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海の潮風が顔にかかった気がした
僕はゆっくりと顔を上げて教室から見える海を見てみる
いつも通りの海だ
びっくりさせないでほしい
「………ねぇ」
僕はクラスメイトの肩を思わず叩いていた
その男子はびっくりした顔で僕の方を見た。
「………なに」
しばらくぼーっとして固まっていたけれど、友達に呼ばれて去っていった
僕はため息をつくと、教室を出て人気のない廊下に足を運んだ
窓をガラッと開けると、涼しそうな外に顔を出した
風はなかった
またため息をつくと、窓を静かに閉めた
とっくに授業は始まっている
でも教室には帰らない
廊下を音を立てないように走って移動し、階段は1段飛ばしで降り、踊り場に着くとまた窓を開けて限界まで息を吸った
もっと吸ってもあまり苦しくなかった
階段の手すりを掴みながら1歩1歩降りて行く
靴箱まで来た時、床に水が落ちていることに気づいた
しゃがんで見てみると、ただ透明が映っていた
立ち上がろうとすると、また水が落ちてきた
上かと思って見あげて見たけれど、それらしきものはなかった
まさかと思って目を脱ぐってみたら、細長い水がヘビのように手の甲にあった
それに気がついた途端、視界が一気に滲み、前が水に入った時のように揺らいだ
そのまま誰もいない
いや、正確には僕の方がいないんだけど
床に座りこんで子どものように泣きじゃくった