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クリスマスの夜、優希は付き合っている彼女の住む街の居酒屋の小さなテーブルに座っていた。遠距離恋愛のもどかしさに耐えかね、今日はどうしても話さなければならないことがあった。店内は賑やかで、カップルの笑い声があちこちから聞こえてくる。二人きりのテーブルには、ほのかに残るキャンドルの光と、冷えたグラスに注がれたビール。
「…なぁ、話してもいい?」
彼女の視線を受け止めながら、優希は震える指でジョッキを握る。普段なら平気でできるはずの別れ話も、目の前で笑う彼女を見ると言葉が出ない。アルコールが回ったのか、心臓の鼓動が早まる。
「うん、何?」
彼女は柔らかく応じる。優希は深呼吸をして、意を決して口を開いた。
「…俺たち、やっぱり続ける意味、あるのかな」
言葉を発した瞬間、喉が詰まり、視界が熱くなる。彼女は黙って優希を見つめている。居酒屋のざわめきの中で、二人の間には重い沈黙が落ちた。
「…優希くん…」
彼女が小さく呟いたその声に、優希の理性は簡単に崩れ去る。涙が自然にこぼれ、ジョッキを握る手に力が入らない。
「……っ…ごめん、やっぱり別れたくない」
思わず口をついた言葉に、自分でも驚いた。計画していた理性的な別れ話は、酔いも手伝って一瞬で崩れ去ったのだった。結局、話はあいまいなまま終わり、二人は居酒屋を後にした。
翌日、優希は気持ちを整理できないままサークルの教室に向かう。頭の中は昨夜のことでいっぱいで、胸のざわつきはまだ消えない。教室のドアを開けると、天真爛漫な先輩がいつもどおり明るく声をかけてきた。
「お疲れ、優希くん!クリスマス、どうだった?」
思わず笑みがこぼれるが、心の奥はまだ混乱していた。昨日の出来事をどう話せばいいのか、言葉がまとまらない。だが、相談できる相手が目の前にいるだけで、少し気持ちは落ち着く。
「…あの、ちょっと話聞いてもらっていいですか」
先輩はにっこりと頷き、教室の片隅に優希を誘った。天真爛漫な先輩の笑顔の前で、優希はまだ解決していない胸の内を、少しずつ吐き出し始めるのだった。