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#シークレットベビー
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夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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西原衣都
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猫塚ルイ

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昴の後を追って廊下を歩きながら羽衣子は氷の入った袋を手に当てた。
「す、すみません……コーヒー持って行くの遅くて……」
思わず謝ると、前を歩いていた昴が足を止める。
「そんなことはどうでもいい。手は平気なのか?」
「はい、ほんの少し跳ねて当たっただけなので。あの、私がコーヒーを持って行きますから……」
「それは皐月がやるから構わない。部屋へ戻るぞ」
「……はい」
そのまま二階へ上がり、羽衣子の部屋へ入ると、ベッドの上に座るよう促された羽衣子は大人しく腰を下ろした。
「見せろ」
「え?」
「手だ」
言われて右手を差し出すと、昴は羽衣子の手を取り赤くなった部分を確認した。
本人も言う通り大きな火傷にはなっていないようで、昴は僅かに眉間の皺を緩めた。
「酷くはなさそうだな」
「はい、すみません、ご心配をお掛けして……」
「そんなことはいい。それよりも痛かっただろう」
「え……」
予想していなかった言葉に羽衣子は目を瞬かせた。
「悪かったな、俺がコーヒーを頼んだばかりに」
昴は羽衣子の手を離すと、近くの椅子へ腰掛ける。
「そ、そんなことないです! 私がボーッとしていたのが悪かっただけで……」
「何か心配ごとがあるのか?」
「…………」
「言いたくないなら無理には聞かない。とにかく、今日はもう休め。それじゃあな」
言って昴は立ち上がって部屋を出ようとすると、羽衣子は意を決したように口を開いた。
「あの!」
「何だ」
「……心配ごと、では無いんですけど……気になることが、あって……」
羽衣子は膝の上で指を握り締めながら言葉を続けていくと、
「気になること?」
「……その、ホテルの時の、ことです」
それを聞いた昴の目が細められた。
「気にするなって言われたけど、広瀬さんに言われたことが……やっぱりどうしても気になってしまって……」
「…………」
「……その、ホテルに泊まったのに、何もなかったのは、おかしいって……」
言葉にすると恥ずかしくなったのか、羽衣子の声がどんどん小さくなる。
「だから、その……」
顔を伏せたまま、ようやく本音を絞り出した。
「それって……私に……魅力が無いからだったのかなって……」
言い終えた瞬間、羽衣子は自分で何を言っているのかと後悔した。
穴があったら入りたいとはこういう時に使うのだろうだなんて思っていた。
けれど昴は怒ることも笑うことも呆れることすらせず、むしろ、深いため息を吐いた。
「羽衣子」
低く名前を呼ばれた羽衣子は顔を上げると、昴に真っ直ぐに見つめられる。
「魅力が無いから手を出さなかったわけじゃない…………むしろ逆だ」
「……え?」
「……お前は魅力的だよ。俺にとっては、誰よりも」
「……っ!」
思いもしなかった言葉を前に、羽衣子は驚いて目を大きく見開いた。
「そんなお前とラブホテルに居て、意識しないはずが無い。けどな、あくまでも安全を確保する為に泊まっただけだったあの状況で、そんなことが出来るはず無いし、それに……お前は俺を信用していたようだから、その信用を裏切るような真似をしたくは無かった」
「昴……さん……」
昴の本音を聞いた羽衣子は、思考が追いつかないでいた。
昴にとって自分は魅力的な存在で、昨夜はもしかしたら、ただ泊まるだけで済んでいなかったかもしれなかった。
そんな事実を知ってしまった羽衣子はどう反応していいのかが分からず、何も言葉を発することが出来ないでいた。
「……だからこれ以上、自分に魅力が無いとか、そういうことは口にするな。いいな?」
羽衣子にそう念を押す昴を前に、ただコクリと頷くだけの羽衣子。
気まずい空気が二人の間に流れると、部屋の外から階段を昇って部屋に近付く足音が聞こえてくる。
恐らく皐月が書斎にコーヒーを届けに来たのだろう。
「とにかく、余計なことは考えずにさっさと休め」
それだけ言って昴は再び部屋を出ようとした、その時、
「――狡いです……そんなの」
羽衣子の口からそんな言葉が飛び出して来たことで昴は足を止めた。
コメント
1件
うわあ、この回……胸がぎゅっとなりました。羽衣子が「魅力がないから?」って自分を責めるところ、読んでて切なくなったんですけど、それに対する昴の「むしろ逆だ」からの本音。ああもう、信用を大事にする男の人って本当に尊い……。二人の間に流れた気まずい空気も含めて、すごくリアルなやり取りでした。最後の「狡いです」も気になるー! 続きが待ち遠しいです!