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#琉歌の部屋
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第九話 赤い糸
「……ゆたくんを救えるのは、ころんだけ?」
ころんは黒板を睨んだ。
「どうすればいいんだよ!」
返事はない。
代わりに、ゆたくんの手に絡んでいた赤い糸が、ゆっくり動き始めた。
「痛っ……!」
「ゆた!」
らおが駆け寄る。
けれど、糸に触れようとした瞬間――
バチッ!
「っ……!」
らおの手が弾かれた。
「兄ちゃん……!」
「大丈夫だ」
らおは手を隠した。
「俺が助ける」
ゆたくんは首を横に振る。
「違うよ」
「え?」
「この糸は……俺が死ぬ未来と繋がってる」
「だから、俺が消えれば――」
「ダメ!」
ころんが叫んだ。
「そんなの絶対ダメだ!」
その瞬間、教室の奥に一枚の扉が現れた。
扉には――
『ゆたくんの記憶』
と書かれている。
「……入れってこと?」
ころんがドアノブに手を伸ばす。
すると、ゆたくんが腕を掴んだ。
「ころんくん、やめて」
「どうして?」
「俺の過去……見ないほうがいい」
「それでも行く」
ころんはゆたくんの手を握った。
「一人で抱えなくていいんだよ」
扉が開く。
そこに広がっていたのは――
昔の、らおとゆたくんの家。
幼いゆたくんが、一人で泣いている。
「……兄ちゃん」
幼いらおが、ゆたくんを抱きしめている。
『大丈夫。俺が守るから』
ころんは胸が苦しくなった。
映像が変わる。
病院。
診察室。
医師から告げられる言葉。
そして――
『このことは、お兄さんには言わないでください』
現在のゆたくんが、ぽつりと呟いた。
「……あの日から、俺はずっと隠してた」
「兄ちゃんが、自分を責めると思ったから」
らおが涙をこらえながら言う。
「……俺、何も知らなかった」
「ごめん」
「謝るなよ」
らおはゆたくんを抱きしめた。
「今度は、俺が守る」
その瞬間。
赤い糸が、二人の手首を繋いだ。
そして糸は――
ころんの手首にも繋がった。
「……!」
黒板に文字が浮かぶ。
『誰か一人が犠牲になれば、ゆたくんは助かる』
ころんは迷わず言った。
「僕がなる」
「ころんくん!?」
ゆたくんが叫ぶ。
「ダメだよ!」
「僕なら――」
「ダメ!!」
ゆたくんの声が震えた。
「俺のために、誰かが死ぬなんて……絶対嫌だ!」
すると、後ろから声がした。
「……だったら、答えは一つだね」
振り返る。
そこにいたのは――
心音だった。
「誰も犠牲にならない方法を探せばいい」
「心音……?」
心音は笑った。
けれど、その顔には隠しきれない疲れがあった。
「俺も……秘密を話す」
「俺も病気を隠してる」
「でも――」
心音は、ころんたちを見る。
「この学校に来てから、一つだけ分かったことがある」
「病気も、過去も、死んだ人も――」
「全部、誰かを想う気持ちから始まってる」
その瞬間、赤い糸が光った。
そして黒板に、新しい文字が浮かぶ。
『第四の物語――開始』
ころんは息を呑む。
「……まだ続くの?」
心音は静かに頷いた。
「うん」
「だって――」
廊下の奥から、誰かの泣き声が聞こえた。
「次に消えるのは、俺だから」
コメント
1件
みぅ🤍🥀です、読了しました🌙 “赤い糸”がただの運命じゃなくて、犠牲と選択の象徴になってるところ、すごく重くて胸に刺さりました。兄弟の絆も、ころんの覚悟も、どっちも正しくて苦しい……。心音の「俺だから」で終わるラスト、ゾワッとしました。続きが気になりすぎて、もう一度読み返したいです。 琉歌さんの描く「闇」と「優しさ」のバランス、本当に好きです。