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目次
○はじめに(作者から )
○好きな人の好きなもの
○クラスの空気
○文化祭準備 ↴第3話にて投稿予定
○音駒高校文化祭!
○こころ
○あとがき
○クラスの空気
私は朝が苦手である。ベッドから離れたくない。布団と友達になりたい。
変なことを朝から考えている私は、意識が半分寝ている状態。寝ては駄目だと分かっているが、起きたくない。眠気に抗っている状態だ。
あと10分くらいなら…なんて思っていたらスマホが鳴った。こんな時間に誰だよ。失礼ではないか?そんな考えは一瞬で消えた。
なぜなら___
『おはよ、奏音。起きて』
「……」
『お・は・よ』
「…おはようございます」
『本当に朝苦手なんだね。少し驚いた』
ご褒美か何かでしょうか。スマホから好きな人の声が聞こえる。夢にしては上出来過ぎる。
「…夢か」
『残念、現実だよ』
「……んぅ、あと5分だけ」
『昨日モーニングコールしてって頼んできたから電話したんだけど…』
そういえば、そんなこと言ったな。まさかあの研磨くんが本当にしてくれるとは思わなかった。
『それとも何?モーニングコールじゃなくて直接起こした方が良かった?』
「!?」
それは、断固拒否!!朝の顔を見られるのとか恥ずかし過ぎる!!慌ててベッドから飛び起きた。
『家、向かっていい?』
「どーぞー」
『ん、じゃあ切るね』
朝から驚いて目がすごい開いてる。でも、モーニングコールも悪くはないね…。
朝の支度を爆速で終えて、朝食を食べようとリビングに向かった。
リビングには誰も居らず、キッチンを覗くとお父さんが料理をしていた。朝ご飯を作ってくれているらしい。
「おはよう奏音。孤爪くん家に来るんだって?」
「おはよ。というか、なんでお父さんが知ってるの?」
「孤爪くんに聞いた〜」
いつの間に連絡先を交換したのだろう。お父さんは、研磨くんを随分と気に入ってるらしく、付き合う前から推していた。
交際を始めた今は、とにかく仲を深めようと意気込んでいる。
朝食を食べていると、玄関のチャイムが鳴った。
「お邪魔します」
「孤爪くんいらっしゃ〜い」
研磨くんをルンルンでお出迎えしたお父さん。機嫌が良い。
「研磨くんおはよう」
「…おはよ」
「次からは一人で起きてね。じゃないと本当に起こしに来るよ」
「あ、はい…」
本当に申し訳ない。研磨くんも朝得意なタイプじゃないのに、そんな人に起こしてもらうのは気が引ける。
それに、起こしに来てもらうのはもっと嫌だ。
朝食を食べ終えて、二人で家を出た。当然、家の前を通る同じ高校の生徒は居る。その生徒が同じ家から男女二人が出てきて、訳が分からず5秒くらい足を止めているのを見ると面白い。
「そういえば、今日の授業って文化祭についてだったよね?」
「あぁ……覚えてない」
覚えてないのか〜、流石研磨くん。興味無しな反応です。
「研磨くんはどんなのしたい?」
「…どれも嫌だ。楽で騒がしくないやつがいい」
それは、準備期間を暇にしそうだな…。楽で騒がしくないやつといえば、展示会とか?たぶん、投票されないやつですよ。
「奏音は?やりたいやつないの?」
「…前の学校で無理矢理に変なのやらされたから、好きじゃないんだよね。文化祭とか、そういう行事って」
「あ……そっか」
少し気まずそうに、それ以上は何も話さないようにするためか、研磨くんがゲームの話をしてくれた。
気遣いしてくれて、少し嬉しかった。
教室に入ると、文化祭の話で持ちきりになっていた。お化け屋敷だの、迷路だの色々。1ヶ月以上も先の事なのに、皆の意識は文化祭である。
準備期間約1ヶ月と言っても、その間にテストが行われたり、部活の大会があったり、様々な事が行われるため、配慮した結果が1ヶ月らしい。
文化祭では、ミスコンとかミスターコンとかも行われたり、文化部の発表とかもある。その分忙しいのだとか。
そして、話し合いの時間がやってきた。2年3組の大事な話し合いだ。まぁ、1回だけじゃ意見がまとまらないので何回か場を設けられるらしいけど。
「では、まずは簡単に候補を出してもらいまーす!挙手でお願いね〜」
実行委員である、樋口やよいさんがまとめ役となり候補がどんどんと挙げられていく。
「他のクラスと被る可能性があるから、第一候補と第二候補を決めよっか!」
「でも、被るのは当たり前じゃねーの?クラス多いんだし」
クラスの人気者である、大野くんが疑問をぶつけた。確かに、学校全体で被らないようにするのは難しい。
「他学年とは被ってもいいんだけど、同じ学年は被らないようにってさ」
「なるほどな!せっかくだしオリジナリティのあるやつにしようぜ!」
大野くんに引っ張られて他の男子も盛り上がっている。ただ、窓側の席にいる研磨くんは死んだ魚のような目になっている。
「んー、お化け屋敷に迷路に、謎解き、メイド喫茶、執事喫茶、たこ焼き…他にも沢山……」
「多すぎだろ!! 」
「今日の話し合いだけじゃ決まらないと思うから、この中から考えて来てもらおっか!メモしておいてね〜」
樋口さんの判断は正しいと思う。流石に多すぎて今日だけでは決まらない気がする……。
これで第一回目の話し合いが終了したかと思ったらまだ何かあるらしい。
「あのね、皆も知ってる通りミスコンとミスターコンがあるじゃない?このクラスからも1人ずつ出場してもらう事になってるんだけど……立候補とか推薦とかある?」
「あ、ミスコンなら鳴瀬さんがいいんじゃない?」
え、ミスコン?無理ですよ。
「そうだね、奏音ちゃんがいいかもね!」
「俺は賛成だぜ〜!鳴瀬が適任だと思ってたし!」
「当たり前でしょ、奏音ちゃんだし」
この空気は断りずらい。クラスの過半数以上が私を推している。やるしかないな…断れないし。
「どうかな?奏音ちゃん」
そう、笑顔で聞いてきた樋口さんを見ると尚のこと断れない。
「…わかったよ。私で良ければ出場させてもらうね」
「やった!ありがとね〜!」
ミスコンに出場することが決定してしまった。これから最悪だ。
「ミスターコンはどうするのー?」
「あ、そうだね!そっちも決めなきゃ!やりたい人とかいる〜?」
「大野やれよ〜!」
「は?嫌だよ。ミスコンが鳴瀬なら、旦那の孤爪でいいじゃなねーか」
「…ぇ、オレ…?」
「彼女が出るのにお前が出ないとか盛り上がんねーだろー?」
まずい、これは流石にまずい。嫌な展開になった。これだけは阻止しなければ…!研磨くんは絶対にやりたくないはずだ。
「研磨くんの気持ちも考えてあげよ?私は本人の意思じゃない限り賛成は出来ないよ!」
「えー、旦那がもし1位取ったら嬉しいだろ〜?鳴瀬は絶対1位なんだし」
嫌味ったらしく私と研磨くんに向けた言葉だ。大野くんってこんな事する人だっけ?
「そんなことわかんないよ…!それに、研磨くんの気持ちは無視しちゃダメだよ!」
「だって、旦那〜。旦那もなんか言えよ〜!」
なんで、こんなに酷いこと言うの…?
「……わかった。出るよ。」
「だってよ。本人の意思だぞ〜」
「……」
その後、チャイムが鳴り授業が終わった。
そして、あっという間に放課後となった。
「行こ、奏音」
「……あ、うん」
「気にしてるの?」
「だってそうでしょ。無理矢理研磨くんを… 」
「オレがいいよって了承したんだし気にすることないよ」
部活も終わり、帰る準備をしていると一年生達に話し掛けられた。
「奏音せんぱーい!」
元気で高身長。ハーフの灰羽リエーフくんだ。
「せんぱいはミスコン出ますかー?」
「あぁ、うん。そうだよ」
「マジっすか!俺のクラスの奴ら、奏音せんぱい見たいってずっと言ってたんすよ!」
「そうなんだ。なんか照れるね〜」
元気だな〜と思ったら嵐のように去っていった。急だな〜。
「かのちゃーん」
「鳴瀬〜」
次は、三年生の黒尾さんと夜久衛輔さんの二人がやって来た。
「ミスコン出るんだってな。頑張れよ!」
「かのちゃんが出るなら強いな〜」
「そ、そうですか?」
みんなに強敵と言われる私。複雑な気持ちでいっぱいなのですが?
「そういや、研磨もミスターコンに出るらしいな」
「…!そ、そうなんですよ!クラスの人が無理矢理…!」
「まぁ、そうだろうと思ったよ」
「研磨だしな〜、アイツ意外と空気読む時は読むし」
「どうにか、出来ませんかね…?」
「誰もやろうとしなかったんだろ?そいつらに無理矢理やらすのも同じ事仕返すのはな…」
確かに、こちらが無理矢理やらすなと言っておきながら、任せるなんてことは出来ない。でも、どうしたら……?
「奏音、帰ろ」
考えていると研磨くんに声を掛けられた。
「あ、ごめん。ちょっと待ってね」
「じゃあなー、かのちゃん」
「またな〜」
「お疲れ様でした」
「ほんとに、いいの?ミスターコン」
「いいよ別に、1位以外みんな興味ないでしょ。それ以外の順位はどれ取ってもほとんど一緒」
なんか、ちょっと不機嫌?いつもより、早口だ。話をしていると家に着いてしまった。
「またね、奏音」
「あ、またね」
私は、どうするのが正解だったのだろう。何をしたら防げたのだろう。
去年と同じだ。この空気、いや少し違う。去年は全員が悪意を持ってやっていた。
今回は何人かは見て見ぬフリをしていた。いけないと分かっていながら、悪を見逃す人が大勢いた。早くこの時間が終わってくれという眼差しを感じた。
人間は弱い。弱いからこそ集団で行動しようとする。身を守るためにリーダーについて行く。例えその道が危険であろうと逆らえない。逆らったら高台から落とされるのだ。