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気づいたら引っ越しの荷造りしてて、段ボールに配信機材詰めてて、新居に案内されていた。
「トルテさんの部屋はここね」
そう言って、弐十が指差した先には、白いドアと、既にカーテンのかかった窓付きのシンプルな一室。
「へぇ……意外とちゃんとしてんな」なんてごまかすように呟いてから、重たくなった段ボールを片っ端から運び込む。どさっと床に置くたびに、古い木の床が小さく軋んだ。
布団の位置を決めて、ラックを隅に寄せて、ため息まじりに腰を下ろすと、思いのほか心臓がうるさい。……この空間が“自分の部屋”になるなんて、まだ実感がない。
とりあえず、と立ち上がり、配信機材が入った箱を開ける。ケーブルの絡まりをほどいて、PCデスクの上に並べていく作業は、手を動かしてるうちに少しずつ気持ちを落ち着けてくれた。
ガムテープの端を歯で噛みちぎって閉じた最後の箱を、部屋の隅に押しやる。設置したばかりのPCのスイッチを入れて、配線の確認を終えると、肩の力がふっと抜けた。
「……ふぅ。とりあえず、こんなもんか」
重たい腰を上げてリビングに向かうと、弐十がソファに深く腰掛けて缶を手にしていた。ゆるく微笑んだその顔を見ただけで、さっきまで張り詰めていた胸の奥が、勝手に熱を帯びる。
「トルテさん、お疲れ。ルームシェア記念に、乾杯しちゃう?」
そう言って差し出された缶を、何気ない顔で受け取るふりをしながら、手のひらが少し汗ばんでいた。
視線を合わせたくなくて、缶のデザインに目を落とす。
悔しくて、気持ち悪くて、全然認めたくなかったけど
……「俺、こいつのこと好きだ」って
きちんと、自覚してしまった…。