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「さて、此処だよ」バンバンはレイラが休養して寝込んでいるあの病室へ早速外科医を連れ込んだ。
「失礼するよ」
「ああ」
「やっと来たのか…長い間ずっと戻る気配すらなかったから、てっきりまた面倒な事に巻き込まれていたのかと思っていたところだったが、もうその心配は不要のようだな、無事に外科医を連れて来れてるようだな」スティンガーフリンはそう言って帰ってきたバンバン達にじっと目をやった。
「ああ、何とか連れて来られたよ、それでそっちの方は、彼女の状態はどう…?」バンバンはそう、ずっと傍に居たであろうビターギグルへ質問を投げた。
「何とか持ち堪えれてはいるけど、ウスマンさん達が此処を出て、その医者を探しに留守にしている間‥時間が経過していく程に彼女に襲ってるあの副作用の痛みも強まっていった感じで。それで何も処置をしない訳にはいかなくなってとりあえず、応急処置の為にこの部屋の側にある場所にジバニウム用の効果薬があったから、それを一先ずは打って今は落ち着いてる状態…」ビターギグルはそうバンバンとトードスターに説明した。
「それって言うのは人間には有害で毒になるような物だったりとかしない?ちゃんと人間にも有効に作用するものか‥? 」
「心配ない、人間に挿れても害はないものだった、その一つしか人間にも汎用できるような薬剤はなかったがな」
「そうか」
そうバンバンとスティンガーフリン達が話していると、外科医はそっとレイラに目線を向けた。
「貴方は‥‥……貴方……は、誰‥‥? 」
「私は外科医……医者だ、ウスマンと保安官から君の診察と治療の依頼を受けてやってきた、君が話で聞いた人間の少女で間違いなさそうだな」
「いっ‥‥…医者…?」
「ああ」
此処で前回の予告通り、この外科医マスコットモンスターについて軽く説明をしよう。彼はシリンジョン。外科医のマスコットモンスターで、全体的に赤色の配色をしており、腕には左右それぞれ二本生えていて、その先には手術器具を携えていてゲノム素材はジバニウム、ヒト。
彼もまた、人間に対しては不信用なようで、その為に説得する前はあんな風に頑なに拒否していたという訳だ。
「彼はシリンジョン、外科医でドクターだ。腕の良い医者でジバニウム生体の治療や手術も得意分野とするが、人間にも一応適応する術も彼なら御手のものだろうから、大丈夫さ。まあちょっと対応や態度、処置のやり方が横暴な場合があるけど、そこは目を瞑ってくれ、何かと彼は不器用なんだ」バンバンはそう外科医シリンジョンを紹介した。
「はあ……はあ‥‥はあ……、医者……なの……?この痛み‥…無くなるの…?」レイラはジバニウムの痛みにまた苛まれ、しかもそれは注入された直後よりも、強い激痛に変わってしまい、ぐったりとした様子で、今にも閉じてしまいそうな瞳を堪えてシリンジョンを見つめた。
「ああ、ちょっと処置の場合によっては痛むかもしれないが、少々我慢してくれ」シリンジョンはレイラに近寄って先ずは診察の準備を整え、「ドクター、診察の方は出来そうか?」
「ああ、身体に異常が来されてないかを検査して、その後にジバニウム濃度の検査を行おう、しかし、此処では検査が捗らないな、何処か他に病室にように静かで治療や検査が集中して出来そうな静寂に包まれた空間が望ましいが……」
「此処じゃ難しいのかい…?」
「此処はあくまで休養する為に静養室のような場所……診察や処置するにはちょっと適しているとは言えない環境だ、綿密な検査を行う為にはそれなりに静かな場所が必要だ 」
シリンジョンは部屋を移動する事を推奨し、部屋を診察の間だけでも良いから別室に移動出来ないかとの指示があり、「分かった。と言っても以前とはまるで変わった環境だし、そもそもそんなに安全な所があるのかすら、今では不明だけどね」
そう言いつつも、とりあえず診察と治療を行って貰う為にも、それに適した環境を探す事に。レイラが目を覚ましたあの部屋があるエリアは、ある意味病室にある入院病棟の中のような静養室のような設備の場所で、尚且つジバニウムを保管してある実験室のような場所も無数にあり、実験、ジバニウム保管所兼病院……?のようなもはや幼稚園とは思えない異質な空間…カーテンが仕切ってあって、広々とした処置室、此処でなら極力集中してレイラの診療に取り組めそうだ。
「此処なら、治療と手術、検査が捗りそうだ、では此処で手術やらの作業に移らせ て貰おう」
「ドクター、その最中は我々も同伴は可能か?それが無理なら宮廷道化師だけでも彼女の傍に居させてやれないか…?」バンバンは一つ、シリンジョンにそう相談事を頼み込んだ。というのも、彼女は年齢的にも、精神的にも幼いまだまだ子供。
その為か、寂しさには慣れていない、だからか、こんな状況であろうとも安心の出来る存在と、一時でも離れてしまうのは怖いらしい‥。
そんな彼女を見兼ねたバンバンなりの気遣い故の言葉だった。
「それで、その人間が安心するなら許可する、だが私の診察の邪魔だけはしないでくれ、治療を妨げられるのが私にとっては何よりの不愉快だ、それに言う事や言った通りにでも出来ない役立たずなのも邪魔でしかない…知能がない脳無しもな」
シリンジョンはどうも根っからの人間や自分の思い通りにさせてくれないような者には腹を立ててしまう性分のようで、「他の人間に対してはこっちもドクターと同意見だけど、彼女は我々やドクターが思ってるような悪い人間じゃない、それに子供と大人ではまるで違う」バンバンはそう言い、
「とりあえず、診療に取り掛かってもらおう、このままモタモタしている間にも、その少女に溶け込んだ猛毒質なジバニウムが余計に染み渡って、苦痛が悪化して…みるみる身体付きまで変わり果ててしまうかもしれない、そんな恐ろしい光景を我々は目の当たりにする事に‥それにそれは彼女にとっては苦痛な事だ」トードスターは催促の言葉をかけ、「ああ、そうだな。次の激痛の波が来てしまう前に手術も治療も終わらせるとしよう、宮廷道化師‥お前以外は全ての処置が完了するまで少し待機していろ 」
シリンジョンはそう言って、診察等を行わないといけないのでバンバン達が部屋を移動した後すぐに取り掛かり始めた。
「随分患者を待たせてしまった、すまないな、じゃあ始めるとしよう」
「…………う、うん…宜しく…お願いします……」レイラはシリンジョンに対して恐怖を覚えたのか、怯えている様子だ。
「怖がる必要はない、怖がられたら治療が出来ないだろう、人間の子供というのは臆病者で不自由だな、子供だから軟弱なだけか…まあそんな事はどうでも良い、お前に入れられたジバニウムは我々が知るジバニウムとは訳が違う、永久的な痛みが来る前に全ての工程を終わらせたいが、綿密にやるとなると、トータルの時間は想像も出来ない」
「私が傍に居ますからネ」
「ありがとう…ギグル……」
「じゃあ、先ずは綿密に身体を隈なく検査しよう、それが終わったらジバニウム濃度を測定し、その後、異常な箇所があれば処置しよう、まあ毒を入れられて異常がないなど有り得ない話だがな」
そうして、やっと始まった処置。その頃、他の場所で待機しているバンバンらは、「無事に治療が終わると良いが……身体に妙なあの変わったジバニウムを体内に蓄積された事によって来たしてないと良いけど、不安だ」
「ああ、それもそうだが、ドクターが言っていた彼女に関する秘密の情報とやらも気になるところだ」
「まあ、その辺りの事は彼女の全ての処置が終わって後にでもドクターに聞いてみるとしよう」
とにかく、バンバン達は一先ずは一通りの診察と治療処置が全て完了してシリンジョン達が出てくるのをじっと別室の廊下で待つ。
「変な異常が彼女に起きてない事を願っておくとしよう」トードスターはポツリ、そう言って診察中の札がいつの間にやら付けられていた一室を眺める。
そうして、問診を始めとした検査、検査を受けての手術治療などの開始から、もうあっという間に時間が過ぎ去っていったが、でもまだまだレイラとシリンジョンらは部屋から出てくる気配がない。
かなり綿密に、詳細に人体全体を検査し尽くして、更にそこから治療が必要な箇所を探っているのだろうか。
……と、その後も更に時間は経過して行く。「ようやく、次で最後だ。あともう少し辛抱していろ」
「うん……」
「ジバニウム濃度が数値的にも過剰だな、中毒症状が出ていないのが気がかりだが、人間本来に存在する血液とジバニウムとでお互いに圧し合ってしまっていて、上手く適合できていないな…その反動で反射的に襲い来る痛みも必然と強くなっている…これはもっと綿密に治療を施さないと駄目だな」
シリンジョンによる一先ずの治療はその後も……レイラは時より襲い来る副作用の激痛に悶え苦しむも何とか耐え、治療が完了するまで必死に堪える。
そうして、やっと一通りの診察と治療を終え、「最後に未だもう少し手術を執り行いたい、だから手術台のある治療室へ行こう、それが終わればとりあえずは全ての工程が完了した事になる」
「う、うん‥‥わ、分かった……」
ー部屋を移動ー
「さて、ではそこにある手術台の方に寝てくれ」
「わ、分かった……」
…………数時間後、検査後の手術も執り行い終え……「これで取り敢えずの一連の検査と治療は終わった、かなり綿密に処置を行ったから、かなり時間を大幅に取ってしまう事になったがな、さて私は診療後の検査結果のカルテでも作成するとしよう、とその前に口頭で軽くウスマン達に検査結果を先に伝えておこう、宮廷道化師も随分長時間付き合わせてしまったな、まあ私の指示を的確に補助をしてくれて助かったよ」
「ハ、ハイ……それは良かっタ……」
ビターギグルはあまりにもシリンジョンの施術中の視線や目つきが怖かったようで、怖がってしまっている様子。
一歩でも間違えて妨害や指示された通りに動く事が出来なかったら役立たずと罵られ、挙げ句の果てにはジバニウムをシリンジョンの腕に携えられてる器具によって、ジバニウムを全て刈り取られ無に還る事になりかねないのだから、ビターギグルが彼を恐れてしまうのは当然である。
「私の助手のように物覚えが悪い脳無しじゃなくてほんとに助かったよ、そう何回でも気を許せる程、残念だが私は優しくはないぞ、そこは覚えておけ」
シリンジョンはそう言って、レイラとビターギグルを見つめる。「え、えっと私達はこれからどうすれば良いの…?手術も検査も全部終わったんだよね…」「…………そうだな、入れた薬の経過観察も念の為に必要だ、此処にも静養する為のベッドがある、そこで暫くは寝て様子見だ」「う、うん………分かった… 」
そうして、ビターギグルが傍についている状態のまま、シリンジョンから次の声かけがあるまで、ベッドに横になって、経過観察の時間を過ごす。
「特に異常がないと良いけどネ」
「ねえねえ、ギグル…久々にジョークを聴かせてよ、何だかふと聴きたくなっちゃったの、小声でも良いからギグルの大好きな自慢のジョーク…聴きたいな」レイラは処置と手術の術後の経過観察の時間のこの有り余った暇な時間をちょっとでも有意義な時間にしたいと思い、点滴が流れ行ってグタッとする身体の感覚を静かに感じながら、そう言った。
「で、でも……あんまり騒いじゃうとあの医者に怒られちゃうよ、あの人からの次の声かけがあるまでじっとしてた方が良いヨ、この今の時間が終わったらレイラさんが満足するまでジョークを届けるから…… 」
ビターギグルにしては珍しく大人しい判断をした。それ程にシリンジョンが恐ろしかったのだろう、何せ自分の思う通りにならなかったり、自身が行う手術の最中に彼の指示通りに従えなかったりしたら問答無用……怒らせたらいけないというのが目に見えて分かりやすく、怒りやすい性格という事が判明したからか、笑わせる事をこよなく愛するビターギグルでさえも彼の前では怯えている始末…、でも、地下層に暫く居てこのバンバン幼稚園の施設内に戻ってくるまで、長い事ビターギグルは大好きなジョークを言う事が出来ていない。
ジョークを言えないという事はビターギグルにとってはストレスであり、苦痛である。その事も気にしてレイラはビターギグルに対してジョークを言って欲しいと頼んでみた。「ねえねえ、ギグル。お願い……小さい声でも良いから、聴かせてよ、長い事ギグル……ジョーク言えてない時間が多かったし、正直抑えられないくらい、ジョークを言いたくなってて、心の中ではウズウズしてるんじゃない………?」
「う、うん…じゃあ彼に聴かれないようにそっと君の近くで言おう、ウスマン達にだってなるべくジョークを言った事はバレたくないからネ」
「うん、ギグルのジョーク‥…何だか久々に聴くからワクワクする…」
「じゃあ、いきますよ?久々のジョークを聞く心の準備は良いですカ…?」
「うん……」
そうしてビターギグルは久方振りのジョークを言い放った。「ふふっ、やっぱりギグルのジョークは面白いね…!!」レイラはそう言って、微笑み、点滴による痛みや処置後とは思えない程に、それさえも忘れたような笑顔を溢した。
「そうですカ、レイラさんが笑顔になれたなら良かったでス、じゃあ引き続きあの外科医の次の指示が出るまでゆっくりこのまま、べッドで休養してましょうカ」ビターギグルはそっとレイラに布団を着せて彼女は休養に入った。
「すっー……、すっー…… 」彼女は暫しの休養の就寝へ。そうして時間は経過していき、ビターギグルが傍で付き添いをしていると、シリンジョンが入ってきて、「さて、経過観察の時間が終了した、もう起きて良いぞ」
「ふぁ〜……」
「特に術後の経過観察では異常がなかったようだな、これで取り敢えず君に対する診療は全て完了した、さあウスマン達のところへ戻ろう」シリンジョンはそう言って、ようやく長時間に渡る検査と、手術を含めた全ての診察が完了し、やっと安心だ。と、バンバン達の元へ、「彼女に対する治療と診察が全て完了した、それと検査報報告書も作り終えた、渡しておこう」
「やっぱり人体に多大な害が及んでたんだね、これまでよりさらに凶悪な新薬ジバニウムの脅威や有害性はよっぽどのようだね、治療して貰えて取り敢えずは安心したよ」バンバンはシリンジョンから受け取ったカルテを見ながらそう言った。
「ああ、あのまま何も処置すらもしなかったら危うくその人間は命を落としていたところだった、手術をしたから良かったが…… 」
「何はともあれ、ドクターには感謝してるよ、協力してくれるまでには、随分と時間がかかったけど、けど時間をかけて説得したお陰で、彼女の痛みが少し軽減されたし 」
「まあ、それなら良かった。その子供の人間性や性格がイカれた愚かな脳みそじゃなくて幸いだったよ、どうしようもない屑だったらどうしようかと思ったが……」シリンジョンはそう言ってレイラを見つめた。「じゃあ、私はこれで失礼するよ、あまり人間の居る空間に長居はしたくないんだ」シリンジョンはここまでお暇しようとしたが、バンバンが引き止めに声かけを。「いや、ちょっと待ってくれないか?ドクター、ドクターに聞いておきたい事が色々あるんだが…」と。
「何だ?聞きたい事‥?お前達に話す事など何もないぞ……ああ、私が作業に取り掛かる前に言った事の話か…?」
「ああ、そうだ、その事についてちょっと話を聞きたい、彼女の秘密について俺達も知っておきたいんだ」
「はあ……分かった、何れ打ち明けならなければならない時が来るのも事実だ、遅かれ早かれ全ての…本当の真実を知る事になるのは避けられない、資料を持ってるからそれを見ながらでも話そう」
「それは非常に助かるが、此処だとあの人間達の視線の範疇内でろくにゆっくり話を聞く事も出来ない、何処か落ち着いて話が出来る場所に行きたい」と、トードスターからそう言われ、
「かなり、重大な機密情報だからな、奴らから聞かされた話や奴らから得た資料を手元に得る事が出来たとはいえ、あの人間共に私達が話ているところを見られるのはウンザリだ、あの人間達程に醜い人間種は居ない、ちょっと別の部屋に移るとしよう、その前に‥君の体調を再度確認する必要がある」
「う、うん…あ、ありがとう……」
「怖がる必要などないと言っただろう、言う事さえしっかり聞いて良い子にしていれば何の罰も与えやしない、まあ私を苛立たせてしまったら話は別だがな 」シリンジョンはやっぱり人間をそもそもが前提としてそのものを嫌悪しており、それが例え大人ではなく子供であっても不信用な事には変わりないようだ。
「は、はい…」
そうして、レイラの具合を再度確認し、治療後の副作用などが生じていないかを確認してその後特に異常がないと判断され、「ふむ、特に異常は起きていないようだな、うまく人間にも適合しているようで安心した、さて本題に入る為に部屋を移動するとしよう、存在や気配を失くせるような静寂に満ちた部屋がある、そこに行くとしよう」シリンジョンはそう言って、遂にレイラの…過去を知る瞬間が訪れようとしている。
「うん……、分かった」
「じゃあ、行こう」
……と、レイラの…、知られざる重要な機密情報が遂に明かされる…、「此処なら、大丈夫だろう、あの人間共に見られる心配もない、それに此処はそこの人間の子供…お前についての書類や機密情報が詰まっている、まさに秘密庫と言っても過言などではない」
「それは本当に此処は秘密の部屋と呼ぶに相応しい、じゃあ引き伸ばしても時間が惜しいし、早速本題の方に入ってもらっても良いかい…?」
「ああ、‥…と、忘れるところだった、これが…彼女の本当の真実が纏められている資料だ、ただ事前の注意事項として忠告を言っておくが、これから話す事は、幼い人間の子供にとってはそう簡単には受け入れ難い真実や真相の連続が待っているという事は先に言っておく 」シリンジョンはレイラにじっと目を向けた後に、棚から大量の資料を運び込んで、目の前に配置してある長机に置き、バンバン達にも同様の資料を分け渡した。
「これが……」
「ああ、じゃあ資料を介しつつ、順を追って説明していこう、そうだな……まずはお前に与えられた名前だが…そもそもお前の名はレイラ…ではなく、そもそもの話…お前には名前という概念すらついていない、そのレイラという名前は……単につけられた、言うならば番号や記号としての役割でしかないという事…それにお前には両親というのも最初から存在しない……お前は所謂【孤児】生まれたその時から、親というものにすらにも恵まれる事もなかった、孤独な子供……」
シリンジョンはそう言って、引き続き、話を進める。
「それにお前のそのレイラという名前は、前提としてこの場所に来させる事の為だけに仮で、名前もろくにないんじゃまるで囚人番号のような、番号になる…家族という概念を構築していくには名前というのは必要不可欠、お前のその名前は資料から察するに、この幼稚園の関係者職員の誰かが名付けた……」
「え……私…私には…… 」
「孤児であるが、故に身寄りも家族もいない、本当の幸福と家族を与える居場所として此処を選んだ、お前がこれまで出会った大人から貰った愛情は全て虚実に過ぎない、ただの仮初のもの…それにお前を産んだと思われる親の存在すら怪しい」シリンジョンはそう話す。
「どういう事だ…?」
「そのままの意味さ、まあ計画的なものだろう、最初から愛情を注ぐ気すらもなかったもなかったのだろうな」
「そんな……」
「しかも、此処の関係者のあの人間共に引き渡すように仕組んであったみたいだ、つまりは全て最初から決まっていた事…テープに幾つかその決定的な証拠もある、見てみるか?」シリンジョンはそレイラに告げた。「じゃあ、私って…本当は何の名前もない子供だったって事…?、じゃあ、この名前は……何なの…?」とレイラはまさかの驚愕の真実に、不意に涙が零れ落ちた。
「どうする?、真意をこの目で確かめる為にも、見てみるかい…?」
「うん………、見て‥みる……」
「子供にとっては受け入れ難いっていうのはそういう事か…、これは確かに幼い彼女にとってはとてもじゃないが、簡単に呑み込めるような話じゃないな、だから尚更話す機会を遅らせていたのかもしれないな、あの人間達は…」
トードスターはシリンジョンの口から告げられた今の話を踏まえ、研究開発チーム側の人間らがレイラに彼女を此処に連れ込む事に至った事の経緯や事の発端などの、本当の真相を中々告げようとしないのは、彼女が抱えている過去の事情というのは、彼女自身が思っている以上に残酷な真実だからというのを把握してたからなのか、それとも別の理由があるのか……。
「この事……、知っていて今まで隠していたのも少し妙な話ですよネ、誰かに口止めされたなんて事もあるんじゃなイ?」
と、ビターギグルはそうポツリとぼやいた。「まあ、あり得ない話ではないな…確実に何か他にも裏がありそうだ」
「では、見てみるとしよう、準備するから少し待っていてくれ」
シリンジョンはそう言って準備を始め、「出来た、さて真実の真相を受け止める心の準備は良いか…?」
「う、うん……」
そうして、部屋に収納されてるV H Sテープを複数個取り出し、その中から時系列順に再生していく、まずは一個目…、「これ…は…?」
「どうやら、何処かの施設内の映像のようだね‥ん?…これは…赤ん坊か…?」バンバンは荒々しい映像の中に映る一人の赤ん坊に注目した。もしかすると、此処に映っているのは、「じゃあ私…最初から…捨てられてたの‥…?」
「この映像を見る限りではそのようだね……」
「望まれぬ子供だったのか、それとも何か別の意志があったのか、何にしても子供もこんな簡単に意図も容易く切り捨てるとは‥‥」
そうして映像はまだまだ続いてゆく、次の映像に映っていたのは、「誰かが、この幼稚園の関係者と思わしき人物と話してるね、その内容までは聞き取れないけど…」
「レイラさんの親の人…?、もしくは託児施設側の人間…?」
「どっちなのかは詳しくはこの映像だけだと真意不明だが、他の映像を見たらこの人間が誰なのか分かるかもしれない」と、こうして続々と彼女に纏わるV H Sテープの映像を引き続き順を追って視聴していく。
…………こうして、全ての映像を見終わり驚愕の真実を突然と突きつけられた真実は、それはそれは、とても悲しい現実だった。彼女は望まれもしないまま、生まれ…そして切り捨てられた。
捨て子として託児所に預けられ、成長した頃を見計らって彼女をこのバンバン幼稚園へと譲り渡した、これで経緯が全て繋がった、一連の計画だったと考えられる。
だから、彼女は一切の愛情を受ける事なく、育ってしまった。
貰ったのは、偽善も等しい、偽りの愛情だけ。
「……………………」
「レイラさん……… 」
「…………私……私………」
「受け入れ難い真実だと本題に入る前に言っていた理由が良く理解できたよ、まさか彼女が捨て子で養子、いや‥本当の意味での捨て子だったなんて、愛情も何もない…最初から仕組まれた運命に、卑劣なものだ…… 」
「本当の家族を構築していくと計画していた根幹はこの事を知った故か……」
「ああ、受け入れ難いだろうが、これが真実だ…哀れな子供だな、お前は誰からも愛されず最初から見捨てられ、両親の存在や名前すらもない、ただの身寄りのない子供に成り果て…人間の大人の身勝手な事情で、しかし託児所の人間は何故此処の人間に彼女を引き渡す事になったのか、家族を構築するというのを密かに組織の人間から聞かされていたのか、そもそも最初から子供を捨てるつもりで交渉を言い渡したのか」
「ああ、何にしてもこの現実というのは、あまりにも残酷な事に変わり無い…」