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「風夜?」
ブラックが入って来た。空にふわふわと浮いている途轍もなく分厚い本と、倒れているすまない先生、そして今にも泣き出しそうな風夜を見て首を傾げた。
「何をしているのですか?」
風夜は
「……どうしたらいいの……?」
とすまない先生を抱え上げながら言うのでとりあえず保健室に連れて行った。
「何があったんですか?」
そう問うと風夜が“本”を呼び出した。先程のバカみたいに分厚い本だ。
「えっと……?」
「これはね【Mr.すまないの魔導書】」
そう言って風夜は開く。そして真ん中の大部分を掴む。
「かつてのすまない君は、この部分を破り捨てた“はず”なんだ。でも……何故か分からないけどこの部分が再生した。ついさっきね」
ブラックは目を見開く。
「じゃ、じゃあ、すまない先生の記憶が戻るのですか?」
「……戻るかもしれないし、戻らないかもしれない」
風夜は難しい顔をする。
「ただ……もし、戻ってもね、そのすまない君は、君達の知るすまない君じゃない可能性が高いんだ……今のすまない君の中に数万年前の【英雄・Mr.すまない】が蘇るってことなんだから」
風夜はさらに悲しそうな、苦しそうな顔になって続ける。
「でも、それだけならいい……すまない君は何度も君達との出会いと別れを繰り返す事で精神が擦り切れて僕の元に現れた。この本を見て分かる通り、最後の方のページこそ再生しなかったけど、だからと言って蘇ったすまない君の精神が擦り切れてない保証は何処にもないんだ……もしすまない君の精神が擦り切れた状態で蘇った場合……最悪、すまない君は壊れてしまうかもしれない」
「っ!」
風夜は顔を伏せる。
「地下に行った時ね、少し蘇っている事に気付いて、すまない君にこの本を放置するか、再び破り捨てるか、聞こうと思ってここに来たんだ……でも間に合わなかった……」
風夜はの目から涙がこぼれた。
「……ごめん……ごめんね……僕が躊躇ったせいで……ごめんなさい……!」
「……謝らないでください」
ブラックが押し殺した声でそう言った。
「……え……?」
「貴方は何も悪くないでしょう?こっちが申し訳なくなるので謝らないで下さい」
「……うん……」
風夜は首を傾げつつ頷いた。
ドタドタドタッ!
急に騒々しい足音が聞こえたかと思うと、保健室のドアが壊さんばかりの勢いで開けられた。雰囲気をぶち壊しながら入って来たのは報告を受けた他の生徒達だ。
「すまない先生は大丈夫なのか!?」
そう焦りながら聞く銀さんを宥めつつ
「今は気を失ってるだけのようですので大丈夫です」
と答えた。安心したように息を吐く銀さん達を見ていると、風夜がくいくいと服を引っ張った。
「なんです?」
「……ねぇ、言った方が良いかな?……さっきのこと……」
「……今すぐではなくて良いでしょう」
「……分かった……」
____その時。
「……う……ん……?あれ?ここ保健室?」