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休んでいる間、四人の王子と話して助けられた。
真実を知って受け入れられなかったけど、この時間があったおかげで自分の気持ちと向き合うことができた。
もう一度、太陽を見るために立ち上がたい。
元の世界に戻れないのは悲しいけど、この世界で新しい人生を始めるんだ。
覚悟を決めた私はコウヤさんと共に仲間たちが待っている部屋に行くことにした。
ドアを開けて入ると、一斉に視線を向けられる。
「かけら! 待っていたよ」
「部屋から出ることができるほど回復したんですね。
元気になったかけらさんを見れて、ボクは嬉しいです」
「いい顔をしているじゃねぇか。
やっと自信が持てたんだな」
明るく声を掛けてくれる三人の王子を見てから口を開く。
「レト、トオル、セツナ、待っていてくれてありがとう。
私はもう大丈夫。これから、前に向かって進んでいくね」
そう言うと、皆は優しく微笑んで温かく迎えてくれた。
やっと、帰って来ることができた。
四人の王子たちのところに……――
「重要な役割を持つ者が全員揃いましたね。
かけらさんは、ここの真ん中の席にお座りください。皆の顔を見たいでしょうから」
縦に頷いてからコウヤさんが引いてくれた椅子に座って話を始める。
「私が休んでいた間、四人で集まって何を話していたんですか?」
「わたしたち、四人の王子は今後の計画を立てていたんですよ」
コウヤさんがそう言ったあと、トオルから数枚の書類を渡してくる。
手に取って見てみると、何かの設計図が描かれていた。
湖をぐるっと囲むように花壇があって、近くには建物が並んでいる。
その道の近くにはレンガの石畳の絵があった。
図面以外の紙には、家や店、城の絵と説明文がたくさん書かれている。
まるでひとつの街の設計図みたいだ。
「これって……」
「ボクが図面を描いて、レト王子が説明の文章を書きました。初めての合作です」
「オレとコウヤ王子も手伝ったんだから、二人の手柄みたいに言うなよ」
「グリーンホライズン、クレヴェン、スノーアッシュ、ルーンデゼルト。
四つの国の国境がある湖に、新しい街を作る予定なんだ。
かけらに見てもらったその書類は街の設計図だよ」
「和平の証に新しい街を作るってこと?」
「そうだよ。四つの国で手を取り合って守っていく場所。
協力し合うものがあれば、友好的な関係を築いていけると思うんだ」
争いが続いているこの世界で、人々が助け合うことができる夢のような場所。
それを考えるために、王子たちは集まっていたんだ。
「ボクとセツナさんは、間もなく国王になります。
この和平に関して、グリーンホライズン王の許可もいただきました。
そして、ルーンデゼルトは最花の姫であるかけらさんの意見を尊重するとのこと……。
これによって、停戦する方向に話が進んでいます」
「本当に……!?」
「ああ。この先どうなるか分からないけどな。
……最花の姫であるかけら次第ってことだ」
「セツナ王子の言うとおりですね。
かけらさんがスペースダイヤをどうするか。
それによってボクらの未来が決まります」
「私が愛する人を決めて、この世界を変える……」
「何も変わっていなかったら、四日後に再び戦争が起こっていたことでしょう。
争うはずでしたが、和平を結んでそれがなくなった。
もし、四人の王子の中で愛する人が決まっているのなら、その日にスペースダイヤを渡すのはどうでしょうか?」
「分かりました……。
私は旅を終わらせて、この世界のために動こうと思います」
「王子の皆さん、そういうことです。
スペースダイヤを渡すための儀式は、ルーンデゼルトの神殿で行われたと聞いています。
初代の最花の姫が生まれたと言われている場所です。
そこで最高の舞台を用意しましょうね」
四人の王子の顔をゆっくりと一人ずつ見ていく。
目を合わせると、覚悟が決まっているように真っ直ぐな視線を向けてくる。
皆、国を想うそれぞれの考えがあって、私と共にいてくれた。
話して、仲良くなって、溺愛されて……。
それぞれの愛を教えてもらえて幸せだった。
大好きな四人の王子様、ありがとう……――
――……四日後。
起きてから準備をしていると、シエルさんが部屋に入ってきた。
なぜなのか、大きな物が入った袋を両手に持っている。
「今日でスペースダイヤの行方が決まる。
かけらを見守ることも今日で終わりだな」
「シエルさんの目的は、スペースダイヤの行方を見届けることでしたよね。
一緒に来るのは大変だったと思いますし、結果を早く知りたかったと思います」
「俺は、恋人の願いが叶う時をずっと待っていたんだ。
彼女は平和な世界を夢見ていたからな……」
「シエルさん……」
「今はそれより、これだ。
セツナ王子から受け取ってきた」
「随分大きな荷物ですね」
「最高傑作らしい。
大分前から考えて、作っていたようだ」
渡された袋を開けて中身を見てみる。
すると、胸元に複数の小さな薔薇が並んでいるドレスと、靴と手袋が入っていた。
どれも純白で、光沢がある上品な生地でできている。
「初代の最花の姫は、純白の衣装を身に着けて愛を誓ったと聞いたことがある。
王子と結ばれる前は、どの国の色にも染まっていなかったという意味らしい」
「私は、誰かのお姫様になれるんですね」
「そうだ。……両想いだったらな。
ほら、着替えて行くぞ。かけら」