テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
1,702
107
ローラ📽️
212
💖💛(前回の続き…というか、吉田さんsideになってしまいました。すみません。)
猫と犬の王国 2
産まれたときから運命が決まってるなんておかしいと思う。
犬の家系に産まれた子供はほとんどが猫によって売り飛ばされる。そういう所業があるというのを知ったのは4歳の頃だ。
寝ている間に売り飛ばされ施設へ送られる。俺がいた施設では猫の調教師に犬としての嗜みを全て叩き込まれた。痛くて苦しくて辛い…でもそれを乗り越えたら猫になれるんじゃないかと微塵の希望も持っていた。
そんなわけないのに。
6歳になる手前、恰幅のよい男の猫が施設を訪れねっとりとした目で若い犬を見に来た。
みんなびびって笑顔が崩れる。この施設の唯一いい点だったのは小さい子達にもちゃんと奴隷であることを教え込んだ事だ。なにも知らなければ金持ちの家に暮らせると浮き足立つだろう。
俺はそんな中あえて笑ってみた。
俺を買ってみませんか?そんな風な笑みを浮かべ猫の前に跪いた。繋がれてるリードを揺らし潤んだ瞳で見上げればすぐに買ってくれた。
ここから抜け出した先になにがあるのか見たかった。あわよくばなんて夢にも思いながら。
結果、調教された奴隷の仕事はこなした。
1つの事を除いて。
それは下の世話だった。猫に呼ばれベッドに服を脱いで寝ろと命令された時に危機感を覚えた。こんなことは教わってない。まさか自分と交わろうとするとは考え付かず反射的に猫に歯向かった。
いっそ殺してしまおうか、そんなレベルで暴れまわり警備を担当してた護衛の犬に捕まり猫の怒りを食らい解雇された。
それから違う施設に売り飛ばされた。
前の施設とは違い子供たちはなにも知らずのびのびと暮らしていた。黒服の男達は前歴がある俺に口止めをしてきた。なにも知らない無垢な子供の犬の方が売れるらしい。
外の世界に未来はない事を知った自分は施設でも異質な存在だった。誰とも馴れ合わず反発的な目で周りを睨む。孤立したかった。永遠と外の世界に出たくないと思ったから。
しかしのどこぞの猫が10歳の誕生日に犬を飼うだので10歳の以下の犬は全員招集された。
みんな豪勢な家を見た瞬間楽しそうに笑う。ここに住みたいねなんて馬鹿みたいな事を言う。
絶対に住みたくない。
なにされるのか知ってるからだ。
もう2度とあんな想いはしたくない。
そう、思ってたのに。
「この子にする!お前名前は?」
なんで?思わず出かかった言葉を飲んだ。
選ばれたくないのにどうして…。
リードを引っ張られ挨拶の許しがでた。
猫の名前はさっき母親に呼ばれてたのを聞いて知っている。名前を勝手に呼ぶのは無礼に価するのを知っていた俺は睨み付けながら答えた。
「仁人…です、勇斗様」
一瞬黒服が持っていたリードが強く引かれたが気にせず早く考えを改めろと思ってた。それに黒服も俺の前科を知っているため説明をしようとしたが彼はあっけらかんとしていて聞き入れず俺を指名した。
「俺仁人がいい!」
あんな眩しく笑う顔は見たことなくて思わず瞬きを繰り返すしかできなかった。
リードが黒服から勇斗様へ渡される。
俺はただ呆然とするしかなかった。
まだ10歳だからただの友達のような関係が欲しいのかと思えばそうではない。彼には友達がたくさんいた。だが買われたその日にリードは外された。
「邪魔だろ?リード」
「でも…」
「いいよ、首輪も…今度かっけーやつ買ってあげる!」
月のように笑い俺を見つめる瞳は俺の奥深くまで見抜いてるような気持ちにさせた。
それからの彼はどこか異質だった。
俺に自分好みの服やアクセサリーをプレゼントしたり頭を撫でたり遊んだり一緒に寝たりと奴隷とはあるまじき行為をうける。
俺は罠なのか?と疑い雑用を引き受けようにも他の犬がやってくれるよと俺を閉じ込める。
そんな日々が10年続き、勇斗様の20歳の誕生日を盛大に祝う準備を始めてる最中にふと、頭を過るのは新しい犬の事だった。
もう10年もこの家に努めてきたがもしかしたら新しい犬を迎えるかもしれない。
…いや、それがどうした。どうもしない。また若い犬達の中から好みを選べば俺は雑用に戻れる。そんなこと思う半面何故か胸の奥が苦しくなった。
「仁人、ちょっと来て?」
「はい、勇斗様」
「20歳の誕生日に欲しいものがあるんだけど…仁人にしか準備できないもの」
「私にしか?」
考えたのはやはり犬だった。
俺が調教済みの犬を選んで勇斗様にプレゼントする…これも普通の犬じゃあり得ない特権だ。
ましてや俺にしかと言っている、相当優秀な犬が欲しいんだろうか。
「俺の19歳の最後の日、俺の部屋に来て?」
「勇斗様の部屋に?」
「うん、駄目?」
「…いえ、伺います…けど」
「けど?」
「いえ…」
俺は勇斗様が19歳の最後の夜に勇斗様の部屋に行った。俺なりに資料を作り同じ雑用係の犬にお願いし出来の良い犬の帳簿を持っていく。
気に入る犬がいればいい。そう思った。
「失礼します、勇斗様……勇斗様?」
真っ暗闇の部屋の中、月明かりだけが部屋を照らしているが勇斗様の姿が見えなかった。
バタン
背後の扉が閉まり振り返るや否やベッドへと投げ出され帳簿が舞い上がる。
「っ…誰!?」
「お前のご主人様」
「勇斗様…なにを!?」
「仁人、俺と一緒になろ?その答えが俺の欲しいもの」
「はぇ…な、なんで…」
「なんでって…好きだから?」
「…や、やめて下さい!俺は犬です!勇斗様とは……んっ…」
ベッドの上で押さえつけられキスを落とされる。突然のことに俺はパニックになり暴れた。昔の事を思い出す、あの時のように暴れようと、思ったのに…力が出なかった。
「仁人、お前も俺の事好きでしょ?」
「…そんな、こと」
「分かるよ、だってこんなに俺がアプローチしてるの知ってるくせにはぐらかしてる」
「………勇斗様、やめて…」
「なんで?」
「だって…」
「仁人以外に誰もいないよ、俺を受け入れて?受け入れないなら…命令にする?」
ニヤリと笑う瞳はまさに猫のように鋭く俺を射ぬいた。あの頃とは身も心も大人になってもっと素早く判断できるはずなのに身体が動かない。駄目だ、だって犬と猫では…。それは昔も同じだ。早く逃げなきゃ…勇斗様を自分から守らなきゃ。
暴れて逃げようとする俺の首輪を勇斗様が掴み再度キスを繰り返される。喉が閉まり息が苦しいのに勇斗様の舌先が上顎をなぞるとたまらず腰が落ちる。
「仁人、…ごめん、苦しかったね」
「げほ、はぁ、はぁ…」
「腰抜けた?気持ちよかった?」
「はやと、様…」
「愛してる仁人、お前の答えが聞きたい」
◇◇◇◇
20歳のパーティーをすっぽかし慌てる俺を乗せて勇斗様は車を走らせ二人で暮らすには広すぎる部屋に俺を拉致した。言い方はあれだがあれは拉致としか言えない。
あれから8年が経過した。
今ではすっかり家政婦と執事のような役割をしている。元々なんでも器用にこなせるタイプだったのもあって動いて忙しく家事している方が楽しい。
勇斗様は今やインフルエンサーとして莫大な人気を得ている。モデルに歌にバラエティーにニュース番組…あらゆるジャンルに挑戦しては売れている猫らしい猫だ。
未だ実家からはお見合いだのなんだの話が来ているが勇斗様はそれに見向きもせず、飽きもせず俺を抱く。全くもってなにがいいのかわからない。昨日も抱かれた。もう何回抱かれたのかは自分でもわからない。
ぐーすか寝てる勇斗様の側で少し考える。
もしも猫と犬が同等の世界線だったら。
想像はうまくできないけどいつか勇斗様のおかげでそうなるんじゃないかとも思う。
今はただ奴隷でも執事でも勇斗様の側にいれればいい。多少砕けた口調で会話して一緒に寝れるだけで俺は満足。
「…犬の思う台詞じゃないけど」
愛おしい寝顔に1つキスを落としてから窓を全開にして日の光を勇斗様に降らす。
「勇斗様、朝です」
「んー…もう少し…」
「勇斗様」
「おはようのキスされたら起きる」
「今日の予定にお見合い入れときますね」
「待ってやめて!お見合いしない!」
「わかってんなら早く起きろよ」
窓を開けて換気をしつつそう言えば冷たいだのなんだの言ってくるからお前の選らんだんだろと投げやりに言ってみる。
朝御飯はもうできた、たぶん風呂も入るだろうから沸かしといた。ちゃんと全部こなしてますよ俺。こんな出来る犬なんかどこ探してもいねぇから。
やいやいと言い争いながら暮らす。
そんなのも悪くない。
「今日はしないからな」
「えぇー」
どーせ今日もなんやかんや言われてやるんだろう。付き合ってあげる身にもなって欲しい。 まぁ本能には抗えないから許しちゃうけど。あくまで本能だから、自分の意思じゃない。たぶん。
出会えて見つけて拾ってくれてありがとうなんて今さら恥ずかしくて言えないけれど、精々こんな犬に振り回されている猫でいて下さいませ、ご主人様。
佐野さんに褒められて尻尾ブンブンな吉田さんという二次創作過ぎるさのじんがこの世に存在したと知って横転。公式が強すぎますね…。
コメント
2件
続きありがとうございます!!めちゃくちゃ好きです
うわっ、これ…重くて苦しかった仁人の過去と、勇斗様の眩しいほどの執着のギャップがすごい…!「リード外す」とか「一緒に寝よう」とか、仁人からしたら罠にしか思えないのに、全部本気で愛してるって宣誓だったんだな。ラストの「今日はしないからな」→「えぇー」の流れで思わず笑った。だって絶対するやつじゃん!作者さんの「公式が強すぎる」って気持ち、めっちゃ分かるわ。尊い…。