「どこだよここぉ…」
「慣れたら楽しいよ」
「慣れてたまるか… 」
無理やり連れてこられた先は見知らぬ土地。一面薄暗い霧が立ち込めていて、とても俺の育った世界とは思えない。
一体ここはどこだ?そういえば家から拉致された時、彼らは「らっだぁの元へ」と言っていた。ここにらっだぁがいる?果たしてこんな所で何をしているっていうんだ。あの赤マフラーの人は先に行っちゃってバニーボーイ姿の変態──もといげんぴょんさんと2人きりだし。
「…あ、そうだ、これあげる」
渡されたのは謎のスプレー缶。先にはロウトのような口がついている。意図がわからず首を捻っていると、げんぴょんさんが補足をくれた。
「中身は酸素だよ。ここの空気人間が吸いすぎると死ぬから、できるだけ吸わないでね」
「はぁ!?そういうこと早く言ってよ!!!」
「だって人間連れてくるの初めてなんだもん、知らねえよ。思い出しただけ褒めて欲しいんだけど?」
フンと鼻を鳴らし、そっぽを向く。見た目こそ成人男性だが、中身はまるで子供のようだ。行動が突発的な所や言動がクソガキな所、変に達観している所などなんだからっだぁに似ている。
「…うん、じゃあ行くかぁ」
ここに着いて、赤マフラーの人と離れてからずっとキョロキョロしていたげんぴょんさんは突然行動を止め、呟いた。
行く?一体どこへ?そう聞く間もなくあっさりと俺を脇に抱え、グッ…と足に力を込めたと思えばビュンッと前に飛んだ。
「ぅうわぁぁぁぁぁあああ!!!!」
「舌噛むから口閉じてろ〜」
兎…のように可愛らしくはないが、時たま地に足をつけトンッと蹴っているからこれはきっと飛行ではなく跳躍なのだろう。どんな脚力!?
「あ」
「あ?」
ドンッと鈍い音が鳴る。しかしそれは俺ではなく、げんぴょんさんでもなかった。突然止まった移動に目を瞬たかせていると、げんぴょんさんの足元、いや尻元に人の顔があることがわかった。人かどうかは定かではないが…
「あっ、やべ」
「……」
「まいっか。怪我とかある?」
「な、ないです」
「……いっか、じゃねぇんだよ」
クソっ、と悪態をつきながら体についた埃を払いながらその人は腰をあげる。ウワッ背デカ!
緑の眩しいその人は切れ長の目に紅く輝く瞳が特徴的で、その整った顔立ちに恐れを覚えてしまう。こちらをチラと見れば俺の後ろ、げんぴょんさんの頭を掴み、その瞳には明らかに怒りが滲んでいた。
「大層な挨拶じゃねぇのげんぴょん〜〜??」
「アラいい腕ですこと奥様おほほ!力加減ミスってますわよ〜!あっいでででで死んじゃう」
「潰してやろうか?頭」
イヤー!!と甲高い声でげんぴょんさんが叫べば、鼓膜の危機を感じ取ったのかげんぴょんさんから手を離し耳を押えた。
「んで、お前がぺいんとか?」
「あっはい」
「目に優しくないガキだな、髪染めろ」
「は?」
「だる絡みやめい、らっだぁんとこ連れてくんでしょ?」
「あぁそうだった」
忘れてたの…?1番重要なのに…
ぐちつぼと名乗ったその大男は、げんぴょんさんの友人、自称一番らっだぁを知る男、らしい。げんぴょんさんと同じ元ラタミで、独立を指導したのは彼だという。
「まぁ雑談してる時間ないんだわ、本気でらっだぁがやばい」
「あ、まじ?もうそんな?」
「そんな。さてガキ、らっだぁの処行くけど大丈夫か?」
「俺その為に拉致られたんだけど。あとガキじゃなくてぺいんと!!」
「ぺんさんな、了解」
舌噛むから気をつけろ、とぐちつぼさんの小脇に挟まれた状態で告げられ、デジャヴを感じる暇もなく高く飛び上がった。
「ァァァァァァァァ!!!!」
「うるさコイツ!!!!!!!」
「鼓膜破壊神が2人もいる…」
「ちなみにこれから増えるぞ」
「絶ッッ対らっだぁ叫ばせるなよ」
コメント
6件
待ってました青鬼ィ!!! ぴょんさん最高かよ👍 これからも頑張ってください!!!!
来ました続きーー!!!! いやついにつぼつぼ出てきた!!この長身の男も元々もちもちなラタミだったんか..... 鼓膜破壊神しかいない世界線....()