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「ごめん……。私が歩きたいって言ったから」



その瞬間、悠人は急に切ない表情を浮かべ、私を抱きしめた。

口元から漏れる熱い息が、私の耳元にかかる。



「穂乃果……」



ただ名前を呼ばれただけなのに……

そのあまりにも魅惑的な囁きに、思わず腰が砕けそうになった。



悠人は、そんな私を支えるかのように少し腕の力を強くした。



「俺、見たんだ……穂乃果が輝と駅まで歩いてるのを……」



え……

2人とも言葉が止まった。



悠人は、私から離れようとはしない。



「急にお前が心配になって、タクシーで駅に向かいながら穂乃果のこと探した」



そうだったんだ……

全然知らなかった……



「駅前で穂乃果と輝を見つけたけど、声をかけられなかった……」



「どうして? 声かけてくれたら良かったのに……ねえ、悠人。お願い、離して」



私は、悠人の腕が少しキツく感じた。



「嫌だ、離したくない。俺……今までこんな気持ちになったことなかった。2人に声もかけれず、俺は……輝にヤキモチを妬いた」



えっ? 悠人が輝くんに?



「私、何もしてないよ」



「ああ、そうだな。でも事実、俺は2人を見てヤキモチを妬いたんだ。こんな感覚、初めてだ。情けないけど、穂乃果といると、自分の知らない部分がどんどん出てきて……」



悠人……

私なんかに、悠人みたいな素敵な人がヤキモチ妬くなんて信じられないよ……

いつまで経っても半信半疑で、あまりにも悠人の言葉が甘過ぎて、まるで間近でお芝居を見てるような気がする。



こんなのやっぱり、美女が恋愛映画で言われるセリフだ。実際に、自分に起こってることだとは思えない。

現実味がなさ過ぎて、素直に受け取れない。



悲しいよ、どうしてなんだろ。

素直になりたいよ……



情けないのは悠人じゃない、私なんだ――



「お願い。本当に……もう離して」



いたたまれなくて、私はもう一度言った。

悠人は……ようやくゆっくりと私から離れた。



「悪かった……」



「ううん、ごめん。私ね、ヤキモチ妬いたって言われても……私なんかにどうして? って、思ってしまうの……」



「穂乃果。俺の気持ちは、どんなことがあっても変わらない。嘘偽りは一切無いんだ。俺はお前のことが全部好きだ。全部欲しい……。穂乃果を俺だけの物にしたい」



嘘みたいにキュンキュンする言葉の連続に、私の胸は最高潮に高鳴った。

こんなにも真っ直ぐに、私を見つめて言ってくれた言葉は……やっぱり素直に嬉しかった。



このままじゃいけない。

悠人のこと、ちゃんと考えないとダメだって、本気で思った。

この言葉に甘えてちゃいけないって――



でも、今はまだ無理……

ごめんね、悠人、こんなめんどくさい女、いい加減本当に嫌われてしまうよね……

ここまでネガティブな人、きっと悠人の周りにはいないだろうから。



「俺、自分の中で感情がいくつも動いて、どうすればいいのかわからなくなった。穂乃果に嫌われたかもな」



「まさか、そんなこと……」



嫌われるのは私の方。



確かに今日は悠人らしくないかも知れない。

だけど、完璧過ぎる悠人より、そんなところもある悠人のこと、可愛い……って思ってしまった。



優しく私の頭を撫でて部屋に戻っていく後ろ姿を見てたら、何だかわからないけど涙が溢れた。



全部、自分が招いてるくせに――



すごく、切なくて、苦しい。

私は、しばらく涙が止まらなかった。



悠人みたいな素敵な人、他には絶対いないのに……

私、何やってるんだろ……

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