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私たちは中に入った。予想以上にたくさんの男がいて怖い。みんな薄っぺらいシャツにスッとしたパンツ。服装を見た瞬間にここがホストだと理解した。
だけど、父がなぜここに来たのか理解できない。もしかして、私のお兄ちゃんはホストなのかもしれない。そう思うと安心しきれない。内側まで漬け込んでいくのがホストのやり口だ。なるべく関わらないようにしたいと思う。
「大助さん、こんにちは。」私よりも高い声でお父さんの名前を呼んだ。
「里美さん、お待たせ。」お父さんは声の主をそう呼んだ。
里美さん。これから私のお母さんになる人だ。きっといい人なのだろうけど、私にとっては怖い人でしかない。
「この子が美晴ちゃん?」お父さんにそう聞いた里美さん。
「そうだよ。」
「初めまして。宮原美晴です。これからよろしくお願いします。」私は満面の愛想笑いでそういった。
「こちらこそ、よろしくね。」里美さんは屈託のない笑顔でそう言ってくれた。それが私には虚しい。
走ってこちらに向かう足音が聞こえた。
「ごめん、遅れた。」そう言った男の声。
「初めまして。宮原昇です。源氏名は青空昴です。大助さん、美晴ちゃん。よろしくお願いします。」お兄ちゃんがそう言った。(源氏名とはホストで使う名前のこと)
「こちらこそよろしくね、お兄ちゃん。」私がそう言った時、まわりがざわついた。
「大助さん、みんなにも紹介しないとね。」里美さんがキラキラとした瞳でそう言った。
「みなさん、こちらに注目してくれ。今日から新しいオーナーになる宮原大助だ。こちら、新しく家族になった宮原里美、昇、美晴だ。よろしくやってくれ。」偉そうな口調でそういった。
正直、私は動揺を隠しきれているか心配だ。急に新しい家族に会うと連れてこられたところがホストだったから。だけど、今日からは家族だ。私が好きな場所ではないし、私が好きな人もいないのだ。だから怖くて仕方がない。いつ終わるかわからない。
だから、家族になってみせる。父に言っているように口も悪いけど、許してもらえるくらいの関係になってみせる。そんな関係になったら失うのが怖いけど。だけど家族になってみせるから、お母さん。