だし」
こつこつと近寄ってきたかと思うと、俺のすぐ後ろでぴたりと足を止める。
そうしてこちらの顔を覗き込んでくるから、仰向いた俺とは上下逆向きに、ないこの整った顔が視界に映った。
体調が悪くて食欲がなくなったとき、サンドイッチとかヨーグルトみたいなものしか受け付けなくなるのは昔からだ。
しかもカツサンドなんて重いものは当然無理で、ごくシンプルなものしか食べたいなんて気持ちが起こらない。
何も食べずに薬を飲むわけにはいかないし、ほとけに「何か買ってくるよ」と言われたとき、ミックスサンドくらいしか思い浮かばなかった。
それをほとけの断片的な話を聞いただけで的確に突いてくるないこは、さすがに長年の付き合いだと思う。
「ふ、弱ってるまろ珍しい」
上からこちらを覗き込むないこの顔は、天井の照明のせいで逆光になって細部までは見えない。
「言うとれ」
「夕飯食べられそう? お粥とかにする?」
「……サンドイッチ。ミックスサンドで」
「はは、帰りに買って帰ろうか」
そう言って、ないこはそのまま顔を下に下ろした。
顔を仰向けたままの俺の唇に、ちゅ、と自分のそれを触れ合わせる。
「……うつるって」
「いーじゃんうつったらうつったで。2人で病気休暇とろうぜ」
「最低…」
そんなこと言ったって、お前がそんな風に適当に仕事を投げるわけないって知っているけど。
小さく吐息を漏らした俺に、ないこはまた楽しそうに笑う。
「まろがこんなに弱って甘えてくるの珍しいよな」
…それがさっきからの嬉しそうな顔の理由か。全く、人が体調悪い時に不謹慎だな。
そう思ったけれど当然それを責めるつもりもない。
ただ、甘え下手だという自覚のある自分が甘えられるのは、やっぱりないこだけなんだよなと心の内で呟いた。
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