テラーノベル
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教室に入ると、窓際の席から春の日差しが差し込んでいた。
鞄を机に置き、ふとノートを開こうとして――忘れ物に気づく。
「あ……筆箱、家に置いてきちゃった」
ため息をついていると、隣の席の美優が顔をのぞきこんだ。
「どうしたの?」
「……筆箱忘れちゃった」
「えー、ドジだね」
美優が笑いながらペンを差し出してくれる。
「ほら、一本あげるよ」
「ありがと……」
ペンを握った瞬間、昨日の悠真の声が不意によみがえった。
――「妹ちゃん、ほんと助かるよ」
小さな言葉や仕草が、全部胸を締めつける。
自分でもどうしようもないくらい、心はあの人に引き寄せられていた。
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